【苦悩する鉄道⑦】駅なか施設や車内売りも大きな打撃に
鉄道会社の本業はもちろん旅客輸送だが、それ以外の事業も各社幅広く行っている。そうした事業の中で、今回の新型感染症の大きな影響を受けたのが、駅なか事業であろう。駅そば店などの飲食業は、貸店舗も含め、状況は厳しい。
例えば小田急沿線の駅などに出店しているそば店「名代 箱根そば」は、小田急電鉄の関連会社、小田急レストランシステムが運営している。同店舗の営業状況を見ると、4月13日以降、平日は新宿西口、登戸、町田、小田原といった一部の店は営業しているものの、15時もしくは18時までの営業で終了(通常時は22時前後まで営業)、ほか休業している店舗が多い。週末の土曜・日曜日はほとんどの店舗が休業となる(変更される場合もあり注意)。
JR東日本の関連会社のJR東日本フーズでは、駅構内でその名もずばり「驛そば」、「いろり庵きらく」、「大江戸そば」という名称でそば・うどんを提供している。現状、大半の店が19時までの時短営業、土日・祝日は休業という店舗が多くなっている。
忙しいビジネスマンにとって気軽に立ち寄れる食事処だけに、残念なところである。
駅なか事業とともに、新幹線や特急列車の車内で行われる車内販売も鉄道会社にとっては欠かせない事業となっている。対応状況を見ると、東海道新幹線は車内販売を続けるものの、山陽・九州新幹線は車内販売を自粛。JR東日本の新幹線路線も、車内販売を当面見合わせる、としている。鉄道会社は、ほかにもホテル事業や、さまざまな事業展開を行っている。旅行関連事業など、今回の騒ぎで、その影響は深刻なものになりつつある。
【苦悩する鉄道⑧】車内の中づり広告もスカスカの状態に
通勤電車では、窓開けのほか一つの変化が見られ始めた。それは車内広告だ。車内広告は天井から吊られているのが「中づり」、窓の上部分が「まど上」。乗降ドアの周囲は「ドア横」、「ドア上」とよばれる。
こうした車内広告が明らかに減っている。「まど上」は一角、広告がない車両を多く見かけるようになってきた。
また天井からつりさげられる「中づり」にも変化が。企業広告は減り、多くが「自社広告」。つまり鉄道会社の関連企業の広告やリクルート広告が目立つようになってきた。団体や協会といった公共性が高い広告も目に付く。都営地下鉄の場合は、関連企業がほぼないこともあり、都バス関連の広告やマナー喚起といった広告が目立つ。
中づり広告は短いものは2〜3日、長くても1〜2週間単位での契約が多い。ちなみに「電車内ビジョン広告」とよばれる液晶ディスプレーを使った広告は、1週間〜20数週間といった契約期間が長いものが多いため、企業広告もまだ流されているようだ。
広告の出稿量は景気の動向に左右されやすい。鉄道車両内の広告は、乗客の目に直接触れるだけに、効果が大きいと言われる。しかし現状、電車の利用者が激減している。企業はこうした傾向に敏感に反応する。そして広告の出稿を抑える。
車内広告は短期間の契約が多いだけに、その影響をすぐに受けたわけだ。鉄道会社にとって、運賃収入の減少とともに、こうした目に見え難い部分の収入も減るという状況に陥りつつある。