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2020/5/17 18:30

【保存版】コロナ禍が終息したら乗りに行きたい「おもしろローカル線」〈東日本編〉

 〜〜「ローカル線特別応援企画」おすすめ東日本16路線〜〜

 

のどかな景色の中をローカル線の列車がゆっくり走っていく。ゆったりと座れる車内の空き具合、車窓に広がる田畑、美しい海や山に心が自然と癒されていく。ローカル線に乗車する魅力は、日ごろ味わえない極上の時間が気軽に楽しめることであろう。

 

いま魅力満点のローカル線が新型感染症の影響を受けて、路線存続の危機に立たされている。そこで本サイトでは応援企画として、騒動が終息したら乗りに行きたいローカル線をピックアップ。まずは東日本のおすすめ路線を紹介する。

 

*ご注意:掲載した観光列車は運休することがあります。事前にご確認ください。乗車および撮影は新型感染症の流行が終息した後に楽しみましょう。

 

【北海道のおすすめローカル線】

JR北海道 富良野線(旭川駅〜富良野駅54.8km)

↑中富良野町の観光スポット「ファーム富田」から富良野線の列車を望む。ラベンダーは6月下旬に開花、7月中旬までが見ごろだ

 

これからがラベンダーのベストシーズンに

富良野線は北海道第2の都市・旭川と観光の町・富良野を結ぶローカル線。路線は北海道の中央部を南北に走る。旭川駅〜富良野駅間は所要1時間20分弱ほど。6月中旬には観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」も運転される予定だ。

 

車窓からは雄大な十勝岳連峰が東側に望め、北海道らしい広々した耕作地が連なる。それぞれの駅周辺には人気スポットも多い。例えば美瑛(びえい)ならば「パッチワークの路」や「青い池」などが。富良野ならば、テレビドラマ「北の国から」の舞台となった麓郷(ろくごう)、またラベンダーが楽しめる観光農園などが点在する。ちなみに人気の「富田ファーム」の近くには、臨時駅「ラベンダー畑駅」が夏期のみ開業する(列車は富良野・美瑛ノロッコ号のみ停車)。

 

JR北海道 釧網本線(網走駅〜東釧路駅166.2km)

↑北海道らしい広がる原生林の中を走る釧網本線の列車。釧路湿原などの大自然を車窓から手軽に楽しむことができる

 

ぜひ車窓から眺めたい釧路湿原とオホーツク海の美景

釧網本線(せんもうほんせん)は「本線」を名乗るものの、特急列車が走らないローカル線。全線を通して走る列車は1日に5往復で、路線の距離が長いこともあり所要3時間30分近くかかる。とは言っても沿線風景は変化に富み、飽きさせない。ちなみに6月末までは釧路駅〜塘路駅(とうろえき)間を観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」が運転される。

 

同路線の魅力はやはり沿線の風景であろう。網走駅から知床斜里駅までは北側に連なるオホーツク海の風景が素晴らしい。釧路市近郊では釧路湿原の中を走る。湿原には北海道らしい原生林と手付かずの湿原が広がり、その中をエゾシカが駆ける。訪れる人が増える夏期にはオホーツク海沿い、小清水町内に原生花園駅と、釧路湿原の最寄り駅、釧路湿原駅の2駅が開業する。素朴な温泉宿が点在する川湯温泉や、知床半島(玄関口は知床斜里駅)など訪ねたいポイントも多い。ちなみに川湯温泉駅の構内には無料の足湯があるが、同駅での列車の停車時間が短く、立ち寄ることができないのがちょっと残念だ。

 

道南いさりび鉄道(五稜郭駅〜木古内駅37.8km)

↑走るのは元JR北海道のキハ40系。車両は道南いさりび鉄道流の車体色に塗り替えられている。写真は白色車

 

函館湾を眺めて走る元江差線。車両カラーも楽しみに

函館湾に沿って五稜郭駅と木古内駅(きこないえき)の間を走る道南いさりび鉄道。2016年3月26日の北海道新幹線の開業に伴い江差線(津軽海峡線)が、道内唯一の第三セクター経営となる同会社に引き継がれた。

 

