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2021/2/27 6:30

新時代の電気シティコミューター、Honda eの実力とは?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、昨年ホンダが打ち出した新時代の電気シティコミューター、Honda eを取り上げる。絶賛か、はたまた酷評か?

※こちらは「GetNavi」 2021年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今回のGODカー】Honda/Honda e

SPEC【Advance】●全長×全幅×全高:3895×1750×1510mm ●車両重量:1540kg ●パワーユニット:電気モーター ●最高出力:154PS(113kW)/3497〜10000rpm ●最大トルク:315Nm(32.1kg-m)/0〜2000rpm ●一充電走行距離(WLTCモード):259km

451万円〜495万円

 

価格を高くして、販売台数を絞る理由とは

永福「安ドよ。このクルマ、どうだ」

 

安ド「欲しいと思いました!」

 

永福「そうか……」

 

安ド「過去1年間に乗ったニューモデルのなかで、一番欲しいと思いました。同じEVでも、テスラなんかよりずっとおしゃれじゃないでしょうか!」

 

永福「ワシもそう思う」

 

安ド「殿もですか!」

 

永福「このクルマは貴族だ」

 

安ド「貴族ですか!」

 

永福「シンプルでとても気品がある。本物の貴族はシンプルな服を着ていると聞くが、まさにそれだ」

 

安ド「本物の貴族に会ったことはありませんが、そうなんですね!」

 

永福「わしも会ったことはない」

 

安ド「ガクッ! でもインテリアは、シンプルというより超ハイテクなイメージですね」

 

永福「ドアミラーはデジタル表示だし、インパネの右から左まですべて液晶パネル。助手席前のパネルは何を映すのかと思いきや、ステキな庭園風景の壁紙などで、それはそれで癒されるものだな」

 

安ド「走りも良かったです! 小回りも利きますし」

 

永福「しかし安ドよ。このクルマを買ってはならない」

 

安ド「僕は買いたくても買えませんが、なぜですか?」

 

永福「ホンダさんが、買わないでくれと言っているからだ」

 

安ド「そんなことを言ってるんですか!?」

 

永福「内心はそう思っているに違いない」

 

安ド「確かに価格は高いとは思いますけど」

 

永福「上級グレードのアドバンスだと約500万円。日産リーフと比べて、ぶっちゃけ100万円くらい高い。しかも日本では年間たったの1000台しか売らない。これは『買うな』ということだ」

 

安ド「いったいナゼでしょう!?」

 

永福「近い将来バッテリー革命が起きる。現在のリチウムイオン電池は、全固体電池(※)に取って代わられる。となると性能は大幅に向上し、逆に価格は下がっていく」

※:電流を発生させる電解質を従来の液体から固体にした電池で、発火や液漏れのリスクがなくなり安全性が向上する。過酷な環境で使われることが多いEVの動力として期待されている

 

安ド「Honda eのバッテリーもそれになるんですか?」

 

永福「なるだろう。ひょっとして、最初からそれを前提で設計しているかもしれない。つまり現在のHonda eは仮の姿。航続距離の短さもそれが原因だ」

 

安ド「そうなんですか!」

 

永福「今回はとりあえず、『電動化にも取り組んでいますよ』という企業姿勢を見せることが目的で、本音ではあまり売りたくないのだ。なぜなら、今のHonda eを買うと損するからだ!」

 

安ド「損するんですか!」

 

永福「数年後には、大幅に性能が向上し、価格も安くなった本物のHonda eが登場する。だからいま買うと損をする。ホンダとしてはお客様に損をさせたくない。だからこんなに価格を高くして、販売台数も絞っているのだ!」

 

安ド「さすが殿、慧眼です!」

 

永福「すべて憶測だ」

 

安ド「ガクッ!」

 

【GOD PARTS 1】インパネ

ディスプレイが並んだ未来感溢れる室内風景

インパネの端から端まで複数の大型ディスプレイが並べられています。もうこれだけで圧倒的な未来感が感じられますが、どのディスプレイも高精細で非常に見やすいことにも驚かされます。

 

【GOD PARTS 2】ファブリックシート

特別な素材感を持つソファのようなシート

「メランジ調」と呼ばれる高級感と温かみの感じられる素材感が再現されている特別なシートは、まるで柔らかなソファのようなイメージです。ただし長時間乗ってみると、乗り心地が特別良いというわけではないようですが。

 

【GOD PARTS 3】センターコンソール

温かみのある木目で未来すぎない空間に

インパネやこのセンターコンソールの表面にはウッド調の素材を用いて、未来的で冷たいイメージになりがちな車内に温かみをもたらしてくれています。前方の革ベルトを引くとドリンクホルダーが出てきます。

 

【GOD PARTS 4】前後ドアノブ

まるで何もないように面へ溶け込んだ形状

フロントのドアノブはポップアップして使う仕様になっており、リアのドアノブもリアウィンドウの後端に溶け込んでいます。どちらもボディ全体のつるんとしたスタイリングと一体化しているのです。

 

【GOD PARTS 5】ヘッドライト&リアライト

同形状にまとめられた前後デザイン

フロント

リア

フロントとリアのライトまわりがそっくりです。前後で対になっているデザインというのは珍しくておしゃれですね。価格はあまりかわいくないですが、スタイリングは「おしゃれ」や「かわいい」だらけです。

 

【GOD PARTS 6】スマホ連携

当然のように採用されたイマドキカーのトレンド

最新のEVらしくスマホ連携機能が搭載されていて、ドアロックやエアコン、カーナビなどを車外からでもスマホで操作できます。愛車の位置も表示できるので、広い駐車場などで便利です。

 

【GOD PARTS 7】バッテリー

低い重心を実現してスポーティな走りを実現

車体下部にはリチウムイオンバッテリーが搭載されています。おかげで重心が低くなり、走行フィールも軽快です。後輪駆動なことも含めて、走りの楽しさを忘れないホンダらしいEVと言えます。

 

【GOD PARTS 8】パーソナルアシスタント

話しかけると浮かび上がる謎キャラクター

メルセデス・ベンツの「ハイ、メルセデス!」でかなり一般的になった音声認識システムですが、Honda eでは「オーケー、ホンダ!」と声をかけます。すると、謎のキャラクター(写真)がディスプレイに登場して応対してくれます。

 

【GOD PARTS 9】充電ポート

給油とは違った特別な感覚を演出

充電ポートはボンネットフードの前方中央に設置されています。フタの表面はガラス製になっていて、給電中は内部のLEDが発光するなど、ガソリン車への給油とはひと味違った特別感や未来感が演出されています。

 

【これぞ感動の細部だ!】サイドカメラミラー

見にくそうだが慣れれば実用性はかなり高い

量産車としては初めてカメラミラーシステムが標準搭載されています。車内には6インチのモニターが設置されていますが、画角が広く、画像もかなり鮮明です。バック時の操作感など多少の慣れは必要ですが、従来のアナログサイドミラーと比べても実用性は劣りません。むしろ夜などは風景が明るく表示されて視認性が高いので、使い勝手では勝っているかもしれません。