最近、ロシアである家電量販店チェーンが人気を博しています。「入店から購入までたった5分! 」という宣伝文句がこのお店の売り。最小限の手間と時間で買い物ができるシステムを引っ提げてロシア国内で拡大している「シティリンク」を紹介しましょう。
シティリンクの店舗に入るとまず目を引くのは、数台の巨大な携帯画面のような機械です(上の画像)。この端末で注文するとレシートが出てくるので、それを持って隣の窓口で支払い、商品引き渡し場所で倉庫から買ったものを出してもらいます。支払いから商品を受け取るまでの所要時間は約5分。とても早く買い物が終わります。店頭端末での注文は、余計なコミュニケーションをとりたくない人のニーズに応えた格好と言えるでしょう。また、端末のおかげで人件費を削減することもでき、その結果、シティリンクは商品価格を下げることもできました。
端末の使い方はとてもシンプルで、顧客は事前にウェブサイトで見た商品を店頭端末で簡単に発見することができます。もちろん、注文方法や操作方法がわからない顧客のために、各店舗には注文の仕方や購入方法を説明する従業員がいる一方、商品を実際に触って使用感を試したい人のためのスペースも完備されています。
シティリンクはオンラインディスカウント家電量販店として、現在ロシアの330以上の都市に展開。2007年に設立し、2015年にはフォーブス誌「ロシアのTOP-20オンラインストア」で2位を獲得しています。
創業時から、この店頭の端末で商品を購入するシステムはありました。しかし当時ロシアではまだオンライン決済やクレジットカードがあまり普及しておらず、利用者は少ない状況でした。その後2012年頃から利用者が急増し、シティリンクは店舗数を増やすことにします。時代がやっとこのシステムに追いついたとも言えますね。
オンラインショッピングサービスが普及した今日、実店舗で直接購入をするシティリンクが成功した背景には何があるのでしょうか? 文化的には、多くのロシア人は家電などを購入するとき、実際に製品を触ってみてから購入するかどうかを決めます。オンラインショッピングでも事前の支払いは好まれません。ロシア人はまだオンライン決済取引を完全に信頼しておらず、その場で支払いをする古典的な方法を好む傾向にあります。
だからといって、多くの忙しいロシア人は実店舗での買い物に長い時間をかけたいわけでもありません。上述したように、シティリンク店舗での買い物なら、注文・支払い・受け取りが数歩以内で完了します。お客さんは家でウェブサイトを見て商品の目星をつけ、口コミを調べた後、シティリンク店頭にてオンラインショップ同様の低価格で購入することができるというのは確かに合理的ですね。
そのほかにも、シティリンクにはロイヤルティプログラムがあり、会員には購入金額に応じてポイントが貯まるシステムや、特別なクラブオークションへの参加権が付与されるなどの特典があります。また、新店舗オープン時の3日間に渡り行われる「店内1ルーブル(約1.7円)均一」も大好評。トースターやヘアドライヤー、ジューサーなど幅広い商品がほとんど無料のような価格で購入できるとあって、毎回長蛇の列ができています(わざわざ遠方から来る人もいるそう)。
実店舗とeコマースのそれぞれの良さをうまく融合しているように見えるシティリンク。その仕組みは日本人にも受けるかもしれませんね。ドイツのディスカウントストア・Aldiのように、シティリンクもほかの国に進出することはあるのでしょうか? 要注目です。