〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画〜〜
毎年3月から5月にかけて発表される鉄道各社の「事業計画」「設備投資計画」。鉄道会社はコロナ禍により乗客が減るかつてない状況に直面し、利益をどのようにあげていくか対応に追われている。今回はJR各社から発表された事業計画の中で、気になる新車両の導入計画および設備投資を中心に、注目ポイントをピックアップした。
【関連記事】
鉄道各社が発表した2021年度「新車両投入」計画を改めてまとめてみた
【JR北海道①】H100形、キハ261系の増備が進む
まずは、JR北海道が4月1日に発表した「令和4年度事業計画」を見ていこう。「輸送施設の安全性向上」の中で〝車両故障対策〟として、新車の導入計画に関して触れ、具体的には「H100形電気式気動車の新製によるキハ40形気動車の更新、261系特急気動車の新製投入」をあげている。
H100形はJR北海道が初めて導入したディーゼル・エレクトリック方式(電気式)の気動車で、基本設計はJR東日本のGV-E400系気動車と共通化された。2020(令和2)年3月に函館本線などの線区で運用開始以来、増備され運用範囲を広げつつある。
この新型の増備により入れ替わるのが国鉄形のキハ40形。キハ40形は国鉄時代に生まれた気動車だが、最終盤に造られた車両ですら1982(昭和57)年で、製造されてからすでに40年の歳月が経つ。部品の調達も難しくなりつつあり、JR北海道では故障への対応にも頭を痛めていた。2022(令和4)年4月1日の段階で北海道内にはキハ40形76両が在籍しているが、H100形(すでに各地に75両を配置)の一層の増備で、キハ40系の削減の波が強まりそうだ。
一方、事業計画に記された「261系」とは「キハ261系」のこと。キハ261系は特急形気動車で、1998(平成10)年から札幌駅〜稚内駅間を走る特急「スーパー宗谷」(現在は「宗谷」に特急名変更)に導入された。その後に、改良タイプが生み出され、徐々に運用範囲が広げられていった。
JR北海道では併用するようにキハ281系、キハ283系といった振子式の特急形気動車が使われてきたが、こちらは製造費用が割高で、走行中に火災が起きるなどのトラブルもあり、またメンテナンスに手間がかかるなどの問題を抱えていた。両形式を進化させたキハ285系も試作されたが、正式な導入を断念した経緯がある。対してキハ261系は新造費用も割安で、性能も安定しており、今やJR北海道にとって欠くことのできない特急形気動車になりつつある。
2022(令和4)年3月11日には、キハ283系による特急「おおぞら」の運行が終了となり、「おおぞら」はすべてキハ261系に置き換えられた。キハ261系以外で運行される特急は、キハ281系で運行の特急「北斗」とキハ183系で運行の特急「オホーツク」「大雪」のみとなっている。「北斗」はすでにキハ261系での運行が大半を占めており、「北斗」に残るキハ281系での運用は今年度いっぱいで終了ということになりそうだ。
ちなみ事業計画では「789系特急電車や201系気動車等の重要機器取替工事を推進する」とある。既存車両の機器の更新も進められることになる。
【JR北海道②】北海道新幹線の延伸で始まる札幌駅の改良工事
「事業計画」の「(2)経営基盤の強化」の項目の中では「①収益の確保」を目指す鉄道事業として「観光列車で新たな観光需要の創出を図る」としている。
あげられた観光列車は「花たび そうや」号や「THE ROYAL EXPRESS」、「HOKKAIDO LOVE!ひとめぐり号」で、この3列車の運行を実施するほか、SL客車のリニューアルを実施するとある。北海道の自然や観光資源を活かすために、こうした観光列車を有効に生かしたい方針のようだ。
また「北海道新幹線の取り組み」に関しても事業計画で触れている。令和4年度には、新幹線延伸に向け札幌駅工事が本格化する。札幌駅では11番線ホームの新設工事、南北乗換こ線橋工事、東西連絡通路工事、新幹線高架橋増設工事、耐震補強工事が始まる。ほか、新幹線が延伸される沿線では函館本線の倶知安駅、長万部駅の支障移転工事も進められる予定だ。
