インドネシア最大のモーターショー「ガイキンド・インドネシア国際オートショー2022(GIIAS 2022)」が8月11日より21日まで、ジャカルタ市郊外のインドネシア・コンベンションセンター(ICE)で開催されました。
これまでインドネシアで圧倒的シェアを誇ってきた日本車。その中心が3列シートのMPV(マルチ・パーパス・ビークル)です。そのMPVを通して感じたインドネシアの自動車市場をレポートします。
中国「ウーリン」、韓国「ヒョンデ」が相次いで新型MPVを投入
インドネシアは東南アジア屈指の人口2.7億人を抱え、急速な経済成長と共に将来への期待はきわめて大きい国の一つです。そうした状況に日本の自動車メーカーはいち早く着目し、工場建設などの投資も積極的に行ってきました。その結果、インドネシアにおける日本車のシェアは9割を大きく超え、インドネシアは世界で最も多くの日本車が走る国となったのです。
しかし、その状況はここ数年、大きく変化し始めています。中国と韓国勢による進出が影響を及ぼし、ジリジリと日本車のシェアが下がり始めているのです。数年前まで日本車のシェアは95%を超えていましたが、昨年は94%台に下がっています。
特にその存在が目立っているのが中国車で、中でもウーリン(五菱)は2021年で前年比3.9倍もの販売実績を上げ、シェアを単独で2.9%にまで高めています。これは3列シートのMPVをリーズナブルな価格で発売したことがインドネシアで受け入れられたとみられています。
日本勢は先行して新型車を相次いで投入して中韓勢を迎え撃つ
そうした流れに今回のGIIAS 2022では、新たな動きが加わりました。韓国ヒュンダイ(現地読み/日本では「ヒョンデ」)がこのMPV市場に新型車「スターゲイザー」を投入してきたのです。しかも、すべての部品を輸入するノックダウン生産ではなく、現地部品を調達して現地工場で生産する方法に変更し、“インドネシア国産車”としてアセアン各国に輸出する計画を示したのです。
もちろん、迎え撃つ日本メーカーも黙ってはいません。両社合わせて5割を超えるシェアを握るトヨタとダイハツは、昨年11月、FF(前輪駆動)化したMPVとしてトヨタ「アバンザ」/ダイハツ「セニア」を発表。三菱も久しぶりの大ヒットとなった「エクスパンダー」をマイナーチェンジするなど、迎撃態勢はすっかり整ったようにも見えます。
しかし、ヒュンダイの動きはインドネシア国内では好意的に見られているのは確かなようで、インドネシアの自動車事情通によれば「今までとは勢いがまるで違います。中国車を見ても以前と比べて品質は格段に向上していますし、何よりカッコ良いクルマに憧れるインドネシアの人たちにとって、スターゲイザーはかなり脅威になるでしょう」と話していました。
1990年代に一度MPV市場に参入して撤退した苦い経験を持つヒュンダイにとって、「今度こそ!」という思いが強いのは間違いないでしょう。インドネシアにおけるMPVは中国勢や日本勢を巻き込み、今後しばらくは熾烈な戦いが繰り広げられそうです。
ヒュンダイ「スターゲイザー」
ヒュンダイのスターゲイザーは、「スリーク・ワン・ボックス」と名付けられたワンモーションフォルムのスタイリッシュなデザインがポイント。ボディサイズはインドネシアで人気が高い三菱エクスパンダーとほぼ拮抗します。特に横一文字のデイライトを配したワイド感たっぷりのフロントフェイスは近未来感たっぷりのデザインで、MPVとしての存在感をさらに高めていました。
パワートレインは1.5L直列4気筒ガソリンエンジンを搭載し、最高出力115PS/6300rpm、最大トルク143.8Nm/4500rpmを発揮。トランスミッションは無段変速式CVTの「IVT」と6速MTが選択できます。
インテリアは使い勝手の良さを感じさせる水平基調のインストルメントパネルで、インフォテイメント系としてはコネクティッドサービス「ヒョンデ・ブルーリンク」に対応した8インチディスプレイオーディオを設定。これを使うことで、スマートフォンからドアロックの解錠・施錠、エンジンスタート/ストップなどが可能となります。