すでに4年たち、新たな鉄道線という印象が強まっている。特に印象的なのが車両カラー。車両は元JR北海道のキハ40系気動車が引き継がれたが、赤(濃赤車)、緑(濃緑色車)、黄色(山吹色車)など華やかに色に塗り替えられた。さらに朱色一色の「旧国鉄首都圏色車」、クリームと朱色の色分け「旧国鉄急行色車」といった鉄道ファンに人気の車両カラーも登場している。

 

すべての列車は函館駅から発車。終点の木古内駅までは約1時間で、途中、函館湾越しに望む函館山の姿が楽しめる。2016年まで同線では「北斗星」などの寝台列車や、特急スーパー白鳥などが走り、撮影することができた。そのころに訪れた鉄道ファンが多いのではないだろうか。今は色とりどりのキハ40系と、貨物列車やJR東日本のクルーズトレインなどが走る。久々に変わりつつある路線を訪ねてみてはいかがだろう。

【東北地方のおすすめローカル線】

JR東日本 津軽線(青森駅〜三厩駅55.8km)

↑津軽線の終着駅、三厩駅。閑散とした雰囲気に驚かされる。左上は北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅に隣接する津軽二股駅(2013年撮影)

 

最果て感は並みではない、津軽二股駅の現状もおもしろい

津軽半島の東海岸にほぼ沿って青森駅と三厩駅(みんまやえき)を結ぶJR津軽線。同線は2つの異なる顔を持つ。青森駅と蟹田駅(かにたえき)の間は電化され701系電車と、青函トンネルを抜ける貨物列車が走る。電車が走る区間は青森市の近郊区間といった印象が強い。一方、蟹田駅から先は非電化で、キハ40系気動車が走り、よりローカル色が強まる。青森駅〜三厩駅を通して走る列車は1日に1往復で、蟹田駅〜三厩駅間はこの1往復を含めて計5往復しか列車が走らない。

 

興味深いのは津軽二股駅。この駅は北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅と隣接していて、新幹線から乗換ができる。だが、駅名が異なる。初めて訪れた人は少し面食らうかもしれない。

 

奥津軽いまべつ駅はJR北海道が管理する駅。津軽二股駅はJR東日本が管理する駅という違いがあるせいなのだろうか。ちなみに北海道新幹線が開業する前に奥津軽いまべつ駅は、津軽今別駅という名前だった。津軽二股駅から先は駅が4つ。途中の3駅は集落に近くに駅が設けられているが、終着駅の三厩駅のみ集落から離れている。駅近くに民家が少なく、最果て感が一層強く感じられる。

 

津軽鉄道(津軽五所川原駅〜津軽中里駅20.7km)

↑岩木山(津軽富士)を眺め走る夏のストーブ列車。五所川原の夏祭りに合わせ数日運転される(今年は恒例の夏祭りが中止の予定)

 

秀麗な津軽富士を眺めつつ半島を北上する最北私鉄路線

国内最北を走る私鉄(第三セクター路線を除く)で、路線開業の歴史は古く今年の7月で90周年を迎える。列車は五能線の五所川原駅に隣接の津軽五所川原駅(JR駅と同じ構内にある)と津軽中里駅間を走る。列車の運行はほぼ1時間おきで、全線乗ると31分〜45分ほど。

 

五所川原駅近郊からは岩木山(津軽富士)の美しい眺めが楽しめる。その先、金木駅(かなぎえき)は小説家・太宰治の生家「斜陽館」があり、乗降する人も多い。お隣、芦野公園駅は桜の名所、県立芦野公園の玄関口だ。終着駅の津軽中里駅は私鉄最北の駅で、2017年に転車台が復活された。ちなみに津軽中里駅からは、北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅行きの路線バスが出ている。

 

津軽鉄道の名物といえばストーブ列車。旧型客車の中にダルマストーブが用意された名物列車で、冬期以外にも8月の五所川原の夏祭りなどイベント開催時に運行される。今年は夏祭りの新型感染症の影響で内容が変更される予定で、同列車の運行も難しくなっているようだ。

 

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三陸鉄道リアス線(盛駅〜久慈駅163.0km)

