外出中1人きりになって一息入れることができる場所といえば、トイレの個室くらいしかありませんよね? そんなプライベートな空間は居心地が良いと、用を足すだけでなく、スマホを見たりとつい長く居座りがちです。そこでイギリスで開発されたのが、「長居できないトイレ」。一体どんなトイレなのでしょうか?
トイレで何をする?
長居できないトイレのご紹介の前に、トイレで人々がどんなことをしているのか見てみましょう。TOTOが2018年にオフィスで働く人1041名を対象に行った調査によると、「オフィストイレの大便器ブースで、用足しや身づくろい以外でしたことがある行為は?」と聞いた結果、以下のような回答が挙げられました。
- スマホや携帯電話を見る: 39%
- 一休みする、休憩する: 23%
- 考えことをする: 20%
- 心を落ち着ける: 19%
- ストレッチする: 12%
- 寝る: 7%
また男性ワーカーへ「小用のみでも洋式便器を使いますか?」と聞いたところ、「よく使用する」「たまに使用する」をあわせると57%もいることが判明。その理由として、「洋式便器の方が用を足しやすい」のほか、「座りたい」という意見も多くあることがわかりました。
つまり、オフィスで働く人にとってトイレの個室は1人きりで一息つける場所であり、用を足す以外にも、スマホを確認したり休憩したりさまざまな用途で使われているということ。立ち仕事の職場であれば、トイレは腰かけて休憩するという役割も担っているでしょう。
ただ、企業の生産性という視点で考えると、このトイレ休憩は無視できないのかもしれません。イギリスの調査では、人々は用を足すのに必要とされる時間よりも平均で25%長くトイレにこもっていることが判明。従業員のトイレ休憩が長くなることで、年間40億ポンド(約5700億円)ものコストになるそうです。
前傾は一長一短
そこでイギリスのスタンダード・トイレットという企業が開発したのが、4種類の長居できないトイレ。一般的なトイレは人が座る部分は床と水平になっていますが、この特許取得中のトイレでは角度をつけることができ(8~13度の傾きが最適とのこと)、やや前傾ぎみに腰掛けることになります。これによって、長くトイレに座っていると両足に体重がかかり、長く座っているのがつらくなり、自然とトイレの滞在時間が短くなるという設計。商業施設や公共の施設などにこのトイレが導入されることで、トイレにできる長蛇の列を短くできるのが長所の1つです。
ただ「このトイレがもしも自分のオフィスに設置されたら、困ってしまう」と思う方も少なくないはず。先の日本の調査でも、「トイレで気分を切り替えたいと感じることがある」と答えた人は5割以上にもなり、女性特有の体調不良の経験がある女性ワーカーの69%が「トイレ・化粧室で体調を整えている」と答えたこともわかりました。トイレの前に行列ができてしまう商業施設などでは長居できないトイレは有効なのかもしれませんが、オフィスへの導入にはさらなる検討が必要なのかもしれません。