【注目の譲渡車両③】大きく姿を変えて走る元京王5000系
◆富士急行(山梨県)1200形「富士登山電車」
富士急行の観光列車「富士登山電車」。元京王の5000系の改造電車で、まずは車体の塗装を富士急行開業当時の車体色「さび朱色」とした。内部を大きく改造し、クロスシート主体に。また窓側に展望席、そしてソファを設けるなど、観光列車としてイメージを一新している。外観は元5000系と変りは無いものの、中身はまったく違う造りとなっている。
◆一畑電車(島根県)5000系
大きく改造された元京王5000系がもう一系列ある。一畑電車では、元5000系のスタイルを踏襲した2100系とは別に、5000系という電車2両2編成が走る。京王重機整備で元京王5000系を観光用として改造した電車だ。
元5000系は正面の中央に貫通扉が付いているところが特徴だったが、この電車は貫通扉をなくし、前照灯の形と位置も大きく変えている。車内はクロスシートが主体の座席配置に変更し、乗降扉は2ドアとしている。元の電車が何なのか、分からないほどに様変わりしているのだ。
それぞれの鉄道会社に引き取られた元京王5000系は、車歴も古くなり、徐々に引退しつつある。しかし、こうして大改造された車両は、それぞれの鉄道会社で、この先しばらくの間は、主力電車として活躍し続けそうである。
【注目の譲渡車両④】第3のご奉公先という古参5000系が走る
◆岳南電車(静岡県)9000形
元京王5000系には譲渡先から、さらに譲渡先に渡る、すなわち第3の奉公先という電車も出てきている。それだけ長持ちし、扱いやすい電車なのだろう。
岳南電車の9000形も第3の奉公先となった電車だ。元は富士急行の1200形だった。富士急行は岳南電車にとって親会社で、これまで岳南電車を走ってきた7000形(後述)の不具合もあり、自社を走っていた1200形を京王重機で改造工事を施した上で、岳南電車に入線させた。新たに塗装し直された姿は、富士急行当時とは、また違った姿で新鮮な印象を受ける。
◆銚子電気鉄道(千葉県)3000形
千葉県を走る銚子電気鉄道にも元京王の5000系が走っている。この電車、元は愛媛県の伊予鉄道700系だった。どうして四国を経て、千葉県へとやってきたのだろうか。銚子電気鉄道は、架線の電圧が直流600Vだ。ちなみに京王電鉄をはじめ多くの路線が直流1500Vである。そのため改造しないと、京王電鉄の電車をそのまま銚子電気鉄道で走らせることができない。
銚子電気鉄道は、多くの方が知るように経営に余裕がない。そのため輸送費を使ってでも、同じ600V電化に対応するため、改造された伊予鉄道(750V電化区間もあり)の電車を希望したわけである。
見た目は、同じ元京王5000系でも、各社に合わせて改造が行われ、またさまざまな経緯を経て今を迎えているわけだ。
ちなみに銚子電気鉄道には、ほかに2編成、5000系とほぼ同じ顔を持つ電車が走っている。この電車のたどってきた経緯も興味深い。
【注目の譲渡車両⑤】ユニークな履歴を持つ銚子の2000形
◆銚子電気鉄道(千葉県)2000形
銚子電気鉄道には3000形以外に2000形という電車が2両×2編成走っている。この電車、外川駅側の正面は、元京王5000系に良く似た形をしている。よく見ると元5000系の正面が左右のスソが絞られる形状なのに対して、この2000形の正面はスソがそのまま下までストレートに延びている。さてこの電車の大元は何だったのだろう。
銚子へやってくる前は3000形と同じように伊予鉄道を走っていた。伊予鉄道での形式は800系で、大元をたどると京王電鉄の2010系だった。京王電鉄からは多くの譲渡車両が地方の各社に渡っているが、京王重機整備が手がけた譲渡車両の第1号電車でもあった。台車は軌間幅に合わせて、井の頭線用のものに変更するなど、大改造を施されて四国へ渡っている。
さらに伊予鉄道へ渡ったのちにも、京王重機の出張工事により、現在の貫通扉付の運転台を取り付ける改造工事が行われた。譲渡後も、至れり尽くせりのサービスが行われていたわけである。
こうして改造された伊予鉄道800系だったが、元京王3000系の譲渡車両が新たに伊予鉄道に導入されたこともあり、同じ600V電化という縁もあり、銚子へやってきた。
ということで、形は5000系と良く似ているが、元京王の電車だったものの、元5000系とは別の車両だったわけである。譲渡車両は、なかなか奥が深い経緯をもった車両が隠されていて興味深い。