↑旧JR山田線の沿線から三陸海岸を望む。盛駅から久慈駅まで乗車するとかなりの乗りでがある。途中1泊しての旅行に最適だ

 

秋の台風被害から立ち直り3月20日に再び全線が復旧した

風光明媚な三陸海岸にほぼ沿って走る三陸鉄道リアス線。東日本大震災により不通になっていた旧JR山田線が、昨年の3月23日にようやく復旧した。そして南リアス線、北リアス線と線路が1本につながりリアス線となった。

 

ところが、台風19号の襲来により、わずか7か月後の10月12日から再び不通となってしまった。その後、工事が続けられ今年の3月20日に、釜石駅〜陸中山田間の営業を再開、全線復旧を果たした。

 

リアス線は第三セクター鉄道で最長の路線距離を持つ。盛駅から久慈駅まで完乗すると、4時間20分強と、とかなりの乗り応えがある。とはいえ、海景色、山景色とも変化に富み、乗って楽しい路線だ。この5月18日には田老駅(たろうえき)〜摂待駅(せったいえき)間に、新田老駅が誕生する。同駅は宮古市役所田老総合事務所に直結した駅。田老駅の駅前地区が津波の被害にあい、山側に多くの民家が移動した。そうした動きに合わせての新駅開業となった。

 

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秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線(鷹巣駅〜角館駅94.2km)

↑車両形式は3種類。オレンジ色の車両はAN2000形で主にイベント列車として走る。後ろはAN-8800形で同線の主力車両として活躍

 

武家屋敷にマタギの里、秋田内陸の魅力が鉄道で満喫できる

盲腸線だった国鉄角館線と阿仁合線。秋田内陸縦貫鉄道は1989(平成元)年4月、鉄道の空白地域だった秋田内陸部に新線を敷き、角館線、阿仁合線と結び開業させた路線だ。会社の名前の通り、秋田県の内陸を南北に縦貫して走る。路線の愛称は2017年に「スマイルレール秋田内陸線」となった。

 

沿線には見どころが多い。秋田新幹線と接続する角館駅と言えば、近くの武家屋敷が有名、桧木内川(ひのきないがわ)の桜も良く知られる。路線の途中、北秋田市の阿仁一帯は「マタギの里」としても知られる。マタギとは狩猟を生業としてきた人たちのこと。夏期は農耕、冬期は山での猟を行った。路線にも阿仁マタギ駅という名称の駅もある。

 

もちろん四季を通じて、車窓から秋田内陸部の美しい景色が楽しめる。ちなみに起点は奥羽本線と接続する鷹巣駅(たかのすえき)。JRの駅は鷹ノ巣駅と「ノ」が入り、秋田内陸縦貫鉄道の駅は「ノ」が入らない。駅の表記は微妙に違い、改札口も異なるが、駅は同じ構内にある。

 

普通列車に混じって全線を1往復、急行列車が走っている。同列車を利用すれば約2時間で全線を完乗できる。

 

JR東日本 磐越西線(郡山駅〜新津駅175.6km)

↑郡山駅〜会津若松駅間を走る「フルーティアふくしま」。主に週末に1往復する観光列車で、福島県産のフルーツを使ったスイーツが味わえる

 

福島県と新潟県で山景色&川景色の両方が楽しめる

この路線の歴史は古い。1898(明治31)年に郡山駅〜中山宿駅の開業からその歴史が始まる。その後に東西、両側から延伸が進められ1914(大正3)年に全通した。全通当時の路線名は岩越線(がんえつせん)。明治期に福島県西部を岩代国(いわしろのくに)としたことから、岩代と越後を結ぶ路線ということでこの路線名となった。しかし岩代という国名は一般化しなかったこともあり、後に磐越西線と変更されている。

 

この路線は見どころがふんだんにある。郡山駅〜喜多方駅間は電化されていて、おもに電車が走る。途中、猪苗代駅付近から仰ぎ見るのは磐梯山、また南に猪苗代湖が広がる。会津盆地に入れば、会津藩の城下町・会津若松、蔵の町・喜多方といった観光都市が連なる。喜多方駅〜新津駅間は非電化路線で、気動車が走る。この区間、路線はほぼ阿賀野川(福島県内は阿賀川)に沿って敷かれる。飯豊連峰(いいでれんぽう)の山並みも美しい。

