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2020/4/19 18:30

新型感染症の流行に「苦悩する鉄道」−−列車運休から駅なか営業まで気になる情報を調べた

【苦悩する鉄道⑨】より脆弱な地方鉄道の今後が危ぶまれる

2020年4月10日、JR西日本の長谷川一明社長の定例会見で次のような報告が行われた。

 

「経営環境としては、当社として未だかつて経験したことのない、極めて厳しい状況です」。

 

収入の推移がその厳しさを物語っている。JR西日本の3月の収入は対前年の56.3%、新幹線、在来線特急の利用は前年の5割を切っている。さらに同報告が行われる直前の4月の7日間の収入は対前年40.8%といった具合だ。4月7日に国の緊急事態宣言が出される前の数字で、これ以降は、さらに収入悪化したことが推測される。

 

JR西日本の社長がいだく思いはすべての鉄道会社に共通する思いであろう。

↑路線内にアプト区間があるなど、乗って楽しめる大井川鐵道井川線。5月8日まで全線運休が発表された

 

余力のある鉄道会社は何とか、ある程度の期間はしのぐことも可能であろう。社債やコマーシャルペーパー(CP)を発行して減収分を補う会社の例も見られる。しかし、地方鉄道はそうした余力がない。

 

すでに静岡県を走る大井川鐵道では井川線(いかわせん)の千頭駅(せんずえき)〜井川駅間の5月8日まで運休すると発表された。井川線は、観光客の利用が多いとは言え、運休というのは思い切った手段である。またJR西日本の関連会社が運行する嵯峨野鉄道のトロッコ列車も5月8日まで運転を見合わせるとしている。

 

またGW期間中に廃止の予定だったJR北海道の札沼線(さっしょうせん/廃止区間は石狩当別駅〜新十津川駅間)は最終運転を前倒しすることとなった。4月17日の新十津川駅10時発を最終運転として、以降の列車は完全運休する。さらにJR北海道では5月から従業員の約2割の一時帰休を実施すると発表している。

 

終息がなかなか見えてこないなか、大都市圏を含め鉄道会社を取り巻く環境が、今後一層、厳しくなっていくことが予想される。国民への一時金の支給が取り沙汰されている一方で、鉄道会社のような公共インフラを支える企業への支援は、これまで取り上げられたという話は聞こえてこない。大切な公共インフラを守るためにも、考慮すべき時が近づいてきたのではなかろうか。

 

【苦悩する鉄道⑩】一筋の光明? JR貨物は黙々と貨物輸送に励む

JRグループの中で唯一、列車も運休させずに、黙々と列車を走らせ続けているのがJR貨物だ。4月7日に発表されたニュースリリースでは、「当社としては、物流を担う指定公共機関として、利用運送事業者の皆さま等と協力して引き続き貨物列車の運行を確保し、社会・経済への影響を最小化するとともに、緊急物資の輸送要請を受けた時は、それを最優先とするよう、努めてまいります」と頼もしい。

↑東海道本線を下るTOYOTA LONGPASS EXPRESS。トヨタの部品を運ぶ専用列車だ。騒動にかかわりなく、土日をのぞき運行が続く

 

そんなJR貨物も影響が皆無というわけではない。2020年3月のコンテナ輸送量は対前年比93.5%、4月は13日までで、対前年89.7%となっている。行き交う貨物列車を見ても、コンテナを積んでいない貨車が目につく。

 

とはいえ輸送量の極端な落ち込みは見せていない。外出の自粛が長引くに伴い、宅配便の輸送量が増加しているなど、貨物輸送にとってプラス要素もある。旅客各社が苦しむ中で一筋の光明である。鉄道貨物の輸送が絶えない限り、まだ日本経済の根幹は朽ちていないことを物語る。

 

鉄道旅客各社にしても一部に社員の一部を休ませる「一時帰休」が行われ始めている。幸い鉄道会社の社内で、大規模なクラスター感染が報告されていない。やはり鉄道を支える人たちの日々の細心の注意が、こうした好結果をもたらしているのであろう。

 

海外では人々の健康や暮らしを支えるために、自宅外に出て働く人たちを「エッセンシャル・ワーカー」と呼ぶ。感染拡大が広まるなかでそうした頑張る人たちを讃えている。日本国内でも鉄道の運行を支える「エッセンシャル・ワーカー」が、底力で持ちこたえ、鉄道の運行を支える限り、いつか、光が見えて来るに違いない。そしてその時が少しでも早く訪れることを祈りたい。

 

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