【明知鉄道の不思議⑥】駅前温泉もここまでくると特筆もの
岩村の町の規模にびっくりさせられた。ところが、駅が町の外れにあるせいか、明智駅行列車に乗車すると、ほどなく車窓は田園風景一色となってしまう。本当に“大きな町があったのだろうか?”という不思議な印象にとらわれたほどだ。
のどかな風景に包まれてしばらく走ると、花白温泉駅(はなしろおんせんえき)へ到着する。駅を降りてびっくりさせられた。駅名から温泉が近くにあることは推測できるものの、駅の目と鼻の先に温泉があったのだ。全国には駅舎内に温泉施設が併設される駅が無いわけではない。ここは階段を数段下りて、10歩も歩けば玄関なのである。比類なき近さと言って良いだろう。
筆者も話の種にと立ち寄ってみた。入湯料は550円だが、明知鉄道のフリー乗車券を提示すれば100円引きとなる。湯船は内湯のみ。泉質はラドン放射能泉で、pH(水素イオン指数)は9.6という弱アルカリ泉だ。入ると“つるぬる”といった感触があった。
食事処もあり、「山金豚の味噌カツ丼(980円・税別)」や「花白寒天らーめん(600円・税別)」が名物となっている。地元恵那市山岡町の細寒天100%の麺という寒天らーめん。次に行く機会があったら、ぜひとも食べてみたい。
【明知鉄道の不思議⑦】なぜつり革にお笑いタレントの名があるの
明知鉄道もご多分に漏れず全国のローカル線と同じく、赤字体質を抜けることができない。
とはいえ、乗車していて鉄道会社の懸命さが列車内で感じられた。まずは運転士さんがなかなかPR上手である。ちょうどそういう人柄だったのかも知れないが。駅の案内も楽しく聞くことができた。乗り降りする乗客への対応も細かな配慮が感じられた。
ほかに食堂列車の企画などもそうした一連の鉄道会社の懸命さを示す催しだろう。何もやらないよりも、こうした運行する側の熱意が、自然と乗客にも伝わるものだと思う。乗車して応援もしたくなる。
他に興味深かったのは、つり革。お笑いタレントが描いた「彼氏大募集中!!」とい書かれたつり革があった。さてどうして?
つり革を手ごろな広告媒体として利用していたのである。両面1セット1年間5000円で募集していた。「彼氏大募集中!!」には、思わずにっこりさせられた。
【明知鉄道の不思議⑧】構内に停まるSL・C12形は?
楽しい運転士の対応に耳を傾けつつ、終点を目指す。花白温泉駅の次は山岡駅。この駅には隣接して地元・山岡の名物、寒天のデザートや細寒天を使った料理を提供する山岡駅かんてんかん「寒天カフェ&レストラン」がある。
さらに次の駅は野志駅で前述したように、ここは全国第3位という30パーミルという急勾配にある駅だ。明知鉄道には個性的な駅が多いのである。
下り急勾配を下っていくと、ほどなく町並みが見え初め明智駅へ到着した。ホーム1面の小さめの駅だが、奥には明知鉄道の車庫がある。そして明知鉄道の多くの車両が停められている。
その中で気になるのはやはりC12形蒸気機関車だ。国鉄明知線などを走った蒸気機関車で、ナンバーはC12の244号機。引退後、地元の明智小学校で保存されていたものだ。現在は圧縮空気を動力にして構内を走る状態に整備されている。そして定期的に車掌車を連結した「SL乗車体験」や、「SLミニ体験運転」が行われる。昨年は「SLふれあい整備体験」も催された。
将来的に明知鉄道では、C12形蒸気機関車を整備して、動態保存車両として走らせたいという意向もあるとされる。