 

新津駅〜会津若松駅間は主に週末に「SLばんえつ物語」が走っている。磐越西線の名物列車で、同SL列車に乗車しようと訪れるファミリー客も多い。

 

会津鉄道 会津線(西若松駅〜会津高原尾瀬口駅57.4km)

↑阿賀川(大川)を渡る会津鉄道の「お座トロ展望列車」。トロッコ車両と展望車両が連結された名物列車だ(主に週末に運行)

 

阿賀川上流の眺望と古い宿場町、観光列車が名物に

福島県の会津地方を南北に走る会津鉄道会津線。只見線と接続する西若松駅から野岩鉄道(やがんてつどう)と接続する会津高原尾瀬口駅間を走る。路線は元国鉄会津線で、1987(昭和62)年に第三セクター経営の会津鉄道に引き継がれた。

 

路線の起点は西若松駅だが、列車は2つ先の会津若松駅からの出発となる。会津田島駅までは非電化で、同駅止まりの列車がある一方で、一部の列車はその先まで運行。東武日光駅まで会津鉄道の気動車を使った快速列車「AIZUマウントエクスプレス」が乗入れている。東武鉄道浅草駅から、特急「リバティ会津」が会津田島駅まで走っていることもあり、都心と直接、行き来できることも、同鉄道線の魅力となっている。

 

路線は阿賀川(大川)にほぼ沿い、渓流の眺望が楽しめる。さらに観光列車「お座トロ展望列車」も走り人気となっている。会津西街道の宿場「大内宿」や塔のへつり、芦ノ牧温泉と人気観光地も沿線に点在している。

 

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【関東地方のおすすめローカル線】

わたらせ渓谷鐵道 わたらせ渓谷線(桐生駅〜間藤駅44.1km)

↑大間々駅〜足尾駅間を走る「トロッコわたらせ渓谷号」。DE10形ディーゼル機関車がガラス付き普通車とトロッコ席の客車を牽いて走る

 

渡良瀬川の渓流を眺めて走るトロッコ列車が爽快

両毛線の桐生駅と間藤駅(まとうえき)間を走る、わたらせ渓谷鐵道。路線は群馬県と栃木県をまたいで走る。わたらせ渓谷線という路線名のとおり渡良瀬川の中・上流域に沿って走る。名物は2タイプのトロッコ列車。ディーゼル機関車が客車を牽く「トロッコわたらせ渓谷号」と、2両編成の気動車うち、1両がガラス窓が無いトロッコタイプの「トロッコわっしー号」が走り、共に人気となっている。

 

沿線は渡良瀬川以外にも見どころが多彩。今季はすでに季節が終了してしまったが、上神梅駅(かみかんばいえき)や神戸駅(ごうどえき)で桜、花桃が名物となっている。2駅のうち、上神梅駅は1912(大正元)年築、一部を昭和初期に増築した古い駅舎が残り、国の有形文化財に登録されている。水沼駅にはホーム横に温泉センターがあり、途中下車してひと風呂という楽しみ方ができる。全線完乗しても1時間30分、往復して一日楽しめるちょうど良い距離の路線だ。

 

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小湊鐵道 小湊鉄道線(五井駅〜上総中野駅39.1km)

↑小湊鐵道の車両は写真のキハ200形気動車のみ。写真は上総大久保駅。全線を通して走る列車が少ないのがちょっと残念だ

 

乗ればつい懐かしさがつのる房総の非電化路線

房総半島には小湊鐵道、いすみ鉄道、JR久留里線と非電化路線が複数ある。中でも小湊鐵道は、起点が内房線の五井駅で、3線の中で最も東京都心や千葉市内に近い。

 

列車は五井駅〜上総中野駅間を所要1時間10分ほどで走る。とはいうものの起点から終点まで走る列車は少ない。五井駅〜上総牛久駅間は同じ市原市内ということもあり、通勤・通学客が多く、走る列車の本数も増える。

 

