ワールド
2018/3/13 19:40

時速321kmで街を突っ切る! 米デンバーで進む高速輸送システム「Arrivo」

米国ロサンゼルスで開催されたSOLIDWORKS WORLD 2018に目を引くユニークなスタートアップが登壇しました。高速輸送システムを開発する「Arrivo」です。

 

高速輸送システムといえば、起業家イーロン・マスク氏が構想した輸送システム「ハイパーループ」が有名でしょう。ハイパーループは真空のチューブに車両を浮かばせて高速で走らせる超高速輸送システム。構想では時速1000㎞超が想定されています。

 

現在、複数のスタートアップがハイパーループの実現に向けて動いている段階です。その筆頭であるヴァージン・ハイパーループ・ワンはネバダ州に全長536メートルのハイパーループを建設し、走行テストを行っています。

 

しかしながら、ハイパーループはチューブを真空状態に保つことが難しいこと、多大な建設コストが発生すること、車両制御の難易度が高いこと、建設地の確保が難しいことなど多くの課題が山積みで、実現まで時間がかかりそうなのが現状です。

 

また、実際に利用者に「選ばれる」サービスになり得るかどうか疑問符も付いています。現に前述のヴァージン・ハイパーループ・ワンの共同創業者ブローガン・バンブローガン氏は独立して「現実的」な高速輸送システム実現のためにArrivoを立ち上げています。

20180305_kubo09

ブローガン氏はWiredに対してこう語っています。「2つの都市の間を、金属製のチューブに入って低圧下で速く移動したいと思えば、私は飛行機を使います。飛行はスムーズだし、オレンジジュースは無料だし、とても効率的な乗り物ですよ」

 

ブローガン氏の見解は、人々は都市間を跨ぐくらい遠い距離であれば飛行機を利用するだろうし、都市圏内の短い距離ではハイパーループほど速い輸送システムを必要としないというものです。

 

Ariivoは都市圏内の輸送システムを想定しており、チューブで真空状態を作る輸送システム構築は目指していません。その実現にはコスト面、エンジニアリング面でクリアすべき課題が多すぎるためです。

 

Arrivoの構想は一般道に沿ってレールを引き、そのレールに高速で車両を走らせるリニアカーのような高速輸送システムです。ハイパーループ並みの超高速での移動にはなりませんが、それでも最高時速は200マイル(321キロ)ほど。

Arrivoの高速輸送システムでは自動車を乗せることができる車両、貨物を乗せる車両、人を乗せる車両など目的に合わせた車両が用意される予定。

 

Arrivoの車両はレールのみならず一般道も走ることができるように設計されています。なお、この高速輸送システムの設計には3D-CADツールのSOLIDWORKSが活用されているそうです。

20180305_kubo10

ArrivoのエンジニアであるRyan Kraft氏がSOLIDWORKS WORLD 2018で登壇しました。Solidoworksを使うことで設計、製造、テストのプロセスを早めることができ、コストを削減できたなと語っていました。迅速にサービスを展開する必要があるスタートアップにとってこのようなツールは欠かせないでしょう。

 

Arrivoの動きは非常に早く、既に昨年11月にコロラド州交通局との提携が発表されています。2019年にシステムの建設に着工し、2021年には営業開始を目指すとのことです。コロラド州のデンバー空港からデンバー市内までのラッシュ時には車で55分かかる32マイル(51㎞)の道のりがArrivoの高速輸送システムだと9分に短縮される想定とのこと。

 

今後Arrivoは様々な自治体や利用者に受け入れられるのか、また、現実的な高速輸送システムとして機能するのか。その動向から目が離せません。