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2022/6/11 21:00

私鉄各社「事業計画」の新車両増備&設備投資に注目した【大手私鉄編】

〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画③〜〜

 

2週にわたり鉄道各社が発表した「事業計画」「設備投資計画」を見てきた。各社とも今年はアフターコロナを見極め、次の時代に向けての計画案を打ち出しつつある。

 

今回は首都圏大手の3社と、東海・近畿・九州の大手各社の「事業計画」「設備投資計画」を見ていきたい。なお、近畿各社は単年度の計画は発表しないこともあり、中・長期計画の注目ポイントに迫った。

 

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【京成電鉄】3100系の増備と押上線の下り高架化を進める

京成電鉄は5月17日に「2022年度 鉄道事業設備投資計画」を発表した。鉄道事業では総額167億円の設備投資を行うとしている。計画では「(1)安全・安定輸送の追求」と「(2)人と環境に優しい取り組み」の2本柱を掲げている。

 

新車増備計画:成田スカイアクセス用の3100系を増備

今年度の計画に記述はなかったが、昨年の11月4日に発表した「2021年度 鉄道事業設備投資計画」の中で、アクセス特急用の3100形車両の2編成(16両)を導入するとあった。2019(令和元)年10月に登場した3100形は、2021(令和3)年9月までに6編成が導入されていて、さらに追加され8編成となる。

↑近未来的な正面デザインが特長の京成3100形、京成グループの標準車両で、新京成電鉄にも同形の80000形が走る

 

この3100形の増備とともに、駅や車内照明のLED化を図るとしている。LED照明の利用は省エネ効果が期待できるだけに、新車両の導入とともに、既存車両の照明の変更を多くの鉄道会社が行うようになっている。

 

設備投資計画:押上線の高架化もかなり進みつつある

京成押上線では東京都葛飾区内での連続立体交差事業が進められている。現在進められているのが京成立石駅(けいせいたていしえき)付近の高架化で、工事区間は四ツ木駅〜青砥駅間約2.2kmとなる。工事はまず仮の下り線工事を進めるとしている。

↑京成立石駅付近で進む立体交差事業。下りホームの後ろ側で仮の下り線の敷設工事が進む

 

工事完了すると2.2km間にある11か所の踏切が廃止される予定だ。仮の下り線の線路が現在の線路と平行に敷設中で、まずは下り線を移動した上で、次に上り線を移動、現在の上り線の位置から高架化する計画が立てられている。

 

同工事の完了は用地買収が遅れた影響もあり、当初は2022年度中の完成としていたものの、実際の完成は2027年度ごろになると見られている。

↑京成立石駅〜四ツ木駅間では仮の下り線の設置が進む。左の電車が走るところが現在の下り線で、工事の後は右の仮線へ移される

 

立体交差事業の他に計画されているのが「京成本線荒川橋梁架替(かけかえ)工事の推進」だ。京成電鉄の荒川橋梁が架けられたのは1931(昭和6)年3月のこと。地球温暖化のせいなのか、豪雨の際にはかなりの水位上昇も見られる。もしもの時に備えて、現在の架橋位置と堤防を高くして、街と路線を守ろうというのが、橋の架け替えの理由である。

 

国土交通省と京成電鉄では、同橋梁の掛け替えを20年近く前から検討を始めており、今年度の事業計画でも「沿線地域防災への取組みとして、国の荒川下流特定構造物改築事業である京成本線荒川橋梁架替工事について、工事に着手します」としている。完成予定は2037(令和19)年度とされている。

↑京成電鉄の荒川橋梁。荒川と平行する綾瀬川に全長446.99mの橋が架かる。工事では堤防とともに橋梁自体も高い位置に変更される

 

【相模鉄道】新横浜線に乗り入れる21000系の増備が進む

相鉄グループは4月26日に「2022年度 鉄道・バス設備投資計画」を発表。総額170億円のうち、鉄道事業へは164億円の投資が行われる。相模鉄道では2022年度末に羽沢横浜国大駅〜東急東横線日吉駅間を結ぶ新横浜線の開業を控えている。投資計画もこの新線開業に投入される新車の増備が記述されている。

