折り紙のように紙を折って、ハサミで一部を切り取ったり切り込みを入れることで、芸術的な模様を作ることができる「切り紙」。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の合同研究チームは、そんな日本の伝統芸能からヒントを得て新しい靴底を開発しました。一見平面に見える靴底なのに、歩き出すとスパイクが飛び出てくるのです。
切り紙の新たな応用
もとはただの紙なのに、一部を切ったり切り込みを入れたりすることで、複雑な模様を作り出したり、ときには立体的にも見せることができるのが「切り紙」です。そのアイデアは、これまでにもサイエンス分野で活用されてきました。例えば、マサチューセッツ工科大学では2018年3月に切り紙スタイルの包帯を開発しています。肘や膝などの関節はよく動かす部位のため、湿布や包帯などをしっかりと固定させるのが難しいのですが、切り紙のように切り込みを入れることによって、より固定しやすい包帯が開発されました。
それと同じように切り紙をヒントに靴底の開発に挑んだのが、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学の合同研究チームです。この研究チームは、正方形や三角形、曲線などさまざまな形と大きさの切り込みをプラスチックやスチール製の靴底に入れ、歩き出すとスパイクが突き出るようなデザインをテストしました。氷や木材、人工芝やビニール製の床などで摩擦力なども計測。その結果、少し凹んだカーブのあるひし形がもっとも摩擦力が強く、スパイクに最適と判明したそう。
さらに、この靴底をスニーカーや冬ブーツなどにつけて、ボランティアによる歩行テストも実施したところ、摩擦力が20~35%高くなることがわかりました。こうして、歩いていないときは平らな靴底なのに、歩くとスパイクが出てくる靴底が生まれたのです。
現在研究チームでは、この靴底を組み込んだ靴を開発するか、もしくは必要なときにだけ靴底に装着するタイプにするか、また別の材質の使用なども検討しているそうです。どちらにしても、簡単にスリップ機能がある靴底に変更できるのなら、滑りやすい雨や雪の日にも便利。特に高齢者の方の転倒防止にも役立つと期待できます。
切り込みが入っているだけの、とてもシンプルな仕組みのこの靴底。このルーツが日本の切り紙にあるとは、日本人としての喜びも感じられるアイテムのひとつとなりそうです。