ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回取り上げるのは、日本のトラディショナルモデル、カローラ! 時代を象徴するクルマはどう変わったか?
【関連記事】
永福ランプこと清水草一さんの連載記事はコチラ
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更しています。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。
【今月のクルマ】トヨタ/カローラ ツーリング
SPEC【ハイブリッド S・2WD】●全長×全幅×全高:4495×1745×1460㎜●車両重量:1370㎏●パワーユニット:1797㏄直列4気筒エンジン+モーター●エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200rpm●エンジン最大トルク:142Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:29.0㎞/ℓ●201万3000円〜299万7500円
「土台がよくなったことで、乗り心地の質感がケタ外れに上がっている。この乗り味はまるでドイツ車だ」
安ド「殿! 新型に生まれ変わったカローラが、さっそく月間新車販売台数1位に返り咲いたそうです!」
永福「そのようだな」
安ド「乗ってみても、すごくいいクルマになった印象を受けますから、その成果でしょうか?」
永福「確かに新型カローラは、ものすごくいいクルマになった」
安ド「ですよね!」
永福「先代カローラがあまりにもペナペナだっただけに、その落差に失神しそうになったほどだ」
安ド「そこまでですか!」
永福「例えば、100円ショップとアウトレットモールくらい違う」
安ド「そんなにですか!(笑)」
永福「新型はすべてが良くなっているが、一番変わったのはボディのしっかり感だ」
安ド「トヨタ自慢の新型プラットフォーム、TNGAですね!」
永福「うむ。プラットフォームとはつまり土台だが、土台がよくなったことで、乗り心地の質感がケタ外れに上がっている。この乗り味はまるでドイツ車だ」
安ド「スポーティな走りが楽しめますよね!」
永福「ハンドルを切れば思い通りに気持ち良く曲がるのに、路面からの突き上げはしなやかにいなしている。“凡庸”の代名詞だったカローラが、ついにVWゴルフに追いついた気がするぞ!」
安ド「追いつきましたか!」
永福「追い越したかもしれん」
安ド「追い越しましたか!」
永福「デザインもいい」
安ド「顔は細長いヘッドライトとV字に切れ上がった、トヨタ独自の“キーンルック”ですね!」
永福「カローラとは思えないほど精悍な顔つきだし、プロポーションがいい。適度にスポーティな走りを予感させつつ、実用性もしっかり確保している」
安ド「いいところだらけですね!」
永福「しかし、クルマのデキと売れ行きとは、必ずしも一致しない」
安ド「え? 売れ行き好調ですよ」
永福「発売直後の出足がいいのはいつものこと。この勢いは長くは続かないだろう」
安ド「な、なぜですか!」
永福「カローラはものすごくいいクルマになったが、価格もかなり上がっている。先代に比べると30万円以上高い。売れ筋のハイブリッドモデルは最低約240万円。上級グレードにオプションを付ければ軽く300万円超えだ」
安ド「そんなに上がってますか!」
永福「自動ブレーキが全車標準装備になったし、性能を考えれば妥当だが、もともとのカローラオーナーが、ここまでいいクルマを望んでいたかどうかは疑問だ」
安ド「そんな!」
永福「考えてみろ。100円ショップの商品で十分なのに、『品質を上げましたから、今度から130円均一です』と言われたら、購買意欲が薄れるだろうが」
安ド「30円くらいはいいと思いますが……」
【その1/ディスプレイオーディオ】カーナビのようでカーナビじゃない
トヨタ初採用となる「ディスプレイオーディオ」とは、クルマのディスプレイ上で展開できるマルチメディアユニットのこと。スマホを繋げば、日常で使用している地図や音楽などのアプリを車内で使えるのです。つまりこれ、カーナビじゃないんですね。
【その2/リアスタイル】すこし太めになったけど運動神経は良いんです
従来よりボディサイズが拡大されたため、セダンもこのワゴンもどちらもちょっと太めになりました。いかにも室内が広そうでユーティリティ優先な感じですが、実はかなり低重心になっており、走りもスポーティです。
【その3/荷室】様々な用途に使えるユーティリティの高さが魅力
リバーシブルのデッキボードが採用され、床面の高さも2段階で調節可能となっています(一部グレードを除く)。荷室が広く様々な物を積めるワゴンは、実はカローラシリーズのなかで一番人気のボディタイプでもあります。
【その4/モードスイッチ】慣れると変えなくなるドライブモード
走行モードを変更するスイッチがシフトの前に付いています。ちょっと触れにくい位置に設定されたのは、きっとオーナーたちが、最初はともかく、そのうち日常使用でモードを変えることがなくなることを見越しているのでしょうか。
【その5/エンジン】パワーユニットは3種類好みに応じて選べる
写真のハイブリッドのほか、ガソリンエンジンも設定されています。排気量は従来の1.5ℓから1.8ℓへ拡大されました。きっとボディが大きくなったのが要因でしょう。MT車の設定もあって、こちらには1.2ℓ直噴ターボエンジンが組み合わされます。
【その6/ヘッドライト】鋭く尖った目つきで魅了する
ヘッドライトはくさび形でスポーティな雰囲気です。また、ライトから中央のグリル、さらに逆側のライトまでがつながっていて、ワイド感を演出しています。もちろん光源はLEDで、前方を明るく照らします。
【その7/サイドミラー】大型化してもうまくたたんで不満解消?
サイドミラーは取り付け位置が工夫されていて、たたんだ際の車幅は先代と同等なんだそうです。ボディが3ナンバーとなって大型化したことで先代のオーナーが感じている不満を、少しくらい解消できるかもしれません。
【その8/リアシート】日本向けサイズは少し狭いか?
新型プラットフォームが採用されましたが、日本のセダンとワゴンは、グローバルモデルと比べるとボディがやや小さくなっています。後席もあまり広いとはいえませんが、トランクスルーが可能で使いやすさはそれなりです。
【その9/車名】ネーミングを一新したけど先代もまだ買えます
新型カローラでは、セダンはサブネームの「アクシオ」がとれて「カローラ」となり、ワゴンは「フィールダー」が「ツーリング」へと変更されました。が、実は先代のアクシオとフィールダーは、法人向けにいまも継続販売されています。
【これぞ感動の細部だ!/TNGA】新型カローラが採用したのはトヨタの最新骨格
2018年6月に登場したカローラ スポーツ同様、新型カローラには「TNGA」と呼ばれるトヨタの最新プラットフォームが採用されています。これはクルマの“土台”となる骨格のことで、クルマの基本的な性格や性能を左右する大事な部分です。結果、低重心でスポーティな走りを実現し、乗り心地と操縦安定性も優れたものになりました。
撮影/我妻慶一
【フォトギャラリー(GetNavi webにてご覧になれます)】