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2019/11/9 18:00

災害により寸断された「ローカル線」−−不通となっている19路線の現状をチェックする【後編】

⑮【北海道の不通区間1】最終結論は持ち越しとなった日高本線

ここからは、この秋に被害を受けた地域を離れ、2015年以降に起きた大規模災害により引き起こされた鉄道の不通区間の現状を見ていこう。ローカル線を取り巻く、復旧への道筋が容易では無いことが分かる。

 

まずはJR北海道の日高本線から。2015年1月に受けた高潮被害により4年に渡り、路線の8割近くの区間が不通のままとなっている。

 

◆JR北海道 日高本線:高波(2015年1月8日)の被害

不通区間鵡川駅(むかわえき)〜様似駅(さまにえき)間116.0km
被害状況高波により海岸沿いを走る路盤の土砂流出
復旧見込み廃止に向け協議中

 

↑勇払駅(ゆうふつえき)〜浜厚真駅(はまあつまえき)間に架かる厚真川橋りょうを渡る日高本線の下り列車。北海道胆振東部地震の影響で同橋も桁がずれるなど影響を受け、運転再開まで2か月かかった。現在は苫小牧駅〜鵡川駅のみの運行が続けられる

 

1987年の国鉄分割民営化にあたり、経営が危ぶまれた三島のJR(JR北海道・JR四国・JR九州)。ここに来てJR北海道の経営悪化が目立つようになってきている。日高本線の復旧に関しても、JR北海道単独での復旧は無理というのが実情だ。

 

2019年に入って日高本線の沿線7町と個別協議を入っている。JR北海道としては鵡川駅〜様似駅間の鉄道路線の廃止、バス転換を目指す。一方の沿線7町には温度差があり、廃止・バス転換を容認する町と、一部および全線復旧を目指して欲しいという町があり、足並みが揃っていない。最終的な結論はまだ出されていないが、現状を見ると廃止・バス転換はもはや避けられない状況のようだ。

 

 

⑯【北海道の不通区間2】映画で知られる根室本線の幾寅駅だが

根室本線は函館本線の滝川駅から根室駅まで延びる443.8kmという長大な路線だ。本線とはいうものの、現在は札幌駅〜釧路駅間の特急「スーパーおおぞら」が走る石勝線+根室本線が本線扱いで、他はローカル線の色合いが濃い。中でも富良野駅〜新得駅間は超閑散区間となっている。同区間の中で2016年の台風10号による被害で東鹿越駅(ひがししかごええき)〜新得駅間が、不通になったままとなっている。

 

◆JR北海道 根室本線:台風10号(2016年8月31日)の被害

不通区間東鹿越駅〜新得駅間41.5km
被害状況斜面崩壊、土砂流入など
復旧見込み2020年度中に富良野駅〜新得駅間を廃止の方針

 

↑列車が走っていたころに訪れた幾寅駅。駅表記が「幌舞駅」となっているが、これは映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地として使われた駅名をそのままにしたもの

 

北海道の鉄道路線はその多くが石炭輸送、石灰石輸送や原木輸送などの貨物輸送を見込み開業した路線が多い。鉄道貨物の輸送量が落ち込み、旅客輸送のみでは立ちゆかなくなっている現状がある。国も北海道も、日高本線、根室本線の廃止やむなしの立場とされる。

 

来春には札沼線(さっしょうせん)の北海道医療大学駅〜新十津川駅間(47.6km)の廃止が予定されている。道内のローカル線が徐々に消えていく。何とも寂しい限りだ。

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