 

新車増備計画:今年度に増備されるのは21000系3編成

新線乗り入れ用車両として増備されるのが相鉄21000系。2018(平成30)年2月に登場した20000系の8両編成版で、東急目黒線への乗り入れ用に新造された。今年度は3編成24両が導入の予定で、21000系は計7編成となる。将来は全9編成となる予定とされている。

 

さらに「既存車両のリニューアルを引き続き実施します」とあり、ますます「YOKOHAMA NAVYBLUE」塗装の車両に乗る機会が増えそうだ。

↑東急目黒線乗り入れ用車両の相模鉄道21000系。「YOKOHAMA NAVYBLUE」と呼ばれる濃いブルーで塗装される

 

設備投資計画:改良工事が進む海老名駅、鶴ケ峰駅も高架化が始まる

東急東横線との相互乗り入れが行われる新横浜線。羽沢横浜国大駅付近の工事はすでに終了していて、あとは東急電鉄側の工事の終了と、開業日を待つのみとなっている。他にも今年度の設備投資計画には鶴ケ峰駅付近の連続立体交差事業と、海老名駅の改良工事が記述された。

 

相鉄本線の鶴ケ峰駅は相鉄新横浜線が分岐する西谷駅(にしやえき)と、相鉄いずみ野線が分岐する二俣川駅(ふたまたがわえき)のちょうど中間にある駅で、新横浜線開業後には、通過する列車本数が増えることが予想されている。計画では「鶴ケ峰駅を含めた上下線約2.1km」が地下化される予定で、横浜市の都市計画事業として進められる。工事は2022年度下半期の着手を目指す。

 

今年度の計画では、さらに相鉄本線の終点、海老名駅の改良工事が進められる予定だ。北口改札を新設、「南口改札新設に向けた準備工事として鉄骨製作、架設や新駅舎構築」などが行われる。現在、海老名駅は他線との乗換えがやや不便となっているが、工事が完了すると乗換えも便利になりそうだ。

↑鶴ケ峰駅を通過する横浜行き12000系。現在同駅は地上駅だが地下化をめざして立体交差事業が始められる予定だ

 

【東京メトロ】3線の車両の増備が進められる

東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」と略)からは2022(令和4)年3月に「2022年度(第19期)事業計画」が発表された。「さらなる安全・安心の提供と鉄道事業の進化による東京の多様な魅力と価値の向上」とする項目1の中で、「新型車両の導入」と「輸送サービスの改善」「新線建設」に関して触れている。いくつかの興味深い事柄も見られるのでチェックしておきたい。

 

新車増備計画:丸ノ内線の電圧を750Vに昇圧するプランも

まず「新型車両については、丸ノ内線、有楽町線・副都心線及び半蔵門線への導入を推進する」としている。それぞれすでに登場している丸ノ内線2000系、有楽町線・副都心線17000系、半蔵門線18000系が増備される。

↑丸の内線2000系電車。増備に伴い1988(昭和63)年生まれの02系が徐々に引退に。本年度から750V昇圧の検討も

 

興味深いのが銀座線・丸ノ内線の電圧を「標準電圧の750V化へ向けた取組みを推進する」と記述されていることだ。銀座線と丸ノ内線の電車は東京メトロで2線のみとなったサードレール(第三軌条)から電気を取り入れて走る方式を採用している。電圧は現在、直流600V方式だが、それを昇圧させ750Vを目指すとしている。説明には「輸送の安定性を高めるとともに、消費電力の削減等、環境負荷低減も図るため」としている。ちなみに、一般的な路線には直流1500Vが使われている。600Vの電圧は、やはり弱点があるということなのだろう。

↑2021(令和3)年8月から運転開始した半蔵門線18000系。グッドデザイン賞や鉄道友の会ローレル賞を受賞するなど評価も高い

 

設備投資計画:地下鉄内の複数の折り返し施設などの増強が図られる

事業計画の中では「輸送サービスの改善」として地下構内の施設の整備も行うとしている。

 

