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2019/10/28 19:00

予想外の結末になるか? 映画の「ヒット予測AI」は諸刃の剣

映画の作り手なら、誰だって「一人でも多くの人に作品を見てもらいたい」と思いながら作品作りに励むでしょう。そんなときに、これから作る映画がヒットするかどうか分かったら、きっと助かりますよね。

 

そこで本稿では、AIを活用して映画のヒットを予想するモデルについてご紹介しましょう。将来は映画製作の場面にAIを導入して、その作品がヒットするものか、そうでないか判断できるようになるかもしれません。

 

4万2000以上の作品を学習

映画はヒットすれば大きな収入をもたらすものですが、映画製作費には莫大な金額がかかる場合もあり、リスクの高いビジネスとも言えます。予告編ムービーや映画のレビュー、SNSでの反応などで、ヒットの可能性について予測できるかもしれませんが、映画製作に取り掛かる前にそれがわかることが、ビジネス面でも大切とも言えます。

 

そこでAIを使い映画作品のヒットの可能性について予測するモデルを発表したのが、韓国の成均館(ソンギュングァン)大学校の研究者です。彼らは、4万2000以上の映画作品について、ディープラーニング(深層学習技術)で過去の映画作品についてデータを学習させました。映画のストーリーや登場人物などをまとめたサイト「CMU Movie Summary Corpus」のデータを用いると同時に、映画のレビューを紹介するアメリカのサイト「Rotten Tomatoes」のランキング結果でスコアが75以上ならヒット作、60以下ならそうではなかったとみなしました。こうして、これまでに公開された映画作品とその結果を学習して、映画のヒットの可能性を予測するモデルを発表したのです。

 

このAIモデルは作品のあらすじやプロットのみを使って、映画の売れ行きを早い段階で予測することができるとのこと。研究者たちによると、ホラーやコメディ映画で批評家から酷評されそうな作品を認識するのには役立つみたいです。しかし現段階では、ある作品が将来成功するかどうかを予測するのは、まだそれほど効率的にできないそう。映画は限られた期間の間に、限られた場所で公開されるもののため、ヒットの有無を予測するにはさらに複雑な条件となると専門家も言います。

 

一方で、映画業界では、ヒットしやすい内容かそうでないかをAIやアルゴリズムを使って予測するという手法が増えてきている様子。アメリカの大手映画会社「20世紀フォックス」は、これまでの成功事例を分析して、ストーリーから人々が見たいと思う内容かどうかを判断する機械学習テクノロジーを映画製作の現場で活用していることを2018年に明らかにしています。

 

AIや機械だけでヒットを正確にあてることは難しいかもしれませんが、映画製作の場面では、これらのテクノロジーが1つの指標として活用されるのは当たり前のことになっていくのかもしれません。ただそうなると、製作される作品がどれも同じようなワンパターン化したストーリーになるなんて心配もあるかもしれません。作り手側の好奇心や野望、感覚と、このようなテクノロジーを上手に組み合わせて、映画作りが行われていくことが大切になるのかもしれませんね。

 

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