数多くのカーAV機器を世に送り出してきたパイオニアから、最新スペックを盛り込んだドラレコとして、カロッツェリア「VREC-DH300D」が登場しました。本記事では、同機を実際に使ったわかったレビューをお届けします。
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【本体概要】デジカメを連想させ、車内に馴染むデザイン
VREC-DH300Dは、フロントカメラとリアカメラがセットになった、いわゆる“前後2カメラ”ドライブレコーダーユニットです。最大のポイントは高画素センサーによる高解像度撮影を実現していること。フロントには約370万画素、リアには約200万画素という高解像度センサーを採用し、加えてフロントにF値1.4、リアにF値1.8という明るいレンズを組み合わせました。しかも、センサーは暗所撮影に優れるソニー製CMOS「STARVIS」を採用しています。これによって、昼夜を問わず鮮明な映像の記録を可能にしているのです。
優れたデザイン性も本機の大きな魅力です。本体をマットなブラック塗装とし、随所にピアノブラックを組み合わせることで車内にもしっかり馴染むデザインとしています。また、前後2カメラのドラレコとなると、接続ケーブルが増えるために本体周辺がどうしても乱雑になりがちですが、本機は電源ケーブルがマウント側にあるため、本体にはリアカメラからのケーブルが1本つながるだけ。これによりスッキリとした形で取り付けられるのです。
本体の左右幅は90.5mmとコンパクト。それにもかかわらず画面サイズは3インチと十分な大きさを確保しており、撮影した映像のチェックも容易にできます。操作は右サイドにある4つの物理スイッチを使いますが、この操作感がとてもいい。押した感触もしっかりとしていて確実性がとても高いのです。最初のメニュー項目は一画面内ですべてが表示され、ボタンを押すとそこから次のステップへ入っていくわかりやすい設計。
【画質】フルHDを超える高解像度で記録。フロントとリアの映像は同じフォルダに保存
映像記録モードはフロントで2560×1440P/1920×1080Pの2つから選べますが、デフォルトでは前者が設定されています。少しでも高解像度で記録したい人はこのフルHDを超える設定のままでの記録をおすすめします。フレームレートは27.0fpsとなっており、これはLED信号機の表示と同期して無信号状態で記録されないよう配慮した設定です。また、ドラレコに衝撃が伝わると、その映像が自動的に上書きされない「イベント録画フォルダ」に保存されますが、その衝撃感知の設定はOFFを含め8段階で調整できます。
また、「ここぞ!」というシーンに遭遇した時は、本体右上にあるボタンを押すことで手動イベント録画ファイルとして上書きされないフォルダに保存されます。旅の思い出として残しておきたい時もこの機能を活用するといいでしょう。ボタンの位置は、カメラのシャッターに相当する位置にあるので手探りで操作できます。ただ、静止画での記録モードは搭載されていません。それでも、PC上での静止画保存機能を使ってキャプチャーすれば簡単に静止画として残せます。操作としてはとても簡単なのでぜひ覚えておくといいでしょう。
撮影した映像は「Event」と「Video」の2つのフォルダに分けて保存されます。前者は衝撃を受けた時や、任意に手動イベント記録とした映像が保存されるフォルダで、後者は撮影した映像ファイルを順に保存するフォルダ。それぞれフロント/リアの映像が交互に記録されていきます。なお、Eventフォルダは記録するマイクロSDカードの容量に応じて、保存できるファイル数が限られます。大事なデータはその都度、PCなどに移してカードを初期化しておくことをおすすめします。
GPS機能を備えたことも見逃せません。この機能はカーナビなどで位置情報を正確に反映するために使われるもので、ドラレコにこの機能を備えることで記録した映像の位置情報が反映できるようになります。残念ながらこれを反映させる専用アプリは用意されていませんが、少なくともファイルには位置情報が含まれているわけで、必要であればそれを活用することは可能です。さらにGPSの正確な時刻情報は常に反映されており、いちいち時刻合わせをする必要がないのもメリットです。これらは保存したドラレコ映像の証拠価値を高めるのに役立つものと言えるでしょう。
