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2019/12/27 20:00

雪景色の中、日産と三菱自動車の実力派車種をテスト試乗。雪上での実力はいかに!?

2019年2月、北海道で実施された日産と三菱の雪上試乗会に参加した。ご存知のとおり日産と三菱はアライアンス関係にあるが、電動化や先進技術に積極的である点も共通していて、お互い4WDにも力を入れている。そんな両社の雪上性能の最新事情をお伝えしたい。

 

まずは日産車の雪上試乗からレポート!

日産では、電動駆動、エンジン駆動、FF、FR、4WDと多彩な駆動方式の車両が用意されていて、車種により特設コースもしくは一般公道で試乗した。

 

中でも印象的だったのは電動駆動車の走りやすさだ。とくに100%純EVの「リーフ」は前輪駆動でありながら4WDかと思うほど走りやすくて驚かされた。最高出力150PS、最大トルク320Nmを発揮するモーターはアクセルを踏み込んだ瞬間から最大トルクを発生し、しかも実に1万分の1秒というスピードで緻密にトルクを制御している。おかげで、すべりやすい路面でも、空転させないギリギリのところを掴んで簡単に発進できてスムーズに前に進んでいけるわけだ。さらには、横滑りを防ぐ「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」の制御も緻密なおかげで、コーナーの立ち上がりでアクセルオンにできるタイミングも早い。

 

同じくセレナe-POWERも走りやすい。「e-POWER」というのは、駆動するのは100%モーターだが、その電力を充電専用の1.2リッターエンジンで賄い、リチウムイオンバッテリーに充電しているのが特徴だ。ミニバンなので車両重量は1.8トン近くあるが、圧雪と凍結がおりまざる路面状況の中を、同じく安心して走ることができた。

 

さらに、ノートe-POWERはFFと「e4WD」が用意されていたのだが、乗り比べると違いは歴然。滑りやすい路面でもっともやっかいなのが停止状態からの発進なのだが、発進時に後輪をモーター駆動して発進をアシストするe4WD搭載車は、フロントタイヤの空転を検知すると直後に後輪を駆動するので、前輪駆動車に比べて圧倒的に発進がラク。e4WDのリアモーターは性能としては控えめで、車速が30km/hに達するまでの範囲にアシストは限られる。とくに上り勾配の坂道のような状況では前輪駆動車ではどうしても空転しがちなところだが、e4WDなら大丈夫だ。

 

日産独自の回生ブレーキによりアクセルオフにするだけでモーターとブレーキを併用して4輪で制動力を発揮し安定した減速を可能にするという「e-Pedal」は、こうした滑りやすい路面ではなおのこと扱いやすかった。ノートNISMO Sには雪道走行モードが設定されていることもお伝えしておこう。

 

また、ガソリンエンジンを搭載する「エクストレイル」や「ジューク」を公道でドライブしたのだが、「インテリジェント4×4」のおかげで安定して走ることができた。とくにエクストレイルは、車体の上下振動を予測してエンジントルクとブレーキを制御することで振動を低減する「インテリジェント ライドコントロール」や、状況により自動的にエンジンブレーキを吹かしてドライバーのブレーキ操作の負荷を軽減する「インテリジェント エンジンブレーキ」、運転操作に応じて4輪個別にブレーキを制御してなめらかなコーナリングを可能とする「インテリジェント トレースコントロール」も効いて、より乗りやすく快適に走ることができた。

 

さらに、「GT-R」、「フェアレディZ」、「スカイライン」といった高性能モデルで特設コースを走ってみた。「トランスアクスル4WD+アテーサE-TS」という世界唯一の4WDシステムを搭載するGT-Rはどこを走っても無敵の速さだ。雪上でもタイヤのグリップのかぎりガンガン攻めていける。

 

逆に古典的なFRのスポーティモデルであるフェアレディZやスカイラインは、アクセルを少しでも強めに踏むと簡単にテールスライドするのだが、VDCさえONにしておけば安全に走れる。こうした電子制御デバイスが滑りやすい路面でいかに有益であるかをあらためて確認できた。

 

三菱が誇るS-AWCを雪上でも体感できた

三菱は、「デリカD:5」、「エクリプスクロス」、「アウトランダーPHEV」をいろいろな特設コースでドライブした。4つのタイヤの能力をバランスよく発揮させることを目的に、前後輪あるいは左右輪の間でのトルク配分や4輪個別のブレーキ制御を行ない、それらを統合制御する独自の4輪制御技術に注力している。それが三菱が誇る「S-AWC(=Super All Wheel Control)」だ。

 

コワモテ顔が話題となった「デリカD:5」は、従来型と乗り比べることができたのだが、一気に高級になったインテリアとも呼応するかのように、乗り味も格段に上質になっていることが雪上でも確認できた。静粛性が高く、乗り心地も快適そのもの。コースを攻めても、足まわりの改良や新たにデュアルピニオンタイプに変更された電動パワステも効いて、とても軽快に走れる。実はデリカD:5には件のS-AWC技術を採用しておらず、左右輪間のトルクベクタリングは行なっていないのだが、前後輪間トルク配分は最新の電子制御カップリングにより制御していて、これはっ!?というような難所も見事に走り切ることができた。こんなミニバン、世界中を探してもほかにない。

 

SUVの2台も、素晴らしい走りを見せてくれた。エクリプスクロスは、雪の上でもまるでスポーツカーのように身のこなしが軽く、意のままのハンドリングを楽しむことができた。操舵したとおりに応答遅れなく、雪上の大敵であるアンダーステアをあまり気にすることもなく、狙ったラインをトレースしていける。SUVは数あれど、これほど雪上を気持ちよく走れるSUVというというのはそうそうない。三菱が誇るS-AWCによる高度な制御が、こうした走りを可能としているわけだ。

 

一方のアウトランダーPHEVは、フロントとリアを駆動するモーターが完全に独立しているおかげで、それぞれのモーターを個別に自在に制御できるため、より理想に近い仕事をさせることができるところが特徴だ。むろんモーターの強みである緻密なトルクの制御のしやすさもあって、雪上でも姿勢をコントロールしやすく、ドリフト走行状態を維持しやすいことも好印象だった。なお、三菱では左右輪間のトルク配分をより理想的に行なえるよう、次世代機種ではリアを2モーターとすることを検討しているようだ。

 

こうして日産と三菱のいくつかの車種を雪上・氷上でドライブして、両社の技術力の高さを実感するとともに、それがこうした状況下でいかに有益であるかを身を持って体感してきた次第である。優れた技術は、筆者らクルマの専門家を唸らせるだけでなく、初心者など運転が不得手な人にとっても強い味方になってくれることはいうまでもない。降雪地にお住いの方々はもちろん、ときおり降雪に見舞われることのある非降雪地に住む人にも、ぜひ4WDというものに関心を持っていただけると幸いに思う。

 

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