最近オーストラリアでは、レゴの売り上げが急激に伸びています。その背景にあるのは今年4〜5月にテレビ放送されたコンペ「レゴ・マスターズ」。これはペアを組んで出場し、テーマに沿ってレゴ作品を制作してその出来栄えを競うもので、勝ち進むためにはかなりの想像力が求められます。しかし、このコンペに参加するのはなんと子どもではなく大人。デジタルに浸りきった人々の生活に新風を呼ぶものとしてレゴが注目されています。
「レゴ・マスターズ」という番組は、成人を対象にしたレゴの創作コンペです。友人、夫婦、親子、同僚など二人一組でチームとなり、毎回出されるテーマに沿って作品を制作して判定を仰ぎます。3週間連続の勝ち抜き戦で勝者を決定し、優勝したチームには高額の賞金が授与。作品の判定は、レゴ社認定のプロビルダーであるライアン・マックノート氏と、レゴ社の担当者によって行われました。
1つの作品を作るのに10時間以上を要する場合もあり、放送されたものはすべて録画・編集されたものです。4月28日に放送された初回では、ほかのテレビ番組を押さえて1位の視聴率を獲得し、その後も最終回まで上位3位以内の地位を守りました。この人気の高さから、すでに来年度の放送も決定しています。
よかったのは視聴率だけではありません。5月10日付けのザ・シドニー・モーニング・ヘラルドによると、レゴ・マスターズの放送が始まると、オークションサイトeBayではレゴの売り上げが89%もの伸びを見せたそう。いくつかの実店舗でもレゴの売り上げに急激な伸びがあったことが報告されています。
レゴ・マスターズが人気を集めた要因のひとつとして、コンペで出されるテーマが斬新で難易度が高いものだったことが挙げられます。実際に出されたテーマには、自転車やバイオリン、タイプライターなどが半分に切られ、切り取られた部分を自分なりのストーリーを考えてレゴで制作するというものがありました。前半分がない自転車を与えられたチームが作ったのは、下半身が自転車になっているドラゴン。また、半分に切ったバイオリンという課題を与えられたチームは、切り取られた部分の一部を再現し、そのバイオリンを弾いている人を作りました。技術や経験だけでなく、想像力も重要なんですね。
今回優勝したチームの作品は、ギリシャ神話の海神「ポセイドン」をテーマにしたものでした(画像下)。その競技時間はなんと28時間! 荒れ狂う海を航海する船を巨大海ヘビが攻撃しようとするところにポセイドンが海中から現れたシーンをいきいきと再現。この作品は創造性はもちろんのこと、レゴの使い方も高く評価されました。優勝した2人は子どもの頃からレゴで遊ぶのが好きで、大人になってからも趣味として続けていたそう。
番組が用意したレゴの種類の多さにも圧倒されます。ブリックのサイズや形は多種多様で、人間の表情や洋服、帽子などの細かい部分まで表現できるようになっていました。また「レゴ・サイエンス・テクノロジー」シリーズが提供するモーターやシリンダーなども使うことができたおかげで、参加者たちはより高度な作品を生み出すことができるようになっていたんですね。
デジタルの遊びが普及した現在、オーストラリアで放送されたレゴ・マスターズは、人間が本来持っている創作の喜びをうまく刺激しており、その結果、レジャーの世界に新風を呼んでいます。来年はどんな作品が見れるのか、いまから楽しみです。