新型コロナウイルスが世界中で蔓延し、ほとんどの経済活動を休止するロックダウンが世界各国で行われた2020年の春。大気汚染や海洋汚染が軽減されるなど、都市封鎖が思わぬところに影響を及ぼしていることがこれまでに判明していますが、最近では新たに地球の振動も減ったということがベルギーの国立天文台やインペリアル・カレッジ・ロンドンなどの共同研究で明らかとなりました。
研究チームは117か国にある268の地震観測所からデータを収集。地震計は火山など地球内部で生じる振動を捉えるものですが、人々が生活したり街を移動したりすることでも振動は生まれるそうです。そのような人の活動によって生まれる振動はクリスマスや新年、週末や夜間には静まることがわかっています。今回、研究チームが、ロックダウンが行われた2020年3月〜5月のデータとそれ以前のデータを比較して解析した結果、185の観測所で振動の減少が見られました。国別に見てみると、中国では2020年1月後半に、ヨーロッパ各国やほかの国々では3月から4月にかけて振動の減少があったようです。
特に大幅な減少が見られたのは、ニューヨークやシンガポールのような大都市。さらにイギリスのコーンウォールやアメリカのボストンなど大学や学校が多く集まる地域では、学校が休暇となっている時期と比べて20%の振動の減少が見られました。また、ドイツの山地であるブラックフォレスト(シュヴァルツヴァルト)や、ナミビアの都市ルンドゥなどでも振動は減少したそうです。
なかでも50%近くの減少があったのは、観光シーズンとロックダウンが重なった中南米のバルバドス。ロックダウンが始まる数週間前には多くの観光客がバルバドスを離れたことがフライトデータからわかっており、観光客の姿が消えたこととロックダウンが振動の減少につながったと見られます。
人の活動によって生まれる振動が減少したことで、これまで把握できなかった小さな地震などの振動を観測できるようになった場所もあるそう。地震学者にとっては予期せぬ出来事だったかもしれませんが、今後もロックダウンはいろいろな物に影響を与えそうです。