【注目の車両&路線③】狭山線を走る〝赤電〟塗装の新101系
西武球場前駅で西武山口線と接続するのが西武狭山線だ。西武狭山線は池袋線の西所沢駅〜西武球場前駅間の4.2kmを走る支線である。
同路線を走るのが鋼製電車・新101系だ。毎日、すべての時間帯を走るわけではない。西武ドーム(メットライフドーム)でイベント等がない平日に運用される。いまや多摩湖線からも撤退し、本線系列での運行は狭山線のみとなっていて、いわば貴重な車両と出会える線区となっているわけだ。新101系とはどのような電車なのか確認しておこう。
○西武鉄道 新101系
新101系を見る前に、まずは101系という電車を見ておかなければならない。101系は1969(昭和44)年から1976(昭和51)年に所沢車両工場で製造された。
101系が登場したその年に西武秩父線が開業している。西武秩父線は吾野駅と西武秩父駅を結ぶ路線で、長いトンネルとともに急な勾配区間があった。その勾配路線を走行するために、高出力またブレーキ性能を高めた電車が必要となった。それまでの西武鉄道は、高度成長期の乗客急増時代に合わせた電車が多く、デザインは新しくとも、古い電装品、台車などを流用した車両も目立った。非力だったために、西武秩父線の運行には向かなかったのだ。
そして生まれた101系は当時、西武初の高性能車でもあったわけである。
鉄道に目覚めた年代だった筆者も、そんな新車を小手指にできた車両基地(現小手指車両基地)に撮りに行ったことがある。上の写真はそんな時のもの。当時はおおらかな時代で、ノートに住所と名前を記入すれば、基地内に入ることができ、写真を撮らせてもらえたのだった。もちろん安全面への配慮はすべて自己責任であったのだが。
この101系は現在、同社から消滅し、一部が三岐鉄道(三重県)などの譲渡先で走り続けている。
その後に誕生したのが新101系であった。新101系は1979(昭和54)年から製造された101系のリニューアルタイプで、2両編成・4両編成。さらに8両編成化した301系という車両も登場している。101系の外観との違いは、旧101系が低運転台だったのに対して、新101系は高運転台であること。また正面の運転席のガラス窓の支柱が太くなったことが、大きく変わったポイントだった。この当時から所沢車両工場だけでなく、東急車輌製造への車両造りの委託も始まっている。一時代前には東急グループとは、箱根などで激しいライバル争いをしていたこともあり、当時のこの変貌ぶりは考えられないことでもあったのだ。
こうして生まれた新101系だが、すでに登場してから40年近く走る古参電車となった。同じ西武グループの近江鉄道(滋賀県)や伊豆箱根鉄道駿豆線(静岡県)、また流鉄(千葉県)、三岐鉄道など中小私鉄へ譲渡される車両も多い。鋼製車両で頑丈に造ってきたこともあるのだろう。使いやすさもあったのか、多数の会社で使われている。
西武鉄道でも、平日やイベントがない日には西武狭山線を走っている。2021(令和3)年10月中に狭山線を走る新101系を確認したが、赤電塗装と呼ばれる1960年・70年代に西武路線を走ったカラーの1247編成と、1259編成。さらに黄色一色という263編成という新101系も走っている日があった。
ちなみに、263編成は新101系の中でも特にユニークな編成なので見ておこう。新101系の一般車は中間車1両に2つのパンタグラフを搭載している。ところが、263編成のみもう1両に2つのパンタグラフを付けている。先頭車に2つのパンタグラフが付く何ともものものしい姿なのである。
現在、西武鉄道では、車両牽引用の電気機関車を所有していない。路線内で新造車の回送や、また路線内の車両回送用の牽引電車が必要となる。特に路線網から1本のみ離れた西武多摩川線といういわば〝独立路線〟があるのだが、定期検査時などは、JR武蔵野線との接続線から、武蔵丘車両検修場まで回送が必要となった。そうした新造電車や回送電車を牽引するために改造されたのが新101系の263編成なのである。この263編成も〝牽引業務〟がない時には、狭山線で通常の電車と同じように乗客を運ぶというわけである。このあたりのやりくりが、鉄道ファンとしてはなかなか興味深いところだ。
さて、狭山線の平日のみに走る新101系だが、毎日、確実に出会える線区がある。それが西武多摩川線である。次は多摩川線の今を見ていくことにしよう。
【注目の車両&路線④】新101系の今や聖地となった多摩川線
西武多摩川線はJR中央線と接続する武蔵境駅と是政駅を結ぶ8.0kmの路線である。路線の歴史は古く1917(大正6)年10月22日に境駅(現武蔵境駅)〜北多磨駅(現白糸台駅)間が開業したことに始まる。当時、開業させたのは多摩鉄道という会社で、多摩川の砂利採集が目的で路線が設けられた。開業してからわずか10年で旧西武鉄道が合併し、太平洋戦争中に西武鉄道の一つの路線に組み込まれている。
旧西武鉄道時代から、本体の路線網とは結ばれていない〝独立路線〟となっていた。現在もそれは変わらずで、日常の検査は路線内の白糸台駅に隣接した車両基地で行われており、定期検査などが行われる場合には、武蔵境駅〜武蔵野線・新秋津駅間は、JR貨物の機関車が牽引して運んでいる。JRの路線を西武電車が走る珍しいシーンを見ることができるわけだ。
そんな西武多摩川線で使われる電車は現在も新101系のみ。鋼製電車の最後の〝聖地〟となっている。
西武多摩川線を走る新101系は4編成で、3種類の車体カラーの新101系に出会うことができる。
そのカラーとは、245編成と、249編成が「ツートンカラー」と呼ばれる塗り分け。黄色と濃いベージュの2色で塗り分けられていて、これが新101系登場時の色そのものだ。新101系なじみの車体カラーというわけである。
さらに、241編成は伊豆箱根鉄道駿豆線を走る車両と同じ白地に青い帯が入る。また251編成は、近江鉄道の開業120周年を記念して2018(平成30)年に塗装変更された。近江鉄道の電車と同じように水色に白帯といった姿に塗り分けられる。
伊豆箱根鉄道、近江鉄道は西武グループの一員であり、こうしたグループ会社の〝コラボ車両〟が、この西武多摩川線に集ったわけである。
伊豆箱根鉄道駿豆線と近江鉄道には元西武の新101系が走っている。今回の車体カラーのコラボ企画は、譲られた両社の新101系の車体カラーと、西武鉄道の新101系の車体カラーを同じにしたもの。生まれた会社に残る新101系と、遠く離れて走り続ける新101系が同色というのもなかなか楽しい企画である。