乗り物
鉄道
2021/4/1 18:30

歴代ロマンスカーが揃う小田急新ミュージアムの名車たちに迫る!!【前編】

【展示車両その②】ロマンスカー初!最前部に展望席を設けた車両

◆小田急電鉄NSE(3100形)◆

↑丸みを帯びたデザインのNSE(3100形)。小田急初の先頭部分に展望席を設けたロマンスカーとして大人気となった

 

ロマンスカーの2世代目として生まれたのがNSE(3100形)だ。NSEとは「New Super Express」という意味を持つ。SE車が非常な人気となり、週末には乗り切れない状態が続いた。そのために、新たに造られたロマンスカーだった。

 

外観から見てもわかるように、この車両から先頭部分に展望席、2階に運転席を設けている。SE車が、軽量化に主眼をおかれて開発されたのに対し、NSE車は、デラックス、快適、安全、高速走行といった要素を重視して開発された。1963(昭和38)年に登場すると、たちまち人気列車となった。展望席を設けた“ロマンスカーらしさ”は、この車両によって生み出された。また、現在では多くの鉄道会社に取り入れられている着席通勤特急の先駆けとして運用されたのも、この車両からだった。

 

その後の展望席を設けたロマンスカーの伝統の礎になった車両であり、現在のVSE(50000形)やGSE(70000形)にもその伝統が活かされている。

 

ちなみに先頭車に展望席を設け、運転台を2階に設置した車両は、名古屋鉄道(以下「名鉄」)の7000系パノラマカーが国内初だった。現在、名鉄ではこうした形状の車両は用意しておらず、先頭車に展望席があり、運転席は2階という形状は、いまや小田急ロマンスカーの定番スタイルともなっている。

 

◇連結器部分の渡り板の違いや、車掌室の造りが興味深い

↑NSE車はより照明の明るさが増している。保存されるSE車は更新した車内のため、違いは明確でないが、SE車誕生時はより暗めだったとされる

 

↑NSE車の連結器部分。SE車と異なり台形の渡り板が使われる。同部分の左には車掌室(左囲み)がある。半透明の扉が時代を感じさせる

 

ロマンスカーミュージアムに保存されるNSE(3100形)は3両。前のヘッドマークは「えのしま」、後ろには「さようなら3100形(NSE)」という、さよなら運転が行われた時のヘッドマークが装着されている。同車両も、SE車と同じく、一部通路に入ることができる。入ると、目の前に車掌室があり、扉は半透明で中がよく見える。

 

今回、展示される車両のほとんどが、現役時の装備そのままで保存されていることが興味深い。車掌室内の機器類も残されていて、思わず見入ってしまう。SE車もNSE車も連接車ながら、SE車は連結器部分に丸い渡り板が使われているのに対して、NSE車は台形の渡り板が使われている。このあたり、使いやすさを考慮した結果の、進化した姿なのだろう。

 

【展示車両その③】ごく最近まで走ったロマンスカー3世代目

◆小田急電鉄LSE(7000形)◆

↑1両のみ保存されるLSE(7000形)。横に並ぶNSE(3100形)に比べるとデザインがより滑らかになったことがわかる

 

ロマンスカーギャラリーではSE(3000形)、NSE(3100形)と並んで展示されるのがLSE(7000形)だ。LSEは「Luxury Super Express」の略。居住性の良さが追求され、デザインも、その愛称のように、より洗練されたイメージとなった。誕生は1980(昭和55)年のこと、SE(3000形)の置き換え用として投入された。ロマンスカーとしては3世代目にあたる。先輩にあたるSE車や、NSE車に比べて勾配の登坂能力が向上し、箱根登山鉄道の急勾配もラクに走れるように改善されている。

 

このLSEは最近まで走っていたこともあり、乗った、また見たという方が多いのではないだろうか。じつはLSE車のあとに、2形式のロマンスカーが生まれている。この2形式に比べて“長生き”したロマンスカーであり、引退したのはごく最近の2018年7月のことだった。

 

◇この車両のみは車内は非公開に

LSE車の保存は先頭1両のみ。展示される5車種のうち、LSE車のみ車両内が非公開とされた。ちょっと残念なところだ。ちなみに同車両は11両編成。計44両が長年にわたり走り続けた、ロマンスカーの中でもご長寿車両である。

 

  1. 1
  2. 2
  3. 3