【実際の画質レビュー】キリッとした美しい映像。高い解像度は周辺の車両ナンバーも鮮明に記録
では、本機で記録された映像をチェックしてみましょう。その映像は一目見て「きれい!」であることを実感します。映し出される風景や周囲の様子が極めて鮮明で、全体としてキリッとした印象。少し離れた位置を走行するクルマや対向車のナンバー4桁もはっきりと認識できました。もちろん、周囲が捉えられるようにフロントウィンドウのほぼすべてを映し出すような広い画角も持ち合わせています。これなら横から飛び込んできた場合の様子もしっかり把握できそうです。
また、トンネルを出る間際の映像も白飛びが少なく、逆光気味の時でも被写体を黒くつぶすようなことはあまりありません。本機にはドラレコで搭載が一般的なHDR機能が搭載されていないのですが、これだけの実力があれば特にこうした機能はなくても十分と感じたほどです。リアカメラは若干解像度が下がりますが、それでも鮮明さが大きく落ちることはありません。後続車は車内の様子までも鮮明に映し出しており、仮に後方から煽ってくるような状況になれば、ドライバーの表情までもはっきりと認識できると思います。
夜間になっても本機の鮮明さは変わることはありません。ライトで照らした部分は若干白飛びする傾向が見られますが、その周辺部の状況もかなり鮮明に映し出すので状況把握には十分な能力を発揮します。この明るさを確保しているにも関わらずノイズも少ないので、映像が見やすいのもポイントです。ただ、シャッター速度が遅くなってしまうせいか、すれ違うクルマのナンバーは、静止画でキャプチャーしてもブレていて読み取ることはちょっと難しいようですね。ただ、リアカメラで捉えた後方から来る車両のナンバーは、ヘッドライトが点灯した状態でもしっかりと読み取れます。夜間のあおり運転対策には十分役立つでしょう。
【注目機能】SDカードのフォーマット時期をお知らせ。別売の駐車監視ユニットも便利
それと本機は別売の駐車監視ユニット「RD-DR001」(2021年5月発売予定)を組み合わせることで、クルマを離れてからの接触事故や車上荒らしも鮮明に記録してくれます。記録時間やバッテリー状態を踏まえながら連続録画できる(最大12時間)ので、状況に応じた設定を可能としていることも見逃せません。ソニー製CMOS「STARVIS」が持つ高い夜間監視能力を組み合わせることで、駐車中の異常発生もしっかり捕捉してくれることでしょう。
ドラレコで撮影したデータはマイクロSDカードに保存されます。VREC-DH300Dには容量が16GBが同梱されますが、このカードは常に記録と消去を繰り返す過酷な状況にさらされます。そのため、使っているうちに記録エラーを起こしやすいのもまた事実なのです。そこで重要となるのがカードのフォーマットです。本機ではこれを適切なタイミングで行うことを事前に教えてくれます。これにより、カードへの記録エラー発生を最小限に抑えてくれるのです。
ただ、それでもメモリーカードには寿命は訪れます。難しいのはその寿命を捉えることです。そこでパイオニアでは一般的なマイクロSDカードより耐久性が高く、カードの寿命からくる交換時期を知らせてくれる「SDカード寿命警告機能」を搭載したSDメモリーカードも別売で用意しています。少し高めではありますが、より確実な記録を行うためにも選んでおく価値は十分あると思います。予算に応じて選ぶといいでしょう。
正直言えば、本機は機能こそ特に飛び道具的なものは備えていません。その意味では地味な存在とも言えます。ただ、パイオニアはこの点について、ドラレコとして必要な機能を徹底的に調査し、ユーザーが満足してもらえるスペックにまで追い込んだと言います。今回、使い込んでみてドラレコとしての質実剛健な造り込みにこそ本機の良心を実感しました。価格も実売で2万6000円前後と前後2カメラ型としては十分リーズナブル。高いデザイン性の中に秘められたカロッツェリアの新しいドライブレコーダーユニットVREC-DH300Dはこの夏商戦で見逃せない存在となることでしょう。