冷房や暖房の温度設定で夫婦ゲンカが勃発……。家庭の事情や性格の違いはさておき、その一因として、女性は寒がりで男性は暑がりということが挙げられます。実は、この性別による温度の感じ方の違いは人間に限った話ではありません。鳥類にも同じ傾向があり、メスは進化上の理由で寒がりになったようです。
メスは寒がりで、オスは暑がり。人間と同じように、鳥類のそんな傾向を突き止めたのは、イスラエルのテルアビブ大学でコウモリの研究を行っているレビン博士です。博士は、コウモリが繁殖期になるとメスとオスが別れ、メスは温暖な地域で出産し子育てを行う一方、オスは涼しい場所に生息することを発見しました。
このことに興味を持ったレビン博士は同じような研究論文を探したところ、コウモリ以外でも、多くの鳥類や哺乳類で同じような傾向が観察されていることがわかったのです。
そこで今度は、1981年から2018年の約40年間でイスラエルで収集した情報を参考に、13種類の渡り鳥と18種類のコウモリ、合計1万1000羽以上について個体調査を実施しました。
その結果、観察を行った鳥類とコウモリの全般で、オスがメスより低い温度の場所を好んでいることが明らかとなったのです。しかも繁殖期にメスとオスが別で生活するのは、この気温の好みの違いが原因だといいます。
女性が寒がりなのは、人間に特有のことではなく、鳥類でも同じような傾向が見られるとわかった今回の研究。この結果を発表した研究チームは、メスが寒がりになった理由について次のように推測しています。
「メスとオスで好む温度が異なることで、繁殖期に別々に行動するようになります。オスは弱い子どもを攻撃する可能性がありますが、子育て中のメスがオスと分離されれば、そのようなリスクが軽減され、さらに食べ物などをめぐった争いが少なくなるでしょう。また哺乳類のメスは、体温調節機能が不十分な子どもを自分の体温で守らなければならないため、温暖な気候を好むようになったのではないかと考えられます」
つまり、進化の過程でメスは子どもを守るために、オスと異なる温度を好むようになっていったのではないかということ。エアコンの温度設定で見られるような人間の男女間の温度感覚の違いには、このような理由もあるのかもしれません。
【出典】Magory Cohen, T., Kiat, Y., Sharon, H., & Levin, E. (2021). An alternative hypothesis for the evolution of sexual segregation in endotherms. Global Ecology and Biogeography, 00, 1– 11. https://doi.org/10.1111/geb.13393