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2019/11/24 18:00

東京の地下鉄電車が熊本で大活躍!気になる「くまでん」12の秘密

【くまでんの秘密⑨】緑を見ながら北熊本駅〜上熊本駅間を乗車

北熊本駅から上熊本駅方面に乗換えることにしよう。

 

北熊本駅から上熊本駅までは5駅ほどだ。全線、熊本市内を通っているものの、緑が濃く爽やかな区間でもある。まずは北熊本駅を出発すると、右手に坪井遊水公園が見える。公園周囲の突堤が遊歩道になっている。

 

次の駅が坪井川公園駅だ。このお隣の駅、打越駅の間で坪井川を渡る。この川沿いには坪井川緑地がある。坪井遊水公園や坪井川緑地は、坪井川が氾濫することを避けるための遊水池として活かされている。

↑坪井川緑地を通る熊本電鉄の01形電車。同沿線には緑地が多く、市内でも絵になる箇所が目立つ。写真は坪井川公園駅〜打越駅間。線路沿いに遊歩道があり、気兼ねなく撮影が楽しめる。撮影は12月初旬の模様。樹木が色づき、車両の撮影向きの背景となった

 

打越駅〜池田駅間には短いトンネルがある。池田駅のホームからは、このトンネルがすぐ近くに見え、トンネルを出てくる電車を撮影するのに向いている。またトンネルの上から俯瞰した池田駅も絵になる。ちなみに5、6月ごろ、暮れたトンネル入口付近でホタルを目にすることもできる。

 

池田駅の先は、韓々坂駅(かんかんざかえき)。そして終点、上熊本駅へ。熊本電鉄の上熊本駅のホームのすぐ目の前にJR鹿児島本線の上熊本駅がある。こちらは2015年に線路が高架化され、それに合わせて新しい建物になっている。さらに南隣には熊本市電の上熊本駅が。こちらの駅舎は、大正初期に建てられた国鉄の上熊本駅の二代目駅舎を移築している。洋風駅舎としての評価が高かったこともあり立派だ。

↑シンプルな造りの熊本電鉄上熊本駅。古くは同ホームとJRの線路の間に、貨物線用の留置線や、連絡線が設けられていた。現在は駐車場が広がる

 

さて、熊本電鉄の上熊本駅。ホームは1面、線路1本の小さな駅だ。ここが熊本電鉄菊池線の起点駅でもあり、駅のナンバーも「KD 01」となっている。駅は実にシンプルな造りだ。

 

歴史をたどると輝かしい時代もあった。現在、JR線と菊池線の間には、貨物列車用の留置線があった。さらに当時の国鉄鹿児島本線を結ぶ連絡線があった。

 

すでに引退してしまったが、熊本電鉄の5000形も、この連絡線を通って、熊本電鉄へ運ばれた。残念ながら1985(昭和60)年に、こうした連絡線や、引込線は撤去されたが、当時の様子をぜひとも見たかったものだ。

 

 

【くまでんの秘密⑩】国道整備のために東に引っ越した黒石駅

北熊本駅へ戻って、御代志駅までの旅を続けよう。駅を発車すると、亀井駅までは、やや登り坂となっている。路線に平行して、坪井川が流れている。亀井駅を過ぎるころには、坪井川は眼下を流れるようになり、路線が河岸段丘の上を走っていることに気が付く。

 

各駅間はほぼ均等で、車内の路線図には、駅間の所要時間が記載されている。見ると藤崎宮前駅から、3分、3分、3分、2分、2分、2分……といった具合。御代志駅まで、どの駅間も1〜3分といった所要時間になっている。駅間の距離は長くとも1.2km。ほとんどが隣の駅まで数100mと短い。最短は400mだ。

 

熊本電鉄は古くは路面電車が起源ということもあり駅間が短い。沿線に住む人たちには便利な公共機関ということができるだろう。

↑菊池線の黒石駅。ホームの裏側には竹林が広がる。同駅での上り下り列車の行き違いも多い(左上写真)。当初は国道387号沿いにあったが、国道の改良工事に伴い、路線が東へ移動。現在の位置となる