上総牛久駅から先へ向かう列車の半分は終点の一駅手前の養老渓谷駅止まりとなる。一方、終点の上総中野駅へまで行く列車は1日に4往復と少ない。上総中野駅はいすみ鉄道と共用しているが、接続が良い列車が限られている。両鉄道を使って房総半島の縦断旅行を楽しむ時には、時刻をよく確認して行動することが欠かせない。

 

車両、駅舎、踏切設備など、古風な施設が多く残ることも小湊鐵道の魅力となっている。車両は観光列車「房総里山トロッコ」をのぞき、みなキハ200形。国鉄のキハ20系とほぼ同形で、製造は1961(昭和36)年〜1977(昭和52)年と古め。駅舎は里見駅が1925(大正14)年築で国の有形文化財に登録されているなど、趣ある駅舎が残り、映画やCMの撮影地として使われることが多い。

 

乗れば懐かしさがそこかしこに感じられる小湊鐵道。レトロさが格別の路線だ。

 

銚子電気鉄道 銚子電気鉄道線(銚子駅〜外川駅6.4km)

↑銚子名産「灯台キャベツ」畑の中を走る2000形。元京王線の2010系の改造車両で、伊予鉄道を経て入線した古参車両だ

 

鉄道好きがつい助けてあげたくなる健気なローカル線

銚子電気鉄道は千葉県の東端、銚子市内の銚子駅と外川駅(とかわえき)6.4kmを走る。路線がある銚子市の人口は2016年で6万4000人あまりと、そう大きな都市では無い。路線距離が短く、とても鉄道事業だけでは成り立たない。さらに2000年代に社長を務めた人物が業務上横領で逮捕されるなど、どたばたに巻き込まれた。

 

鉄道だけでは会社が成り立たないと、1995年から銚子産の醤油を使った「銚電ぬれ煎餅」を発売、今では名物「ぬれ煎餅」販売が本業を上回るとされる。

 

さらに最近は、おもしろいネーミングの商品を次々に発売している。例えば、「まずい棒」「鯖威張るカレー(サバイバルカレー)」「お先真っ暗セット」。究極は「売るものが無くなってきたので、音売ります」と、車内放送や、発車ベル、踏切音、ドア開閉音など音の販売を始めた。かなり自虐的な商品名が並ぶが、その努力を認めたくなる鉄道会社である。こんな姿勢がいじましく、多くの鉄道ファンが車庫のある本銚子駅(もとちょうしえき)や、物販店が併設された犬吠駅(いぬぼうえき)を訪れ、ついお土産を購入してしまうのである。

 

箱根登山鉄道 鉄道線(小田原駅〜強羅駅15.0km)

↑箱根登山鉄道といえば、初夏のあじさいが名物に。運転再開があじさいの季節に間に合わなそうだが、来年こそ訪問したいと考えている方も多いのでは

 

7月に復旧予定! 日本で唯一の本格登山鉄道

神奈川県の小田原駅と強羅駅を結ぶ箱根登山鉄道。路線の中でも箱根湯本駅〜強羅駅間は急勾配が続く。最急勾配はなんと80パーミル(1000m走る間に80m登る)で、これはアプト式などの補助システムを使わない通常の鉄道(粘着式鉄道と呼ばれる)では国内最急勾配となる。少しでも傾斜を緩めようと、3か所でスイッチバックを取り入れ、走る電車は行ったり来たりを繰り返す。

 

険しい傾斜地を走る造りだったことが災いし、昨年10月12日に箱根地区を襲った台風19号の豪雨被害を受け不通となってしまった。当初は復旧に1年かかると言われていたが、工事が順調に進み、すでに途中の大平台駅付近までは試運転も始められた。7月下旬には全線の運転再開を見込んでいる。

 

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【甲信越地方のおすすめローカル線】

JR東日本 小海線(小淵沢駅〜小諸駅78.9km)

↑小淵沢駅近くを走る小海線の列車からは、正面に八ケ岳(写真)、後ろに甲斐駒ケ岳など南アルプスの峰々を望むことができる

 

これからが最も楽しめる季節! 日本最高所を走る高原鉄道

起点となる小淵沢駅ですでに標高886.7mという高さで、駅舎からは八ケ岳、南アルプスの峰々が望める。発車すると徐々に標高を上げていき、高原列車の趣たっぷりだ。3つめの駅は清里駅。高原リゾートとして人気も高い。次の野辺山駅の間に県境があり、間もなく鉄道最高地点の標高1375m地点を越える。野辺山駅は駅として国内最高地点で1346mある。

