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2019/11/9 18:00

災害により寸断された「ローカル線」−−不通となっている19路線の現状をチェックする【後編】

⑰【九州の不通区間1】豊肥本線の名物区間が2020年度に復活

北海道から九州に移り、残る不通区間を見ていこう。JR九州の路線で復旧が遅れている2路線がある。まずは豊肥本線から。2016年に起きた熊本地震から早くも3年が経った。阿蘇を抜けて九州を東西に貫く路線が不通になったままとなっていたが、復旧工事が進められていた。

 

◆JR九州 豊肥本線:熊本地震(2016年4月16日)の被害

不通区間肥後大津駅〜阿蘇駅間27.3km
被害状況51か所で斜面崩壊、土砂流入、路盤流失など
復旧見込み2020年度内に運転再開予定

 

↑豊肥本線の不通区間の名物といえば、立野駅〜赤水駅間にあるスイッチバック区間。立野駅を発車した下り列車は、この先にあるスイッチバック転向線で方向転換。阿蘇外輪山の傾斜地をゆっくりと登る長閑な情景が魅力だった

 

↑上の写真とほぼ同位置で写した2017年5月末の様子。地震から1年たち、線路はすっかり錆が浮き、また付近の棚田も放置された状態になっていた。かつての美しい風景が取り戻せるのだろうか

 

2019年4月10日に国土交通省、熊本県、JR九州による「JR豊肥本線復旧連絡協議会」が開かれた。そこで工事工程を精査、国が実施中の阿蘇大橋地区の斜面崩落部の対策を2019年度末に概成させる。そしてこの部分をJR豊肥本線の復旧工事用ヤードとして活用する等の連携工事が進められることとなった。そして豊肥本線は2020度内に運転再開を目指すとされた。

 

不通区間では、最も工事が難航するだろうと見られていた阿蘇大橋地区。大規模な山崩れによって国道325号の阿蘇大橋が崩落、国道57号が不通となった区間である。この地区ではそそり立つ山のほぼ頂上部分から、山崩れを防ぐように大規模な工事が進められていた。国道の復旧とともに平行する豊肥本線の復旧工事が連携して進められ、復旧への道のりが、より明らかになった。

 

運転再開となれば、かつて走ったクルーズトレイン「ななつ星in九州」が再びこの路線を走り、また観光特急「あそぼーい!」も復活となりそうだ。楽しみにしたい。

 

【関連記事】
熊本地震で被災した九州の鉄道事情豊肥本線は1年前とどう変ったのか

 

 

⑱【九州の不通区間2】日田彦山線の名物めがね橋も過去のモノに

豪雨災害は時に、大切な文化遺産を奪ってしまうことがある。日田彦山線は福岡県と大分県の内陸部を走る68.7kmローカル線。日豊本線の城野駅(じょうのえき)と久大本線の夜明駅(よあけえき)を結んでいた。このローカル線が2017年7月の九州北部豪雨により寸断された。

 

不通区間には名物だっためがね橋が架かる。この名物のめがね橋を列車が走る姿は今後、見ることができない可能性も出てきた。

 

◆JR九州 日田彦山線:九州北部豪雨(2017年7月5〜6日)の被害

不通区間添田駅(そえだえき)〜夜明駅間29.2km
被害状況複数の橋りょうの橋脚の傾きや変形、斜面崩壊、土砂流入など
復旧見込み未定

 

↑筑前岩屋駅〜大行司駅(だいぎょうじえき)間にある栗木野橋りょう。太平洋戦争の直前、資材に事欠いた1938年に完成したため無筋コンクリート充複5連アーチ橋という特異な構造を持つ。同線には他に宝珠山橋りょうというめがね橋もある

 

日田彦山線の復旧では、不通区間の復旧費用の一部を国や沿線自治体が負担するという合意が得られていた。しかしその後、路線の維持管理は自治体で、運営はJR九州が行うという「上下分離方式」を提示されたことから話し合いが進んでいない。復旧を諦め、BRT(バス・ラピッド・トランジット)化する案も示されている。

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