事業計画では、北海道新幹線札幌延伸の効果が現れる令和13年度の経営自立を目指すとしている。あとはお金がかかる青函トンネルの修繕業務や、閑散路線の運営をいかにしていくかであろう。
閑散路線の中で、具体的には「留萌線(深川〜留萌間)、根室線(富良野〜新得間)の早期の鉄道事業廃止及びバス転換を目指す」としている。これ以外にも採算の取れない赤字路線が多い北海道。こうして年々不採算路線の廃線ということを進めていかざるをえない現状も、非常に気になるところである。
【JR東日本①】ワンマン運転が進む閑散路線
JR東日本からは4月27日に「設備投資計画」が発表された。同計画には「輸送サービスの変革」として車両の新造計画および、設備投資の具体例があげられている。
まず新車両としては、山形新幹線用のE8系を新造し、2024年春の営業開始を目指すとしている。現在、同線の車両はE3系の1000番台と2000番台が使われている。E3系1000番台は新庄駅へ延伸された1999(平成11)年に合わせて新造された。新幹線の車両の寿命は15〜25年とされ、この年数を目処に入れ替えが行われる。E8系の新造はこの寿命を念頭に置いてのものとなる。
また、具体的な形式名は記していないものの、「ワンマン運転の拡大やBRTの自動運転の実施に向けた対応」もあげられている。JR東日本管内でワンマン運転は、このところ急速に進みつつある。ワンマン運転に対応したE131系電車が開発されたことが大きい。まず、2021(令和3)年3月13日に房総地区に導入されたのがE131系の0番台だった。さらに2021(令和3)年11月18日には500番台・580番台が相模線に導入され、205系すべての置き換えが完了している。
さらに、今年の3月12日には、宇都宮周辺を走る東北本線の宇都宮駅(一部は小山駅)〜黒磯駅間と、日光線用に600番台・680番台が導入され、すでに両区間のほとんどの列車がE131系での運用となっている。
導入された線区は比較的、利用者が少なく編成の車両数が少ない閑散路線が多いが、他線区でも車掌が同乗しないワンマン化された列車が検討されていくことになるのだろう。
【JR東日本②】中央快速線のグリーン車導入は想定外の延期に
JR東日本では、2023年度末に中央快速線のグリーン車の連結を予定していた。長くなる編成のために各駅のホームの延長工事などがすでに進められているが、今年度の事業計画では、このサービス開始が少なくとも1年程度遅れる見込みということが発表された。
その理由としてあげられたのが半導体不足の影響だ。自動車と同じように鉄道車両にも半導体が使われている。世界的な半導体不足が、こうした鉄道車両の製造にも影響し、新車両の導入や増備も遅れが出ているわけだ。
【JR東日本③】時間短縮を目指して改良工事が進む新幹線
東日本の新幹線網の中で、たとえば東北新幹線の宇都宮駅〜盛岡駅間は最高時速320kmでの運転が行われている。一方、盛岡駅〜新青森駅間は整備新幹線として造られたこともあり、最高時速が260kmに抑えられている。これは国が設けたスピード規制で、設備もこれに合わせて造られている。
JR東日本の「設備投資計画」では、「東北新幹線(盛岡・新青森間)・上越新幹線(大宮・新潟間)のスピードアップに向けた工事を引き続き進める」としている。具体的に騒音対策工事などを進め、国が設けた整備新幹線のスピード規制を時代に合うように検討・変更を求める、ということになる。
さらに「大規模地震対策や新幹線降雨防災対策を進めていく」と記されている。今年の3月16日には東北新幹線の福島駅〜仙台駅間が「福島県沖地震」の影響で約1か月の不通を余儀なくされた。今後、こうした大規模な地震への対応が不可避であることが改めて確認された形となった。
【JR東海①】東海道新幹線ではN700Sの増備が進む
JR東海からは3月24日、「2022年度重点施策と関連設備投資について」と題した投資計画が発表された。JR各社の中で唯一、増備する車両の数まで明記した計画書となっている。
この計画の中で「輸送サービスの充実(1)」として車両に関して触れている。JR東海らしく、東海道新幹線をより充実させたいという思いが見てとれる。
