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2019/7/23 18:00

「オリンピックは途上国のスポーツ環境を変える転機になる」――JICAオフィシャルサポーター高橋尚子さんのマダガスカル訪問(前編)【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」をお届けします。

 

JICAオフィシャルサポーターの高橋尚子さんは6月、アフリカ大陸の東海岸に浮かぶ島国マダガスカルを訪問しました。ラグビーや柔道といった種目でオリンピックを目指す選手を指導する青年海外協力隊員の活動現場を訪れ、「選手たちに夢を与えるため、オリンピック・パラリンピックを目指す選手を支えるため、一生懸命活動していることがすごく伝わってきました」と言います。高橋さんが感じたマダガスカルでのJICAの支援の「今」を2回にわたって紹介します。

 

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↑マダガスカル女子7人制ラグビー代表選手たちと、オリンピックについて話をする高橋さん(中央)

 

団体競技初のオリンピックを目指す女子7人制ラグビー選手に走り方を指導

まず、高橋さんが訪れたのは首都アンタナナリボにあるラグビー場。ここで、女子7人制ラグビー代表選手たちを指導するのは中野祐貴・青年海外協力隊員です。2017年からマダガスカルでラグビーの普及や指導力向上を図るなか、女子7人制ラグビーで2020年の東京オリンピック出場を目指します。マダガスカルはこれまで、団体競技でオリンピックに出場したことはありません。

 

↑女子7人制ラグビー代表チームのコーチを務める中野隊員(中央奥)

 

「朝から頑張って練習をしている姿を見ると、オリンピックへの思いが本気なんだなと伝わってきました」と選手たちに声をかける高橋さん。うまく走れるようになりたいという選手たちからの要望に応え、走り方の指導を行いました。「ももを高く上げて」「腕ふりに気を付けて」と少しアドバイスするだけで、選手たちの走り方が見違えるほど向上し、そのポテンシャルの高さを実感したと言います。目標に向かって意識を持ち、貪欲に練習に取り組むことの大切さも伝えました。

 

↑高橋さんに走り方の指導を受ける選手たち

 

ほとんどの選手は収入を得るため、午前中に練習を終わらせ仕事に向かいます。練習時間は限られ、道具や靴なども不足するという厳しい環境で、ラグビーへの情熱を支えに競技を続けているのが現状です。

 

選手たちと交流しながら、「スポーツが一つの職業として、生計を立てるような形でまだ根付いていないなか、オリンピックを目指すことで、その先を切り開くことができるという期待がすごく大きいことがわかりました」と高橋さんは言います。「オリンピックに参加して、注目を浴び、国の期待を背負うことによって、その国のスポーツの在り方や取り巻く環境が打破できる可能性がある、という途上国のオリンピック参加の意義の大きさを改めてマダガスカルで感じました」。

 

↑高橋さんとマダガスカルでの活動について話をする中野隊員(左)

 

中野隊員は、競技レベルの向上に向け、代表選手たちに国際試合の機会をつくりたいと奮闘し、自身の大学時代のラグビーコーチに相談して6月末には岐阜県郡上市(注)への遠征も実現させました。自分の故郷である岐阜がマダガスカルを応援してくれることはすごくうれしいですと、高橋さんも選手たちのこれからの活躍を大いに期待します。

 

オリンピック出場をかけ、選手たちは10月に開催されるアフリカ予選に挑みます。

 

(注)中野隊員は、岐阜県郡上市が東京オリンピックのマダガスカル選手団のホストタウンとなる橋渡し役も務めました。

 

「スポーツを楽しむ」、その原点を再確認

2018年からマダガスカルの柔道連盟に所属し、街中の競技場の一角で柔道を教える井手龍豪隊員のもとには、毎日、子供から大人まで大勢がやってきて稽古に励んでいます。

 

高橋さんが柔道場を訪れたとき、井手隊員は視覚障害のある選手たちを指導していました。「選手たちには世界で戦える素質がある」と言う井手隊員。2024年のパリ・パラリンピックを目指します。井手隊員からは柔道の技術だけではなく、礼儀など教わることが多いという選手たちは、「将来は子どもたちに柔道を教えたい」と高橋さんに夢を教えてくれました。

 

↑(左)視覚障害のある柔道選手に声を掛ける高橋さん、中央が井手隊員。 (右)柔道の指導をする井手隊員

 

技術の向上だけでなく、スポーツを楽しむ気持ちを忘れないことの大切さが、ここで改めてわかりましたという井手隊員の言葉に、高橋さんは「レベル、言葉の違い、すべてを乗り越えて、その場に一緒にいることで楽しめる、同じ思いになれる、そんなスポーツの原点を私も感じることができました」と語ります。

 

「隊員のみなさんが自分自身に問いかけたり、迷ったり、いろいろな思いをする中で成長する姿を感じることができました」。高橋さんは、必死に生きてきた現役時代の自分と隊員の姿を重ね合わせ、「隊員として学んだことはこの先の人生でずっと生きてくる貴重な経験になると期待します」と奮闘する隊員たちにエールを送りました。

 

↑マダガスカルの柔道選手や関係者たちと一緒に

 

(後編に続く)

 

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