目の前の景色に文字や音声ガイド、CGなどを重ねて表示することができるARゴーグル。ゲーム業界やエンターテイメント業界で活用が進んでいますが、最近ではアメリカの陸軍で軍用犬にARゴーグルを開発しているということが明らかとなりました。犬までARゴーグルを装着する日がやってくるのでしょうか?
ARゴーグルはエンターテイメントの分野でよく使われている技術と思われるかもしれませんが、それだけに限りません。例えば、技術者や作業者への指示やサポートをARゴーグル上で行い、作業の効率化を図ったり、人材不足を補ったりする働きもあります。アメリカ陸軍はそれと同じような目的で軍用犬向けのARゴーグルを開発しているのです。
米軍では2019年、過激派組織ISISの最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者を殺害しました。この作戦で、バグダディ容疑者が自爆ベストを着用しているとみられたことから、送り込まれたのが複数の軍用犬でした。その後、バグダディ容疑者は3人の子どもたちと一緒に自爆しましたが、軍用犬は負傷するだけで済んだそうです。
このように、軍用犬は地雷や爆弾のような危険物があるエリアでの偵察、救援活動などで活躍します。最近、米軍では軍用犬に直接指示を伝える犬用のイヤホンも開発したとも言われていますが、音声の指示だけで軍用犬を適格に動かすことは難しい場合もあるでしょう。そこで、そのような技術の発展系として現在、ARゴーグルの開発が進んでいるのです。
犬の視線をトレーナーが確認して指示
Forbesの報道によると、開発を行っているのはシアトルを拠点とするCommand Sight社。小型の高解像度カメラが内蔵されたARゴーグルは犬の視線をトレーナーに送信し、それによってトレーナーは犬が見ている景色を遠隔で確認することができるようです。また、このゴーグルは左右に動くマークを犬の視界に表示させる機能も持ち、そのポイントを固定させて犬に指示を出すこともできるそう。
このARゴーグルを使った訓練を行うためには、このデバイスに犬だけではなくトレーナーも慣れる必要がありますが、もし効果的に使えるようになれば、実際の特殊作戦が行われる夜間などの環境下での指示出しが容易になると見られています。
ただし、現段階では実用化までにはさまざまな課題があるようです。犬のARゴーグルとPCをケーブルで接続させる必要があったり、小型化と無線送信機を装着する必要もあったり。しかし今後さらなる技術開発が進めば、軍用犬のトレーニングでARゴーグルを使うことも当たり前になるかもしれません。