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2019/11/29 19:30

「電気」は面白い! 日産のテクノロジーツアーに見る最新技術の魅力とは?

通常、実際に商品化されるまでは外部の目に触れることがない自動車メーカーの最新技術ですが、その先進性や技術力をアピールする目的でメーカー自らが一部を公開することがあります。今回は、日産がメディア向けに開催したテクノロジーツアーから主要なものをご紹介しましょう。

 

ツインモーターとトルクベクタリングで“スポーツする”リーフのテストカー

ガソリンエンジンなど、内燃機関ベースのものと比較すると電気モーターを複数使用した4WDは複雑な車両制御がシンプルな構造で実現できる利点があります。実際、「リーフe+」をベースとしたテストカーはリアにも電気モーターを追加して4WD化。これに左右の駆動配分をブレーキトルクベクタリングでアクティブに制御するシステムを組み合わせていますが、見ためや室内空間などはベース車とほぼ同じ。ブレーキトルクベクタリングはともかく、前後独立の動力源を内燃機関で成立させようとすれば機械的な部分が複雑になるだけではなく空間効率も悪化、さらには前後の駆動制御も難しいものとなります。その意味で、このテストカーはピュアEVであるリーフの強みを体現したものといえるでしょう。

↑テストカーのボディサイズは全長4480×全幅1830×全高1540mm。ホイールベースは2700mmとなります

 

↑外観は“それっぽい”カラーリングに加え、前後にオーバーフェンダーを装着していることがベース車との大きな違いです

 

↑テストカーの都合でドライバーはくじ引きで決定。見事にドライバーの資格をゲット。こういう時の運(だけ)は良い筆者(笑)

 

そのアウトプットは、“ツインモーター”と呼ぶに相応しいもの。システムの最大出力はおよそ309PS(227kW)、最大トルクは680Nm(69.4kg-m)に達します。それが全長4.5m弱のリーフのボディに載っているわけですから動力性能は推して知るべし、です。リーフe+も発進加速はパワフルですが、テストカーはアクセルの踏み始めからリアルスポーツ級の速さを披露。今回はテストコースで短時間、という試乗環境でしたがおそらくアクセルを全開にする時間が長ければ、特に大トルクの恩恵は一層鮮明に感じられたでしょう。

↑テスト車両、ということでホイールはレイズのボルクレーシングを装着。なお、タイヤサイズはフロントが215/55R17、リアは235/50R17

 

↑テストカーのインパネ中央には、前後左右の駆動力配分やGを表示するモニターが据えられていました

 

前後モーターを独立で制御するメリットは、それだけにとどまりません。4WDならではのトラクション性能を余すところなく活かせるだけではなく、アクセルオフ時の回生ブレーキをリアでも発生させて車両の姿勢をフラットに保つことが可能。さらには旋回力、いわゆるハンドリング性能を高めることにも威力を発揮します。今回のテストカーでは前述の通り、左右のブレーキ制御を組み合わせていましたが「曲がる」能力はベース車を格段に上回ります。今回は濡れた路面でアクセルを踏み込みながら旋回、というシチュエーションも用意されていましたが、通常ならフロントから軌跡を膨らませてしまうような状況でもテストカーはステアリングを切った方向に曲がる姿勢を保ち続けます。これには4輪のブレーキを独立して制御するブレーキトルクベクタリングも大きく貢献していますが、前後の駆動力を路面状況に応じてきめ細かく制御できる電動4WDのメリットも明らか。いまやプレミアムな電気駆動モデルでは、前後だけでなく左右の駆動を独立したモーターで行なうものも現れていますが、リーフのテストカーは改めて電気駆動4WDの面白さを実感させてくれる出来栄えでした。

↑トーションビーム越しに見えるリア用の電気モーター。コンパクトということで収まってはいますが、レイアウトは確かにテストカー的です

 

↑ドライ路面はもとより、写真のようなウエット路面でアクセルを開けるとライントレース性の高さが実感できる仕上がりでした

 

ドライブのお供はARアバターになる?

「I2V(インビジブル・トゥ・ビジブル)」とは、日産が2019年初頭に発表したコネクテッドカー向けの将来技術。リアルとバーチャルの世界を融合させ、名前の通り「見えないものを可視化する」ことを目的としています。具体的には通常だと見えないクルマ前方の状況を予測。建物の裏側、カーブの先などを事前に映し出すことを可能にして安全性や利便性を向上させます。また、その中には新たなインターフェイスとして車内にARアバターを出現させ運転のサポートやコミュニケーションツールとして活用する提案も行なわれています。

↑デモ体験のARアバターは、ご覧のお二人。アバターのグラフィック次第で見る人の印象は大きく変わりそうです

 

今回のイベントでは、そのARアバターとのコミュニケーションを疑似体験することができました。会場には身体の動きをスキャンするセンサーを身に着け、カメラに囲まれたアバター役の女性が待機。体験者は3Dヘッドセットを被り、会場に運び込まれたテスト車の中から彼女たちが動かすアバターと会話をするというものでしたが、感覚としては確かに新鮮ではありました。現状ではヘッドセットが重い上にARアバターのリアリティ(解像度など)もいまひとつ。また、アバター役を務めた女性たちの“重武装”ぶりを目の当たりにしてしまうと、実用化されるにはもう少し時間が必要かな、というのが実際のところ。とはいえ、当日会場にいた日産のエンジニア氏いわく、今後はヘッドセットなどの機器が飛躍的に進化するはずなので先行きの見通しは明るいとのことでした。

↑実際のARアバター役は、ご覧の通り相応の“重装備”になります

 

↑会場では体験者がヘッドセット超しに見ている画像がモニターに。ARということでアバター以外も表示機能は多彩。使用されたヘッドセットの問題もあり、実際に体験すると車内はここまで明るくなかった点は少し残念でした

 

そもそもの話、車内でのコミュニケーション手段としてARアバターまで動員する必要があるのか? という疑問を抱く人はいるでしょう。また、最新モデルでクルマに“話しかける”ことすら気恥ずかしく思う人は、特にアニメ的にデフォルメされたARアバターとの会話など受け入れがたいはずです(筆者は平気ですが)。とはいえ、クルマの本質的な使い方すら今後変わっていく状況を思うとこうしたアプローチもアリでは? と考えさせられてしまうのもの事実。実際、日産ではすでにNTTドコモと5G技術を使ったI2Vの走行実証実験をスタート。仮想世界と現実の境界を取り払う試みは、すでに本格化しているのです。

↑デモ体験者の装備は、こんな具合。今後、3Dヘッドセットが眼鏡レベルのサイズ(と重さ)になることが必須でしょう
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