スポーツの祭典の真っ只中で、連日素晴らしいプレーが生まれてい
【関連記事】この国は変われるかもしれないーー南スーダン陸上選手・アブラハムの大きな転機「国民結束の日」 特別マンガ連載「Running for peace and love」第2回
テニス×バドミントン×卓球
ピックルボールとは、老若男女が楽しめる、テニスとバドミントンと卓球が混ざったような競技です。まだ歴史は浅いですが、アメリカ国内での競技人口は2020年に420万人を超えました。
ピックルボールの起源は1965年まで遡ります。シアトル州のある家庭で、退屈した子どもが父親に「何かおもしろい遊びはない?」と尋ね、父親が試行錯誤の末に道具やルールを考案。こうしてピックルボールは1967年に誕生しましたが、名称は考案者の愛犬にちなんでつけられたそう。アメリカのスポーツ&フィットネス産業協会(SFIA)が2021年2月に発表したレポートによると、2020年の競技人口は前年と比べて21.3%増と大きく成長しています。
ピックルボールは、バトミントンと同じサイズのコート(縦6.1m×横13.4m)で、卓球の約2倍のサイズのラケットと穴が空いたカラフルな樹脂製のボールを使ってプレーします。テニスのように、ネットの高さは一般的に90cmとされており、木製ラケットはラバーを張っていないため、ボールを打つたびに「カーン」と気持ちのよい音がコートに響き渡ります。
プレー形式はシングルスとダブルス。ルールもテニスと似ていますが、サーブはアンダーサーブのみです。レシーブ側はボールをワンバウンドで打ち返し、サーブ側も最初のリターンボールはワンバウンドさせて打たなくてはなりません。得点はサーブ権を持っている側のみに入り、1セット11点で行いますが、10対10になった場合は2点差がつくまで延長。3セットか5セットマッチで行なわれることが一般的です。
【動画】ビックルボールとは?(英語)
人気の秘密は3つの「ちょうどいい」
なぜピックルボールの人気は高まっているのでしょうか? その理由として3つの「ちょうどいい」が考えられます。
1: 始めるのにちょうどいい
ピックルボールのラケットとボールは、約20〜50ドルで販売されています。あとはスポーツシューズさえあればプレーできるので、道具をたくさんそろえる必要がありません。アメリカでは公共の施設であれば、数時間5ドル程度で借りることができます。初期費用やプレー費用が安く抑えられるため、手軽に始めることができます。
また、テニスコート1面を4つに分けると、ピックルボールのコートを4面作ることができるので、最近ではテニス場をピックルボールコートにつくり替えているところもあります。ピックルボールは基本的に屋外でプレーしますが、室内でもできるため、天候に左右されません。上述のようにルールもわかりやすくて簡単。ピックルボールは気楽にスポーツをするのに、ちょうどいいのです。
2: ちょうどいい運動強度
コートが小さいので、走り回り続けなくてもプレーできることもピックルボールの特徴。ボールには穴が空いているため、風の抵抗を受けやすく、強い打球でも速度が弱まり、打ち返しやすい設計になっています。このように、程よい運動強度(運動をするときに身体にかかる負担)でケガをする可能性も少ないので、ピックルボールは老若男女が楽しめるスポーツなのです。アメリカでは、リタイヤしたシニア層に圧倒的な人気を集めています。
その一方、近年では、ケガのためにテニスからピックルボールへ転向するプレイヤーも現れており、ゲームのレベルが向上するとともに、プロ競技人口も増えてきています。2019年には賞金総額が約1500万円の大会も行われ、テレビでも放映されるなど、アメリカで競技人口は着実に増えています。
3: ちょうどいい距離感
ピックルボールは野球のように道具が少なく、ルールが簡単であるものの、楽しむためには技術や作戦、連携が必要です。ダブルスであれば、プレー中の雑談を含めてコミュニケーションを取りやすく、「ペアの人と手が届くか届かないか」という距離感が、物理的にも精神的にもちょうどいいと評判です。
このような理由で競技人口を増やしているピックルボールですが、まだまだそこで終わらないのがアメリカ人。仲間とスポーツをもっと楽しむために考え出されたのが「チキン・アンド・ピックル」。レストランとバーを兼ね備えた、この屋内外のピックルボール用レジャー施設は、事前予約をすれば手ぶらで行ってプレーすることができるほか、定期的にレッスンや大会も行われています。2016年にミズーリ州に1号店がオープンし、テレビで取り上げられるほどの大盛況となり、2021年中には6店舗目を開く予定とのこと。
経済的にも、身体的にも、心理的にも「ちょうどいい」ピックルボール。三拍子揃ったこのスポーツの人気は、すでに日本にも及んでいます。東京には日本ピックルボール協会があり、レッスンや大会が行われています。日本の競技人口はまだ数千人のようですが、老若男女に愛される手軽な「米国製スポーツ」として、今後は日本でも普及するかもしれません。
【関連記事】この国は変われるかもしれないーー南スーダン陸上選手・アブラハムの大きな転機「国民結束の日」 特別マンガ連載「Running for peace and love」第2回