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2019/10/13 18:00

世界初の線路を走るバス•DMV導入へ!「阿佐海岸鉄道」の新車両と取り巻く現状に迫った

【DMVを導入へ⑥】これまでの車両はどうなるのだろう?

DMVの導入にあたり、国からは「通常車両と混在して走らせてはだめ」という条件が示された。つまり、DMVを走らせるならば、現在の車両は使えないことになる。阿佐海岸鉄道はDMV専用路線にすることが求められたのである。

 

現状の車両はどうするのだろうか。残念ながら廃車となる。現在、走る車両を見たり、乗ったりしたいという方は、DMVが導入されるまで、あと2年のうちに(現時点で、DMVの運行開始日は未定)、訪れておきたい。

 

↑高千穂鉄道からやってきたASA-300形(高千穂鉄道時代はTR-201)が走るのもあと2年となった。ASA-100形とともに引き取り手を探している状況だ

 

 

【DMVを導入へ⑦】阿佐海岸鉄道に接続するJR牟岐線の状況は

ここからは阿佐海岸鉄道を取り巻く鉄道とバスの話題に触れておこう。

 

現在は、JR牟岐線と海部駅で接続している。この牟岐線、徳島県の中心駅・徳島駅と牟岐駅を結ぶ。路線距離は79.3km、普通列車で2時間20分前後かかる。

 

実は阿佐海岸鉄道が開業したころには、高徳線を走る特急「うずしお」が甲浦駅まで乗り入れていた。その後には徳島線を走る特急「剣山(つるぎさん)」が乗り入れ、「うずしお」に代わり特急「むろと」が阿佐海岸鉄道に乗り入れていた。ところが、2001(平成13)年3月13日で阿佐海岸鉄道へ特急「むろと」の乗り入れが廃止されてしまった。さらに……。

 

↑牟岐線を走る特急「むろと」。2019年3月のダイヤ改正では、「むろと」の運行は日に1往復と大幅に減便、厳しい状況になっている。ちなみに特急「むろと」にはJR四国のキハ185系が使われている

 

牟岐線の徳島駅〜牟岐駅間を走る特急「むろと」は2019年3月のダイヤ改正までは1日に3往復走っていたが、改正後は1往復に減便されてしまった(徳島駅〜牟岐駅間の乗車時間は1時間15分)。

 

牟岐線の区間別平均通過人員を見てみると。徳島駅〜阿南駅(あなんえき)間の平均通過人員が4809人(2018年度=以下同)に対して、阿南駅〜牟岐駅間は690人と極端に減る。さらに牟岐駅〜海部駅は212人と減ってしまう。

 

この212人という数字は、JR四国の全路線の中で最悪となっている(ワースト2位は予土線の312人)。経営状況が厳しいJR四国にとってはつらい現実だ。JR四国とって運営が厳しい線区ながらも、徳島県南部地域にとっては、今も欠かせない重要な交通機関である。

 

この地域は道路事情があまり良くない。筆者は今回、クルマで徳島市を目指したが、国道55号などの行程は、道が細めで片側一車線の区間がほとんど。カーブも多い。途中の一部が高規格道路(日和佐道路/9.3km)となっているが、片道2時間の、ややきついドライブだった。

 

DMVを導入する徳島県としても、こうした県南地域の実情を考慮し、何らかの手を早めに打たないと、という思いが強かったのだろう。

 

 

【DMVを導入へ⑧】同鉄道沿線の既存のバス交通を見ておこう

鉄道に対して、バスはどうなのだろうか。

 

実は、同地域には関西と直接に結ぶ高速バスが走っている。徳島バスにより運行される室戸(高知県)〜南海なんば(大阪府)間の高速バスだ。甲浦〜南海なんば間には、上り5便、下り6便の高速バスが走る。ちなみに同区間は約5時間30分かかる。

 

JR牟岐線は徳島駅〜阿南駅間の列車本数は多めだが、阿南駅〜海部駅の列車本数は大幅に減る。

 

2019年3月16日からは、この少ない列車本数を補完する役割を高速バスが担っている。牟岐線と阿佐海岸鉄道が平行して走る阿南〜甲浦間では、高速バスが利用でき、さらに途中下車できるように変更されたのである(空席がある場合のみ)。長距離を走る高速バスで、このように地域内での移動に利用できるよう変更されたケースは非常に珍しい。

 

路線バスはどうなのだろうか。

↑土佐くろしお鉄道の奈半利駅前に停車する高知東部バス。阿佐海岸鉄道の甲浦駅からは同社のバスに乗車すれば、途中での乗継ぎが必要となるが、奈半利駅まで行くことが可能だ

 

調べてみると2社の路線バスが走っていた。

 

牟岐線の牟岐駅と甲浦駅間を路線バスが結ぶ(徳島バス南部が運行)。途中の鉄道駅に立ち寄るバスに加えて、旧道経由や複数の病院を経由するバスなどがあり、往復13便が走っている。同バスは徳島県と高知県の県境をまたいで走る路線バスとしては珍しい運行スタイルだ。

 

さらに高知県側には甲浦岸壁(次のバス停が甲浦駅)と室戸営業所を結ぶ高知東部バスが1日に7往復が走っている。室戸世界ジオパークセンターバス停で乗継ぎすれば、土佐くろしお鉄道の奈半利駅や安芸駅へ行くこともできる。

 

DMVの運行開始後、阿波海南駅と甲浦駅から先、バスとしての運行区間は未定のこと。既存の路線バスとバッティングする部分も出てくるわけで、それぞれがバス事業者との調整が欠かせない。県と町が中心となって、こうした調整が進められている。

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