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2022/9/24 21:00

繰り返される甚大な「自然災害」−−不通になった鉄道を総チェック

【今も不通が続く③】今後の方針が定まらない肥薩線の現状

◇肥薩線・八代駅〜吉松駅間が不通

↑球磨川を眺めつつ走った「SL人吉」。同列車をはじめ多くの人気観光列車が走った路線は今後、復活するのだろうか

 

明治の終わりに鹿児島本線として開業、1927(昭和2)年に肥薩線に名を改めた。当時の鉄道遺産も多く残している。

 

路線は八代駅〜隼人駅(はやとえき)間124.2kmで、そのうち八代駅〜人吉駅間は、球磨川沿いを走り通称〝川線〟と呼ばれる。人吉駅〜吉松駅間には複数のスイッチバック駅、ループ線が連なる〝山線〟で、それぞれ特長のある風光明媚な路線で、訪れる人も多かった。

 

そんな名物路線を2020(令和2)年7月4日、「令和2年7月豪雨」が襲う。球磨川の氾濫により球磨川第一、第二橋梁が流失、また路盤も多数箇所で冠水するなどで、肥薩線124.2kmの区間中の約7割にあたる86.8kmの区間が不通となってしまった。

 

複数の橋梁が流されてしまったこともあり、復旧には膨大な費用がかかることが見込まれ、試算によって異なるものの235億円規模の復旧費用が見込まれている。復旧したとしても、毎年、慢性的な赤字が見込まれていて、営業収支は年間約9億円の赤字が出るとされる。

 

現在、国、県、地元自治体とJR九州の間で復興に関しての話し合いが持たれているが、国は只見線のように上下分離方式も視野に入れているようだ。肥薩線が通る人吉市などでは再開された後の観光需要増が見込めるとあって期待しているが、復旧への道筋はまだ明確に描けていない。

 

【今も不通が続く④】九州の第三セクター2線は復旧工事が進む

民間企業となったJRグループに対して自治体が経営主体となっている第三セクター鉄道に関しては、不通区間の復旧工事も進み、あとは工事完了を待つのみとなっている。いずれも九州内の路線だが、現状を見ておこう。

 

◇南阿蘇鉄道・立野駅〜中松駅間が不通

立野駅〜高森駅間を走る高森線を運行していた南阿蘇鉄道。2016(平成28)年4月に発生した熊本地震による被害で、不通となり、その後に中松駅〜高森駅間は復旧した。トレッスル橋として貴重な立野橋梁や、高さ約60mと完成当時は日本一の高さを誇った第一白河橋梁など、構造物としても貴重な橋梁などの復旧工事が進み、2023年夏には路線が復旧する見込みだ。路線復旧後にはJR九州の豊肥本線の肥後大津駅まで列車乗り入れを計画するなど、新たな南阿蘇鉄道づくりを目指している。

↑立野駅〜長陽駅間にかかる立野橋梁を渡るトロッコ列車。昭和初期に建造されたトレッスル橋として国内最大規模を誇っている

 

◇くま川鉄道湯前線(ゆのまえせん)・人吉温泉駅〜肥後西村駅(ひごにしのむらえき)間が不通

くま川鉄道も、肥薩線と同じく「令和2年7月豪雨」で被害を受けた。人吉温泉駅(JR九州・人吉駅に隣接)の車庫が水没。所有する5両が潅水被害を受け、さらに川村駅〜肥後西村駅間に架かる球磨川第四橋梁が流出してしまった。その後に肥後西村駅〜湯前駅間の運転は再開された。

 

現在、不通区間の復旧工事を進めており2025年度には全線運転再開が見込まれている。

 

一方の人吉駅が通る肥薩線の復旧は現在のところ、見込みは立っておらず、復旧しても接続する鉄道がない路線になる可能性も考えられる。

↑現在は列車が不通となっている川村駅〜肥後西村駅間を走るくま川鉄道の列車。この先に球磨川第四橋梁が架かっていた

 

この夏に不通となった路線区間と、今も不通になっている区間の現状を見てきた。こうして見ると地域差がはっきりしていることが分かる。最近の豪雨災害の傾向は、地域差が偏る傾向が多く見られる。豪雨災害が出たものの、鉄道路線に大きな影響が出ない地方もあった。自然相手だけに運・不運がつきまとう。

 

最後に9月18日から20日にかけて列島を縦断した台風14号により被害を受けた路線区間を見ておこう。台風14号は勢力を弱めずに9月18日に鹿児島に上陸し、九州を南から北へ通り抜けた。そして複数の路線が被害を受けた。不通となっているのは下記の通りだ(9月21日、22時50分時点のもの)。

 

◇久大本線・豊後森駅(ぶんごもりえき)〜由布院間が不通
野矢駅〜由布院駅間で道床流出等が発生→10月上旬に運転再開を目指して復旧工事を進める。

◇指宿枕崎線・指宿駅〜枕崎駅間が不通
複数個所で倒木等が発生→9月下旬の運転再開を目指して復旧工事を進める。

◇肥薩線・吉松駅〜隼人駅が不通(肥薩線全線が不通となる)
吉松駅〜栗野駅(くりのえき)間で築堤崩壊等が発生、9月下旬の運転再開を目指して復旧工事を進める。

◇吉都線(きっとせん)・都城駅〜吉松駅間が不通
西小林駅〜えびの飯野駅間で築堤崩壊等が発生、10月上旬の運転再開を目指して復旧工事を進める。

◇日南線・南郷駅〜志布志駅(しぶしえき)間が不通
大隅夏井駅〜志布志駅間で大規模な築堤崩壊が発生、復旧には時間を要する見込み。

 

このうち、より大きな被害が出たのは日南線である。実は昨年の9月16日、接近した台風14号の影響による大雨被害により日南線の青島駅〜志布志駅間が不通となった。復旧したのは12月11日のことだった。昨年も「台風14号」で、さらに被害を受けたのが9月中旬と同時期のこと。2年続きで路線が不通となっているから深刻だ。

 

自然災害は一筋縄ではいかない問題をはらむ。今後、さらなる被害が出ないことを願うばかりである。

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