〜〜全国の私鉄・三セク路線を走る譲渡車両その2 電車〜〜
全国のJRの路線で長年にわたり活躍し続けてきた国鉄近郊形電車115系。59両が長野県内を走るしなの鉄道に譲渡されて、走り続けてきた。同社にも後継となる新車が導入されはじめ、115系も今後は徐々に引退していきそうだ。
しなの鉄道のように各地で利用されてきた譲渡車両。今回は、譲渡車両の中で、元JRの電車の“働きぶり”を見ていこう。導入している会社数は、それほど多くないものの、リメイクされて主力車両として活躍する電車が目立っている。
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【注目の譲渡車両①】三セク転換時に譲渡された電車が目立つ
JRの電車は、JRの在来線が第三セクター鉄道へ転換される時に譲渡されるケースが圧倒的に多い。路線を長年走った車両が譲渡される例が目立つ。新車両への切替えが不要で、新会社としてもスムーズに新体制へ移行できる利点がある。
まずは東北地方から、こうした三セク転換時に譲渡された電車の例を見ていこう。
◆JR東日本701系 → 青い森鉄道701系
東北本線の延伸に合わせて、誕生したのが青い森鉄道である。岩手県との県境の駅、目時駅(めときえき)〜青森駅間の列車運行を行う。
走るのは青い森701系電車と青い森703系電車だ。このうち青い森701系の2両編成×8本16両がJR東日本からの譲渡車両。JR東日本当時は701系交流電車だった。青い森701系となり、銀色の車体に水色のラッピングを施され走っている。ちなみに青い森701系の2両が自社発注の電車で、青い森701-101+青い森700-101と、共に101という数字が付く。
◆JR東日本701系 → IGRいわて銀河鉄道IGR7000系
東北新幹線の八戸延伸に合わせて生まれたのがIGRいわて銀河鉄道。東北本線の三セク転換に合わせて、2002(平成14)年12月1日から盛岡駅と青森県との県境、目時駅間の列車運行を担っている。
使われる車両はすべてIGR7000系で、2両編成×7本の計14両が走る。そのうち6両が新造車両で、残る8両がJR東日本からの譲渡車両だ。列車は県境の目時駅どまりではなく、盛岡駅〜八戸駅間は青い森鉄道の701系と相互乗り入れする形で走っている。
【注目の譲渡車両②】群馬を走った電車が故郷の上信電鉄で活躍
◆JR東日本107系 → 上信電鉄700形
107系はJRグループが発足して間もない1988年に、北関東を走る両毛線や日光線用に開発された。朝夕のラッシュに対応できるようにデッキがない3扉仕様で登場、2両×27編成計54両が製造された。登場してから30年ほどだったが、同じ年代に造られた211系の余剰車両が、北関東の路線に移籍したこともあり、2017年に引退している。
この107系の100番台(JR東日本の高崎支社管内用)のうち、比較的新しい2次形、計12両が上毛電鉄に譲渡された。
それまで上信電鉄では自社発注の車両と、主に旧西武鉄道の電車が走っていた。2013年には31年ぶりの新型7000形が導入されたが、同車両は2両のみの新造にとどまっている。一方、107系あらため700形は、徐々に投入が図られ、5編成計10両が走る。すでに上信電鉄の主力車両となっているといって良い。
107系は元々北関東の路線用に造られた車両。その車両が故郷ともいえるような高崎近郊を走り続けるというのも鉄道ファンとしてうれしいところ。さらに5編成とも異なったカラーに塗り替えられ、乗る・出会う楽しさが生み出されている。