 

途中、黒石駅へ降りてみた。このあたりまで来ると住宅もまばらになってきて、駅付近にも緑が目立つようになった。

 

ちなみにこの黒石駅は2001(平成13)年に移動した新たな駅だ。平行して走る国道387号の拡幅工事を行ったためで、ほぼ道に沿って敷かれていた線路は、最大で140mほど東へ移動した。駅周辺に空き地が目立つが、こうした移動により生まれたものだった。同区間の踏切数が減り、また手前には三ツ石駅(みついしえき)が新しく設けられた。九州自動車道を走る高速バスのバス停も、三ツ石駅から徒歩10分ほどの距離にある。

↑黒石駅を発車した藤崎宮前駅行き電車。写真は2001年の移動で造られた新線部分。撮影者の後ろに踏切があったが、国道までの距離が延ばされたことで、渋滞も緩和しているように感じた

 

線路の移動により国道387号の渋滞も、当時は緩和につながったようだが、電車から平行して走る国道を見ると、相変わらずクルマが数珠繋ぎ状態に。数年前に訪れたこともあるが、よりクルマの渋滞が悪化しているように感じた。

 

【くまでんの秘密⑪】終着駅ながら寂しい雰囲気の御代志駅

黒石駅を過ぎると、電車は国道387号に平行して走る。渋滞しがちな国道に比べて電車は快適に走る。黒石駅の次の駅は熊本高専前駅だ。駅名どおりに、近くに熊本高等専門学校があり、乗車した日は、ここで下車する学生が多かった。

 

駅前にはグラウンドや農場が広がる。車内からは牧場が遠くに見え、一瞬、北海道の路線を乗車しているように錯覚してしまうほどだ。

 

御代志駅が近づくにつれ、大規模な公共施設が多くなる。そして終点の御代志駅に到着した。北熊本駅から片道ちょうど20分。国道387号沿いに1面1線のホームがある。

↑ホーム1面、そして線路1本の御代志駅。線路の先には車止めが設けられる。1960年代までは木造の駅舎があり、線路もホームの両側に計2本が設けられ、貨物輸送用の側線もあった

 

御代志駅の前にはバスのロータリーがあるものの、終着駅という趣は乏しい。国道を隔てた地域には、地元・合志市の住宅街が広がっているが、反対側は緑に包まれている。菊池線はこの先、13.5kmの路線が菊池駅までつながっていたが、御代志駅は、今もやはり菊池線の途中駅という印象が強い。

 

御代志駅まで乗車している人は少なかった。途中で降りてしまう人が多かった。駅前にバス停があるのだが、ここからバスに乗ろうという人も少ない。

 

その理由は同駅前の走るバスの多くが熊本駅前と菊池温泉を結ぶバスだからだ。解説は不要かも知れないが、菊池へ行く時はバスが便利。さらに菊池から熊本方面へ行く時もバスが便利というわけだ。さらにバスは15〜30分おきに運転されている。所要約1時間30分で、熊本駅前から菊池まで行くことができる。

↑御代志駅のホームを国道側から見る。電車が停車する正面がバス停となっている。駅前からは菊池方面行きと、熊本駅方面のバスが出ている。左上の写真は線路が以前、敷かれていた方面の様子。先の大池まで熊本電鉄の用地が残るため、線路を延ばす計画もあった

 

こうした現状を見ると、電車を利用する人は少ないのも頷けてしまう。さらにバスを運行しているのは熊本電鉄バスで、バス路線の名も菊池線だ。

 

熊本電鉄に乗車する人は、駅周辺に住む人たち主体で、しかも熊本駅を目指す人よりも、藤崎宮前駅から通町筋といった市街や、上熊本方面へ向かう人が多いようだ。利用率が上がらず、鉄道部門が長年にわたり赤字が続いていることにも納得してしまう。

 

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