EVを武器に日本市場に再参入する韓国のヒョンデと、日本でもバスやタクシーでEVの実績がある中国のBYD。両社の自信作の出来栄えについて、試乗した自動車ITジャーナリストが本音で語る。
※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです
KEY TREND ≪アジアンEV≫
EVへのシフトチェンジが加速するなか、日本でも国産や欧米のEVが続々と登場している。その流れに割って入るのがアジアのEVメーカー。日本の道路を席巻する存在となるのだろうか。
私が試乗しました!
ヒョンデとBYDの参入は日本車にとって大きな刺激に
世界的に「脱炭素」への流れがあるなかで、そのシンボリックな存在となっているのが電気自動車(EV)だ。ロシアのウクライナ侵攻後に発生したエネルギー問題への不安を抱えつつも、全体的なその流れはいまも大きく変わっていない。
そのカギを握るのが中国だ。中国はいまや世界最大の自動車大国となり、国の戦略としてその大半をEVで賄おうとしている。これをいち早く追いかけたのが欧州勢で、それが欧州でのEV化の流れを後押しした。さらにアジア勢もこれに続き、韓国・ヒョンデはデジタルテイストにアナログの感性を加えた「パラメトリックピクセル」のデザインが印象的な、「アイオニック 5」を世に送り出した。
BYDはアジアやオセアニアですでに実績を積んできたが、車両デザイナーに欧州人を据え、グローバルで戦えるデザインとした。つまり、ヒョンデ、BYDとも、日本人が好む“欧州っぽさ”を備えたことが参入のきっかけとなったとも言えるだろう。
アイオニック 5はさすがに手慣れたクルマ作りをしており、走りも内装の仕上がりも日本人にとって十分満足できるレベルにある。一方でBYDはインターフェースなどで作り慣れていない部分が感じられた。とはいえ、両ブランドのEV参入が日本車にとって新たな刺激となるのは間違いない。
【その1】インターフェースに難はあるがデザインや個性には満足できる
BYD
ATTO 3
価格未定 2023年1月日本発売予定
BYDの日本導入EV第一弾となるATTO 3(アットスリー)。2022年2月に中国で販売を開始して以降、シンガポールやオーストラリアでも発売。独自開発のEV専用プラットフォーム「e-Platform3.0」を採用し、広い車内空間と440Lの荷室を実現している。
【会田の結論】ハンドリングは軽快でトルクフルな走りも秀逸! 操作系の改善が求められる
アスレチックジムの雰囲気を演出したインテリアは、ギミックに富んでいて楽しい。一方でディスプレイの情報表示は全体に小さく、操作スイッチの視認性も含め、要改善だ。ハンドリングは全体に軽めで、市街地での操作はかなりラク。EVらしいトルクフルな走りも実感できた。
【その2】走りもインテリアも欧州車そのもので日本人が満足できる仕上がり
ヒョンデ
IONIQ 5
479万円〜(税込)
ヒョンデの代表車種であった「ポニー クーペ」をオマージュしたデザインが印象的。EV専用プラットフォームを生かした広い室内が特徴。ベースのIONIQ 5のほかにVoyage、Lounge、Lounge AWDと全4モデルが揃う。
【会田の結論】乗り心地はやや硬いが圧倒的な加速と操作性で走りの充実度は高い
運転席に座るとまず気付くのがインテリアの上質さ。手触り感さえも上々だ。コラムから突き出たシフトチェンジレバーのクリック感も精緻さがある。走り出すと若干硬めの乗り心地が気になるが、圧倒的な加速感とハンドリングの正確さがそれを凌駕。満足度の高い走りを楽しめる。
■2021年 世界のEV販売台数ランキング
圧倒的に強いのはテスラだが、中韓メーカーが10位以内に4社も入っているのは驚き。特に中国はEVの普及に向けて政府が強力な支援策を展開していることもあり、これまでクルマ作りには無縁だったメーカーもEVに参入している。
■日本&欧米EVとのスペック比較
価格はいずれもEV購入補助金適用前のもの。総電力量は60kWh近辺、カタログ値ではあるが一充電最大走行距離は500km近くにまで達する。ATTO 3、IONIQ 5ともにスペック的には日本や欧州のEVと肩を並べていることがわかる。
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