まずは東西線。列車の遅延防止・混雑緩和のため「飯田橋駅〜九段下駅間の折り返し設備整備」を行うとしている。地下鉄構内には、意外なところに側線や留置線が設けられ、路線を走る列車本数の調整や留置に使われている。飯田橋駅〜九段下駅にも側線が設けられているが、これを折り返し設備として有効活用しようというわけだ。

 

銀座線も列車の遅延防止のために、浅草駅構内の折返し設備整備を推進する、としている。浅草駅のホームの先には折返し用の3本の留置線がある。この折り返し用の留置線を、より使いやすいように整備するようだ。

 

【名古屋鉄道】9500・9100系の増備と立体交差化が進む

名古屋鉄道(名鉄)からは3月29日に「2022年度 名古屋鉄道 設備投資計画」が発表された。鉄道事業181億円、開発事業59億円、その他12億円と金額も細かく記述されている。この計画の中で鉄道事業では「1 安全・安定輸送確保」と「2 駅・車両の快適性・利便性の向上」の2つのポイントがあげられた。

 

新車増備計画:名鉄らしさが際立つ9500系・9100系

新車両の増備に関しては「2 駅・車両の快適性・利便性向上」の中に記された。具体的には「通勤型車両9500系及び9100系の新造」としている。

↑名鉄スカーレットと呼ばれる赤の正面デザインが目立つ9500系。9500系の2両編成版の9100系も新造される予定だ

 

9500系は2019(令和元)年12月に導入された新車両で4両編成だ。一方、9100系は9500系の2両編成版で、2021(令和3)年1月に走り始めている。名鉄の鋼製車両は赤一色で「名鉄スカーレット」として親しまれている。9500系・9100系はステンレス車体だが、正面から運転席入口まで名鉄スカーレットカラーを拡大し、名鉄らしい鮮やかな色合いの電車となっている。

 

9500系はすでに11編成まで導入されたが、2022年度に9500系は12編成目が、9100系は7編成目が導入予定。あわせて鋼製車両との置き換えが進むことになる。

 

設備投資計画:複数路線で進む立体交差、踏切の安全設備にも投資

名鉄は愛知県、岐阜県に営業キロ444.2kmという路線網を持つ。路線距離が長いせいもあり、沿線では現在4か所で高架化工事が進められている。どこで行われているか見ておこう。

 

◆知立駅(ちりゅうえき)付近(名古屋本線・三河線)

高架化されるのは名古屋本線の一ツ木駅〜知立駅〜牛田駅間1.6kmと、三河線の重原駅(しげはらえき)〜知立駅〜三河八橋駅間3.4km。知立駅は現在、地上駅だが、完成後には2階部が名古屋本線に、3階部が三河線のホームとなる。三河線は知立駅部分でスイッチバック方式となっている。計画を見るだけでも、大掛かりな工事になることが予想される。この高架化により計10か所の踏切がなくなる予定だ。

 

◆若林駅付近(三河線)

高架化工事が進む知立駅の東側にあたる三河線の三河八橋駅〜若林駅〜竹村駅間2.2kmでも高架化が進められる予定で、この工事完了後には4か所の踏切がなくなる。

 

◆喜多山駅付近(瀬戸線)

名鉄瀬戸線の喜多山駅前後の高架化工事で、小幡駅〜喜多山駅〜大森・金城学院前駅間1.9km間が高架化される。踏切は8か所なくなる予定だが、特に喜多山駅の東西側で瀬戸線と交差する国道302号(環状2号線)と県道59号線(瀬戸街道)といった交通量の多い幹線の踏切があり、同区間の立体交差化が急がれる理由となっている。

 

◆苅安賀駅(かりやすかえき)付近(尾西線/びさいせん)

尾西線の二子駅(ふたごえき)〜苅安賀駅〜観音寺駅(かんのんじえき)間1.8kmで進む高架化計画で3か所の踏切が消える。

 

こうした立体化とともに今回の事業計画には、踏切障害物検知装置の更新や、遠隔監視システム導入踏切の拡大により、踏切道の保安度向上を図ることが記述された。

↑独自の四角い警報灯が使われる名鉄の踏切。さらなる安全対策として複数の踏切で遠隔監視システムの導入が進められている

 

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