ここからは、イスラエルで注目を集めているAI分野のスタートアップ2社を紹介しましょう。
① 膨大な日常データを迅速に集計・解析しインサイトを発見する「SparkBeyond」
「SparkBeyond」は、データ内の複雑なパターンを発見することができるAI機能を備えたリサーチエンジンを構築しています。地球、経済、天気、人口統計など、多様かつ膨大なデータソースに接続し、ビジネスにおける課題を解決するために最適なインサイト(洞察)を提供することが主な役割。
エンジンをすばやく動かすためのアルゴリズムが核となっていて、質問や課題に対して、いかに迅速に答えを返すかという部分に特化していることが特徴です。さらに適応型学習のアルゴリズムにより、データの変化に伴って答えを自動的に調整することも可能。例えば医療系の質問をした場合、SparkBeyondのAIエンジンは「こういった症状ならば何%の確率でAという病気に、何%の確率でBという病気にかかっている可能性がある」といった答えを導き出してくれます。
また、航空機やドローンといったモビリティ系の課題に対しては、気象データなどをもとに飛行ルートの効率性を改善。飛行ルートが短くてもビル風などでエネルギー効率が落ちたり、往路と復路では同じルートでも効率が変わったりするため、AIがデータを集計してエネルギー効率がもっともよいルートを選び出してくれるのです。
Googleにとっても困難なこのようなAI機能を、SparkBeyondは小売りや流通、医療、モビリティなどさまざまな領域で実施しようとしています。
② データ量の移り変わりや流れを可視化する「Alooma」
Googleが買収したスタートアップ企業「Alooma」は、企業データのクラウドへの移行をサポートし、データを整理してAIエンジンで利用できるようにするサービスを手がけています。IoTなどのデバイスからデータを取得するだけでなく、データ量の流れや移り変わりなどを測定し、それらを可視化することで価値を生み出しています。
例えば、自動車やスマートフォンなど複数の通信が必要なデータ流量を把握することにより、データがどこで遅延しているのか、どこでハッキングされやすいのかを知ることができるようになります。また、何か問題が発生したら、Aloomaは、あるエリアにデータが集中しているためなのか、それとも何か別の理由があるのかということを分析し、問題が起きた原因を可視化します。航空機やドローンについても同様に分析可能。
このようにAI技術などで先行するイスラエルでは、Googleなどグローバル企業の活発な投資が続いています。技術開発における先見性とバックグラウンドがあったことに加え、課題の対処法や新たな発想に独自の視点を持つという国民性がイスラエルをAI分野で強くしました。この業界において同国は今後も大きな影響力を持つと考えられます。