洋服やタオル、シーツなどの汚れを落として清潔にしてくれる洗濯機。しかし、その洗濯機が悪い菌をばらまいていたとしたら……。新生児も扱うドイツの小児科病院で、ある菌が繰り返し子どもたちに感染していることがわかり、菌が広まる原因はどうやら院内の洗濯機にあることが分かったのです。いったい洗濯機のどこに原因があったのでしょうか?
新生児も扱うドイツの小児科病院で、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)という薬剤耐性菌が子どもたちに繰り返し感染を起こしていたことが、今年9月に発表された論文のなかで明らかとなりました。そしてこの病原体が広まった原因を探ったところ、病院内にあった洗濯機を除去したときにだけ感染がなくなったことから、洗濯機がこの菌の発生源だったと判明したのです。
通常ドイツの病院では衛生ガイドラインにしたがって高温での洗濯と消毒も行われますが、この病院では一般的な家庭用の洗濯機が使用されていたそう。そのため、病院でこのような菌の検出がされたのはとても稀なケースと言われていますが、より重要なのは今回の出来事が一般的な家庭にある洗濯機でも同様の菌が広まる可能性があることを示唆していることです。
低温水のデメリット
家庭用の洗濯機では、エネルギー節制の面からも通常、お湯ではなく水が使われ、お湯が使われる場合であってもせいぜい60度以下でしょう。するとそのような低温だと洗濯機のなかで病原菌が残留する可能性があるのです。
小児科病院で菌が見つかった感染経路は、洗濯機の洗浄工程終了後またはすすぎ終了後に排水溝上部に残った水から感染したものと突き止められました(病原菌そのものがどうやって洗濯機のなかに入ったのかは不明)。そのため、この論文では洗濯機のなかに水が残ってしまうと、そこで病原菌が繁殖し衣服についてしまう可能性があり、洗濯機の設計や洗浄工程を見直す必要があるとも述べています。
家庭用の洗濯機では病院のように高温で洗濯することもできません。そのため、様々な菌が繁殖する可能性があります。また、薬剤などに対する耐性がある菌が増えている恐れもあるでしょう。日本の家庭用洗濯機では、選択槽に黒カビが発生しにくいように自動で洗濯槽を洗浄する機能がついたものもあります。洗濯機自体がカビや病原菌の温床とならないためにも、メーカーが推奨するような洗濯槽の定期的なお手入れのほか、カビを増やさないために適切な洗剤量を守ったり、感染症にかかった際には洗濯においても万全の対策を講じたりすることが大切でしょう。