 

野辺山駅がある南牧村は高原野菜の聖地でもある。夏期はハクサイ、キャベツ、レタス、ブロッコリーなど高原野菜の最盛期となる。そうした高原野菜が実る畑を車窓から眺めつつ、列車は高原を下っていき着いた駅が信濃川上駅。近くに千曲川が流れる。下れば信濃川となる日本一の長さを持つ河川のここが上流部分にあたる。路線はこの千曲川にほぼ沿って佐久平へ向かう。

 

小淵沢駅から終点の小諸駅まで通して乗ると2時間10分〜20分ほど。週末には観光列車の快速「HIGH RAIL1375」が運転される。普通列車はキハ110系に加えて、キハE200形が使われている。キハ200形は世界初の営業用ハイブリッド式気動車で、その技術は後に誕生したHB-E210系やHB-E300系などのハイブリッド式気動車にも生かされている。

 

長野電鉄 長野線(長野駅〜湯田中駅33.2km)

↑夜間瀬川(よませがわ)を渡る1000系「ゆけむり」。同橋は長野線の名物スポットで、背景に北志賀高原の山々を望む

 

写真映えする風景が沿線各所に点在する名物路線

長野鉄道はその名前のとおり、長野県下に路線を持つ鉄道会社。かつては屋代線、河東線(かとうせん)といった路線網を持っていたが、現在は、長野駅と湯田中駅を結ぶ長野線のみとなっている。

 

長野線は長野市近郊の通勤・通学路線であると共に、湯田中・渋温泉、また志賀高原へアクセスする観光路線としての一面を持つ。そのために普通列車以外に有料の特急列車を走らせている。特急列車の1000系「ゆけむり」は、元小田急電鉄の10000形「HiSE」。また2100系「スノーモンキー」は元JR東日本の253系「成田エクスプレス」だ。こうした特急車両が100円(運賃は別)で乗れてしまうのがうれしい。しかも指定席ではないので、1000系の展望席でも空いていれば座れることができる。

 

同線は車両だけでなく、沿線の風景が秀逸。信州の山景色に加えて、四季の花々と雪景色が楽しめ、それが絵になる。こんな長野電鉄でいま鉄道ファンの注目する話題といえば3000系(元東京メトロ日比谷線03系)がいつ走り出すかであろう。新型感染症の流行で、運行開始が延期されているが、長野電鉄流のお色直しがされて、近々、登場することになる。

 

JR東日本 飯山線(豊野駅〜越後川口駅96.7km)

↑信濃川を渡る飯山線の観光列車「おいこっと」。TOKYOの英語表記を反対にし(OYKOT)、ひらがな読みにしたという列車名だ

 

都会の対局「ふるさと(田舎)」の素朴な風景に包まれる

飯山線は長野県の豊野駅(とよのえき)と新潟県の越後川口駅の間を結ぶ。全線がほぼ千曲川、新潟県に入ると信濃川に沿って走る。路線の起点は豊野駅だが、列車はすべて長野駅発となっている。長野駅〜豊野駅間は現在、しなの鉄道が運営する区間となっているが、しなの鉄道の電車と併存する形で運行されているわけだ。

 

全線を通して走る列車は少なく、長野駅発→越後川口駅着が1日に4本。越後川口駅発→長野駅着は1本も運行されていない。途中、戸狩野沢温泉駅、もしくは十日町駅止まりで、同駅で乗継ぐ運行スタイルとなっている。

 

列車から全線に渡って楽しめるのは千曲川、新潟県内で名前を変える信濃川の流れ。また駅は素朴な造りの駅が多く、花木が楽しめる駅が多い。

 

おもに週末に走る観光列車「おいこっと」も名物に。東京の真逆、ふるさと(田舎)の雰囲気が楽しめるように、趣向を凝らした列車。車内で野沢名物の野沢菜漬や、長野・木島平産のお米で作ったおにぎりなどが楽しめる。

 

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