具体的には「『のぞみ12本ダイヤ』を活用して、需要にあわせた弾力的な列車設定に取り組む」としている。のぞみ12本ダイヤとは、東京駅〜新大阪駅間の列車本数を1時間に最大12本にするプランのこと。主力車両をN700Aタイプにしたことによって、2020(令和2)年3月のダイヤ改正で可能になった。JR東海では、2022年度中に新たにN700Sを13編成投入する。さらに既存のN700Aタイプに、N700Sが持つ一部機能を追加する改造工事を進める。要はこれらの対応によって「のぞみ12本ダイヤ」を、より余裕をもって実施したいという思いがあるのだろう。
【JR東海②】非電化区間用の特急HC85系が7月にデビュー
2019(令和元)年12月に製造されたHC85系の試験走行車。HC85系はハイブリッド式の特急形気動車で、長期にわたって試験が進められてきたが、その成果を生かした量産車が新造され、7月初めから特急「ひだ」として走り始める。
事業計画によるとHC85系は2022年度に58両が投入される予定で、テストに使われた試験走行車も量産車仕様に改造されるとある。最終的に2023年度までに64両が投入される予定だ。
現在、既存のキハ85系により運転されているのは特急「ひだ」と特急「南紀」で、名古屋車両区に計84両(2022年4月1日現在)が配置されている。このキハ85系のほとんどがHC85系の導入により、入れ換えになりそうだ(臨時列車用の予備車を除く)。
ちなみに名古屋車両区では上記写真のようにHC85系とキヤ95系が並ぶ姿が見られた。今年度の計画の中にはキヤ95系の「検査車両の機能向上等による検査方法の見直し」も含まれている。キヤ95系ドクター東海は今後も改良され、さらに効率よく検査に使われることになりそうである。
【JR東海③】315系が増備される一方で211系が削減対象に
3月5日に導入された新型315系通勤形電車。すでに中央本線の名古屋駅〜中津川駅間を往復している。この315系の追加投入計画が発表された。今年度中に56両が投入される。以降、2025年度まで352両が新造される。入れ替わるように3月のダイヤ改正までに既存の211系の基本番台1000・2000・3000番台が廃車となった。JR東海には4月1日現在、JRになって以降に造られた211系5000番台以降の230両が残っている。これらの入れ替えとともに、211系の2扉バージョン213系(28両)と311系(60両)も入れ替えということになりそうだ。
全車両の入れ換えが完了した後には、JR東海の通勤形電車は313系と315系の2形式のみになる。
【JR西日本】岡山地区の国鉄形電車の入れ替えが始まる
JR西日本からは、4月1日に「事業適応計画」、および2020(令和2)年秋に「JR西日本グループの中期経営計画2022」が発表されているが、具体的な車両導入計画が入っていない。そこで、ここでは最近に同社から発表された新車両導入の中で目立つものを取り上げておきたい。
5月10日にJR西日本から発表されたのが岡山・備後エリアに導入される新型車両227系近郊形電車の情報で、2023年度以降に2両・3両編成計101両が導入される。デザインコンセプトは「豊穏(ほうおん)の彩(いろどり)」とされた。
岡山地区はJR西日本管内の中でも、国鉄形電車の宝庫で、現在岡山電車区には113系が52両、115系が157両、117系は24両、213系28両、105系14両が配置される。これらの国鉄形が227系導入後、すべてが入れ替えとはならないものの、広島地区と同じように徐々に新形式の車両と入れ替わっていくことになりそうだ。
【JR四国①】早くも好評!2代目・伊予灘ものがたりが登場
JR四国からは3月31日に「2022年度事業計画」が発表された。この計画の中で、新車両の導入計画の記述はなかったものの、「収益のリカバリー」をするために、新たな観光列車「伊予灘ものがたり」の運行開始を一例にあげている。
今年の4月2日から走り始めた「伊予灘ものがたり」は、同列車の2代目にあたる。初代はJR四国初の本格的な観光列車として2014(平成26)年7月26日に走り始めた。初代はキハ47形からの改造車だったが、4月から走り始めた2代目は、特急形気動車のキハ185系3両を改造し、全席グリーン車特急とし、さらに松山側の3号車は定員8名が利用できるスイート「陽華(はるか)の章」とした。予約状況を見ると満席の列車も多く順調にスタートとしたように見受けられる。
