【EV車を活かす③】東濃弁「はたらこかぁ〜」が「働こCAR」に
2019年の4月から開始されたエネファント社の「働こCAR」事業。事業名は東濃弁の「はたらこかぁ〜」から生まれたそうだ。果たしてどのようなサービスなのだろう。
同事業を導入したい企業はまず、たじみ電力と契約、電気の供給を受ける(強制ではない)。さらにEV車充電設備とソーラーチャージャーの工事をエネファント社に依頼、設備を駐車場内に取り付ける。本来ならば費用はそれなりにかかるが、エネファント社では、取り付け工事料金を0円とした(※下記図内を参照)。
さらに企業は、エネファント社にEV車1台につきレンタカー代として月額3万9800円を支払う。EV車は新たに入社する29歳以下の社員向け用で、企業は採用条件の一つとして入社時にEV車を貸し出すことをPRする。
日産リーフが貸し出される新入社員は月額1万9800円の会費を払って乗ることができる。貸し出される車両の自動車保険はエネファント社が加入している。定期点検も同社が年4回行う。万が一のための事故にも万全対応、さらに点検もしっかり見てもらえると言うのだからありがたい。
次のようなオプションも有料で用意している。
一般的なマイカーでの通勤にかかる費用を考えてみよう。
所有するクルマを自ら購入するとなると経費はかなりのものになる。購入費(またはローン)、税金、保険料、整備費、高速料金、ガソリン車ならばガソリン代がかかる。オプションやスタッドレスタイヤまでとなると、新入社員の月々の給料が、かなり侵食されてしまうことは明らかである(クルマを所有するためには、初任給の4割以上の支出が必要という試算もある)。リース契約というクルマの利用方法もあるものの、月額均等払いにすればかなり高額になってしまう。
クルマが趣味、あるいは好きならば、こうした支出はやむを得ないと考えるだろう。しかし通勤用に必要という人の多くが重荷になっているのが実情だろう。
若い人たちのそんな心配が、それこそ消えてしまうのが、この「働こCAR」事業というわけだ。本人の負担が月額1万9800円ならば、それほど負担とならないだろうし、EVなのでガソリン代もかからない。会費を払って乗っているという意識があることから、大事に乗る気持ちも芽生えてくるだろう。ちなみに運転することになる新入社員が、通勤以外のレジャーにクルマを使うことも自由だ。
【EV車を活かす④】3者が共に利益を受けるシステム作り
同事業を取り入れると、導入する企業、新入社員、エネファント社それぞれにどのような利点があるのだろう。
まずは多治見という土地柄、クルマは移動手段として必需品だ。新入社員にとって、自由に使えるクルマが支給されることはありがたい。会社のEV車充電器を使えば、仕事をしている8時間でフル充電が可能となる。こうした恩恵が受けられれば、離職率も改善しそうだ。もしEV車を借りている社員が退職した場合でも、車両は返却が可能で、金額も日割り計算で算出される。
企業にとって、EV車充電設備とソーラーチャージャーの取り付けといった初期投資がかかる(基本10年契約が原則)。初期投資はかかるものの、新人1人の採用費用が平均100万円かかる現状では、クルマの貸与は人材募集の上で強力な武器となる。通常、レンタカーを会社が用意するとなると、最も安いコンパクトカーでも月額6万円前後はかかってしまう。同システムの場合に、市場価格よりも割安でクルマを借りることができる。また多治見の企業では、社員の交通費として5000円〜1万円を支給しているところが多い。こうした背景を考えると月額3万9800円という企業の支払いはそれほど大変な負担ではないように思える。
さらに取り付けたソーラーチャージャーが、企業にとって電気代を減らす武器にもなる。
「働こCAR」事業を行うエネファント社にとってどのような利点があるのだろう。レンタカービジネスだけならば、それほどの利点はないように思えるが。
まずはレンタルするEV車は中古車市場で出回っている状態の良い車両を、整備し直して使用している。
太陽光発電を中心とした自然エネルギーによって造られた電力の小売りを行うエネファント社。電気は30分単位で金額が変わるのだそうだ。電力需要が高まる真夏の昼間には、当然ながら電気が多く必要となる。
エネファント社は、駐車場内に設置したソーラーチャージャーによって得られた電気の管理を行う。さらにレンタルしたEV車は日中の仕事時間は充電設備のケーブルをつなげたままとなる。電気が余っている時にはEV車への充電を行う。電力需要が高まる時は逆に、EV車のバッテリーにためられた電気を、自家消費(企業内または、たじみ電力内で)する電気をまわす。
「働こCAR」事業は、たじみ電力という新電力会社の中、もしくは協力を得られた企業の中でEV車まで含めて電気を融通しあい、省エネコントロール、電気代の軽減に結びつけようという試みなのである。