ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、キャンプやペット生活を楽しむ人たちの間で大人気のカングーを取り上げる。顔が一新された新型の評価は?
※こちらは「GetNavi」 2023年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
【PROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。
【今月のGODカー】
RENAULT
KANGOO
SPEC【クレアティフ・ディーゼル】●全長×全幅×全高:4490×1860×1810mm●車両重量:1650kg●パワーユニット:1460㏄直列4気筒ディーゼルターボ●最高出力:116PS(85kW)/3750rpm●最大トルク:270Nm/1750rpm
●WLTCモード燃費:17.3km/l
481万円〜850万円
走りは問題なし! 問題はボディカラーの少なさ?
安ド「殿! 今回は新しいカングーを紹介します!」
永福「問題の新型カングーだな」
安ド「えっ、問題とは?」
永福「カングーはここ日本で、フランス人もビックリの人気を誇ってきた。質素でオシャレで実用的なフランス製ミニバンとして、数多くのファンを持っている」
安ド「独特のどんぐりまなこが良かったですよね!」
永福「ところが新型は、フランスの公務員のような顔になった」
安ド「なるほど、それが問題ですか。でも今回の撮影車は、日本向けにわざわざ黒い樹脂バンパーを付けた質素なグレードで、これなら悪くないと思います!」
永福「確かに悪くない」
安ド「僕が乗っていたフィアット・ムルティプラの整形顔を思い出しました。商用車風のスチールホイールもカッコ良いです!」
永福「扁平率が60の分厚いタイヤも良いな」
安ド「乗ってみると、走りも良いのでビックリしました。カングーってこんなに操縦安定性が良かったでしたっけ?」
永福「最近のルノー車らしい、タイヤが路面に吸い付くような安定感抜群の走りだな」
安ド「今回は1.5lのディーゼルエンジン仕様でしたが、静かで実用的で良く走りますね!」
永福「燃費も良いぞ。首都高を軽く流したら、22km/lも走った」
安ド「凄いですね! 燃料は軽油ですし!」
永福「走りには文句なしだ」
安ド「じゃ問題は顔だけってことですね?」
永福「いや、まずボディカラー。黒い樹脂バンパーの質素仕様は、白か黄色しか選べない」
安ド「ええっ! たったの2色ですか!?」
永福「いくらなんでも4色くらい揃えてほしいぞ」
安ド「そのうち増えるんじゃないでしょうか?」
永福「だと良いな」
安ド「ほかにもありますか?」
永福「ある。大幅な値上げだ。先代カングーは250万円くらいから買えたのが、新型は384万円から。今回のクレアティフ・ディーゼルは419万円だ」
安ド「エエ〜ッ! 先代カングーって安かったんですね……」
永福「確かに、いま考えるとものすごく安かった。だから人気があったのだな」
安ド「でも、カングー人気は日本でも定着してますから、高くなってもファンは買うんじゃないでしょうか?」
永福「とは思うが、現在はシトロエン・ベルランゴというライバルが出現している。コンセプトもサイズも値段もほとんど同じ。そしてデザインや装備はベルランゴのほうがかなり上だ。私ならベルランゴを選ぶな」
安ド「ベルランゴのボディカラーは何色ですか?」
永福「5色だ」
安ド「カングー、ピンチですね!」
【GOD PARTS 神】インパネアッパーボックス
フランスの働く人たち御用達の便利機能
運転席正面に小物入れがあるのは普通ですが、カングーにはここから伸びるスマホホルダーがオプション設定されています。内部にはUSB端子もあって充電もバッチリ。さらに同じものを左右両側につけることも可能で、これは母国フランスで仕事用とプライベート用でスマホを2つ使用するユーザーが多いそうで、そこへの配慮らしいです。
【GOD PARTS 01】ダブルバックドア
日本では見かけないが欧州の香りを感じる
いわゆる「観音開き」です。日本のミニバンではほとんど採用されていませんが、逆にこういうところは欧州の香りが感じられて好ましいです。写真のように180度全開にできますが、途中の90度で一度止まる構造になっているので安心して開くことができます。
【GOD PARTS 02】ラゲッジスペース
広大すぎる空間を自由に使い倒せる
通常時でも775l、リアシートを前方に倒せば床はフラットになったうえ、2800lもの大容量スペースが出現します。なお、リアシートは6:4の分割可倒式になっていて、トノカバーと合わせて、空間を仕切るなどして自由に使い倒すことができます。
【GOD PARTS 03】チャイルドミラー
隠された小さなミラーで運転中でも後席が確認可能
前席頭上のオーバーヘッドコンソール中央には小さなミラーが隠されています。なぜ2つもバックミラーがあるのかというと、こちらは後席の子どもなどを見るための車内用。使わない時は裏返して格納できるので邪魔になりません。
【GOD PARTS 04】両側スライドドア
初代モデルから受け継ぐ使いやすいドア構造
日本のミニバンではおなじみですが、海外ではあまり多くないスライドドア。カングーはルーツが商用車であるため、初代モデルから採用されてきました。開口部が広くて乗りやすいうえ、荷物も積み込みやすくなっています。
【GOD PARTS 05】スチールホイール
安っぽさをウリにするハーフキャップデザイン
従来モデルではキャップレスのスチールホイールを履かせていたオーナーもいましたが、新型の「クレアティフ」グレードでは、商用車っぽいハーフキャップの16インチホイールが設定されています。チープな雰囲気が逆にイケてます。
【GOD PARTS 06】オーバーヘッドコンソール
頭上にモノを置くというスペース活用術
普通のクルマにはあまり付いていませんが、カングーではおなじみとなっているのが頭上の物入れ。手を伸ばせばスッとモノを取り出せるので重宝します。左右両側はつかめるようになっていて、アシストグリップとして使えます。
【GOD PARTS 06】ヘッドライト
幼かったイメージを大人っぽくするライト
初代と2代目はつぶらな瞳(ライト)だったカングーですが、新型は直線基調のキリッとしたまなざしに変更されました。顔の印象は大人っぽくなり、スポーティでワイド感があって、こちらのほうが好きという方もいるようです。
【GOD PARTS 07】ブラックバンパー
この感じが好き! という人の声が取り入れられた
本来、塗装のされていない黒い樹脂パーツというのは、商用車などでコストを抑えるために採用されるものです。しかし、この野暮ったさが良いというファンの声が取り入れられ、日本にも導入されることになったとか。ルノー首脳部の英断に拍手!
【GOD PARTS 08】パワーユニット
内燃機関モデルに乗れる喜び
新型には今回の1.5lディーゼルのほか、1.3lガソリンエンジンもラインナップされています。電動化がマストとなりつつある欧州ブランドながら、内燃機関を充実させているのはカーマニア的にはウレシイ限りです。