JR四国では初代・伊予灘ものがたりの運行が成功したことにより、その後に多くの観光列車を運行して成果をあげている。JRグループの中でも経営状況が厳しいとされるJR四国やJR北海道は、こうした魅力ある観光列車を活発に運行させることも、生き残るために必要だと思われる。
JR四国からは設備投資計画の中で、具体的な形式名はあげられなかったものの、「特急電車のリニューアル」「ワンマン運転拡大のための車両改造」等をあげている。ワンマン運転拡大は、JR東日本でも課題としてあげられていた。ワンマン化のための車両改造も今後、各社で増えていくことになるのだろう。
【JR四国②】松山駅や高松駅などで改良工事が進められる
JR四国の計画で、ほかに注目されたのが主要駅の改造工事であろう。
まずは松山駅で、現在高架化工事がすでに始められている。駅に隣接していた松山貨物駅が場所を移動し、高架化された後には、駅の高架下に伊予鉄道の路面電車が乗り入れるという計画も立てられている。
高架化された駅の下に路面電車を走らせるプランはすでに、JR西日本の富山駅で実現しているが、これにより街がより活性化されたように思われる。JR四国では「松山駅周辺開発の検討深度化」という文章で表現しているが、高架化に加えて周辺開発を進めることは、街を活性化する取り組みとして有効のように思われる。
さらにJR四国では現在の高松駅の駅舎に隣接して、高松駅ビル(仮称)の開発推進を事業計画の中であげている。
【JR九州】西九州新幹線開業に関わる車両の増備が進む
JR九州からは「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」が3月23日に発表された。今年度に限定したものではないが、9月23日に開業予定の西九州新幹線と、新たに在来線の武雄温泉駅〜長崎駅間を走り出す新D&S列車「ふたつ星4047」に関して取り上げている。また2023(令和5)年秋に完成予定の新長崎駅ビル開発に関しても触れられている。
具体的な車両導入計画は記されなかったものの、JR九州では、西九州新幹線の開業に合わせて着々と在来線用の車両の準備を進めている。
たとえば、新幹線に平行して走る在来線の長崎本線・肥前浜駅〜長崎駅間の電化は9月23日以降に廃止される予定だ。現在は817系などの交流電車で運行される同区間の普通列車だが、電車に代わり走るのがYC1系気動車となる。YC1系はすでに2020(令和2)年3月に大村線に導入されている。ディーゼル・エレクトリック方式と、蓄電池を併用して走るハイブリット方式の車両だが、長崎本線用にも増備が進められている。
西九州新幹線の開業にあわせ、長崎県内の路線網を走る列車や車両が、大きく変わっていきそうである。
【JR貨物①】EH500形式が日本海縦貫線走行用に改良される
最後は3月31日に発表されたJR貨物の「2022年度 事業計画」を紹介したい。鉄道貨物輸送といえば電気機関車、ディーゼル機関車が主役となるが、機関車に関して注目したい、いくつかの情報が同計画に盛り込まれている。
まずはEH500形式の改造から。現在、EH500形式は青森から以南の東日本各地と、北九州地域の貨物輸送をカバーしているが、東北〜首都圏間の走る路線は東北本線にほぼ限られていた。
EH500形式はいわば東日本では〝東北本線専用車〟となっていたのだが、日本海縦貫線も迂回して走ることができるように18両の改造を行った。現在、本州のEH500形式は仙台総合鉄道部に67両が配置されているが、このうち約3分の1弱にあたる車両が、迂回運転が可能なように手を加えられた。日本海縦貫線の主力車両といえばEF510形式のみだったが、合わせてEH500形式も走れるように変更されたのである。
なぜ迂回運転を可能にしたのだろう。これは自然災害に備えての物流ルートの確保という側面が強い。首都圏と、東北・北海道を結ぶ貨物輸送の幹線にあたる東北本線。同線がもし災害で不通になったら、東日本の物流が停まってしまう。そうならないように事前に対応しておこうというわけである。すでに改造を終えたEH500形式による日本海縦貫線と上越線を使っての試運転も始まっている。
