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2016/9/14 17:00

最新EVなのに超アナログ! 「トミーカイラZZ」はEVプラットフォームビジネスの試金石になるか?

「ピュイーン!」という音とともにシートに押しつけられる強烈な加速。こんな加速感は今まで味わったことがない。そんな見事な走りを見せたのが、京都の自動車ベンチャー企業GLMが手掛ける電気自動車(EV)「トミーカイラZZ」だ。9月11日まで東京・青山のサンワカンパニー東京ショールームで試乗会を開催しているとの案内をいただき、早速参加してきた。

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スポーツEVに生まれ変わった「トミーカイラZZ」

そもそもトミーカイラZZの初代は1995年に発表され、206台を販売して終了している。当時のZZの後継車両(ZZ2)を手がけたデザイナーにより、EVスポーツとしてシャーシからパワートレインまですべてを新たにして登場したのがこのモデルだ。販売開始は2014年だが、GLMによれば本格的な生産が始まったのは昨年秋で、すでにユーザーへの納車も進んでいるという。

 

そんななかで開催した試乗会の目的は、EVスポーツとして登場したトミーカイラZZはどんなものなのかを一般ユーザーにも広く知ってもらうことなのだという。特に見逃せないのが、今回試乗させていただいた車両はなんと“わ”ナンバー車であること。そう、タイムズレンタカーがタイムシェアとして貸し出しているレンタカーなのだ。有楽町で貸し出しを行っているそうで、料金は3500円/時間。数時間程度借りて都内をドライブしてみるのも楽しそうだ。

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↑リアにはタイムズレンタカーのマークが貼られている

 

さて、トミーカイラZZの特徴を一言でいうと、きわめて趣味性の高い究極のEVスポーツカーであるということだ。屋根もなければ(オプションでつけることは可能)、エアコンもなし。安全装備はシートベルトぐらいで、エアバッグも用意されておらず、航続距離はカタログスペックで120kmだ。それで販売価格は800万円ほど。完全なEVであるため、充電設備がないと所有することは難しい。そういった意味で、設備の整ったガレージのある人でないと所有は不可能だ。当然自分でも持つことはあり得ないと即座に思ったわけだが、そこは一旦ステアリングを握れば「やっぱ欲しいかも」と思ってしまうから不思議だ。

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↑購入者はオプションで屋根を付けることもできる(レンタカーは白のみ、屋根なし)

 

起動するとEVだけに少し「キューン」というインバーターらしき動作音が聞こえてくる。最初はゆっくりとアクセルを踏みながら道路へと向かう。道路へ出てまずは軽く加速。これがとてもスムーズであることがすぐにわかる。そして直線路で法定速度を気にしつつアクセルをちょっと踏み込む、と冒頭に述べた「ピュイーン!」との音と共に身体がシートに押しつけられ、頭はのけ反るような鋭さ。どこから踏み込んでもパワーが炸裂し、これは下からジワッとパワーが出てくるエンジンではまったく味わえない感覚だ。

 

トミーカイラZZの公開されているスペックによれば、305PS/415Nmもの驚異的なパワーを発揮するモーターをミッドに搭載し、アルミ製のシャシーとFRPのボディは重量が850㎏しかない。これがパワーウェイトレシオ約2.7㎏/PSという圧倒的な数値を生み出し、0-100km/h加速は3.9秒で走りきるのだ。まさにレーシングカー並みのスペックといっても差し支えないだろう。

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↑アルミ製のシャーシ

 

レーシングカー並みの走りを持つのであれば、乗り心地への期待は持てないと思いきや、これもそうではない。サスペンションが実にしなやかで、都内の荒れた道路を走っても、この手のクルマにありがちなガチガチな感じはまったくない。試乗当日は、真上からジリジリと太陽が容赦なく照りつけていたが、直接風を切っていく感覚がむしろ走る高揚感へとつないでいく。あまりの快適さにそんな暑さも忘れてつい乗り続けていたくなってしまったほどである。

 

一方で、運転操作はクルマ本来の“素”の状態であるのもこのクルマらしい部分だ。まったくアシストがないため、どの操作でもすべてに重さがダイレクトに感じる。それでもステアリングは走り出せば負担はあまり感じなくなるが、ブレーキ系は回生もないためにそれなりの踏力が必要。つまり、EVという極めて現代的なパワーソースを持ちながら、コントロールはクルマ本来のノーアシストの世界が楽しめる。そのチグハグな感覚がこのクルマならではの持ち味でもあるのだ。

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↑フロントパネルはシンプルな表示

 

EVのプラットフォームを販売

ところで、GLMのビジネスモデルは、単に完成車の販売だけでなくEVとしてのプラットフォームの販売にあるという。今やEVは、日本を含めてグローバルでニーズが高まっている状況にあり、EVスポーツという分野で高い技術力を積み重ね、そこで培った技術をモジュールとして売り込んでいくのだ。EVは部品点数が少ないことから一見すると参入しやすいように見えるが、それをいざゼロから立ち上げようとすればそう簡単にはいかない。つまり、同社がこの技術を提供することで、自動車の経験値が低いメーカーでもEV市場へ新規参入しやすくなるというわけだ。

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↑東京・赤羽橋にあるGLMのショールーム

 

ではGLMとしてはトミーカイラZZ以外にラインナップを増やす考えはあるのか。これについてGLMは、「高度な技術が必要になるスポーツカーを作り上げることで技術的価値が生まれてくる。それがEVをプラットフォームとしてモジュール販売できる素地となるわけで、自社でラインナップを増やすことに意味はあまり感じていない」という。つまり、EVスポーツカーで突き詰められた技術が、たとえば身近な超小型モビリティを目指すメーカーの誕生につながっていくかもしれない、というわけだ。すでに同社の事業は海外でも注目され始めているようで、より幅広い展開も予定していく段階に来ている模様。世界のEVの中枢にGLMの技術が反映されるようになるのもそう遠いことではなさそうだ。

 

次回はぜひ、箱根の峠道をこのトミーカイラZZで走ってみたいと思っている。