【JR貨物②】DD200形式などの新型機関車の増備が進む
新型機関車の導入に関しては「省エネを推進する設備投資」として2形式を掲げている。まずは電気式ディーゼル機関車DD200形式の導入を図るとしている。このDD200形式は、国鉄形のDE10形式に代わるもので、すでに石巻線や、各地の貨物支線での運行が引き継がれた。
ほかに一形式の導入が事業計画で記されている。それがEF510形式301号機で「交流回生ブレーキ機能を装備した機関車」として九州へ導入された。301号機は九州用のEF510形式の先行試験車として、すでに北九州貨物ターミナル駅〜福岡貨物ターミナル駅間を、実際に貨車を牽引しての試験運転が続けられている。
【JR貨物③】国鉄時代生まれの機関車の引退が進む
導入が進むDD200形式、EF510形式の新造に加えて、事業計画には記していないもののEF210形式300番台の増備が進む。これらの導入にあわせて、古い国鉄形機関車の引退が進められている。
この春に鉄道ファンの間で大きな話題を呼んだのがEF66形式27号機の引退であろう。EF66形式の中で唯一となった国鉄時代から運行していた車両の引退は、国鉄形機関車の終焉が近づいていることをより印象づけた出来事となった。
EF66形式以外にも、EF64形式はその活躍の場が急速に減少している。主力機として活躍してきた中央西線の輸送も、3月ダイヤ改正後はEH200形式とEF510形式が入線するようになったため牽引する列車が減ってしまった。
3月以降にEF64形式の独壇場となっているのが伯備線だ。とはいえ、こちらもコロナ禍の影響による積み荷の減少で、通常に運行されるはずの貨物列車が運休となることもあり、沿線を訪れた鉄道ファンをやきもきさせている。
九州用のEF510形式が導入されたことにより、今後影響を受けるのが九州地区で活躍してきた国鉄形機関車であろう。鹿児島本線、長崎本線、日豊本線では、少なからず国鉄形機関車を使っての貨物輸送が行われている。
貨物列車を牽引するのはEF81形式と、ED76形式の2形式だ。特にED76形式の中には、貴重な基本番台の81号機、83号機といった車両も残っている。このうちED76形式81号機は1975(昭和50)年3月の落成とすでに50年近い年期を誇る。こうしたベテラン機関車もEF510系が新たに導入されることで、引退の道を歩むことになるのだろう。
【JR貨物④】東京と札幌でレールゲートの新設が進む
コロナ禍の中でも、1日たりとも休まず国内の物流を支えてきたJR貨物。最近は一層のモーダルシフト化が進み、鉄道貨物輸送にかかる比重が高まっている。今年度の事業計画でも触れられているように「貨物駅の結節点機能の強化」として種々の整備が進められている。
具体例としてはマルチテナント型の物流施設「レールゲートの全国展開」があげられている。すでに東京貨物ターミナル駅に隣接して2020(令和2)年2月に「東京レールゲートWEST」を建設、さらに東側に「東京レールゲートEAST」が、この7月に竣工予定で、その機能が一層強化される。
さらに「DPL札幌レールゲート」が2022年度上半期の完成予定で、ほか新仙台貨物ターミナル駅での建設計画も進められている。レールゲートほど大規模ではなくとも、新座貨物ターミナル駅(埼玉県)などで積替ステーションの拡充も多くの貨物駅で行われている。
ここ数年は1つの物流事業者や荷主企業が、1往復する列車を専用で利用する「ブロックトレイン」が増えてきている。佐川急便、福山通運、西濃運輸、トヨタ自動車といった会社がJR貨物と協力して運行させているケースが多い。3月のダイヤ改正でもさらにブロックトレインが増便された。ドライバー不足の時代に「ブロックトレイン」のニーズはますます加速していきそうだ。
JR旅客各社が乗客減少に悩む昨今、JR貨物は堅実に経常利益をあげ続けている。こうした傾向が顕著に現れる時代も珍しい。時代の推移に合わせて、春に発表される事業計画を見ていると各社の考え方の相違が見えてくることもあり、なかなか興味深い。