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2021/11/22 6:00

クリスマスツリーの代わりにサステナビリティ? 英国の最新クリスマス事情

ブレグジット(EU離脱)の影響がじわじわと日常生活に現れている英国では、ガソリン不足やスーパーでの在庫不足などによりパニック買いが発生しています。待ちに待ったクリスマスに必要なモミの木や七面鳥の入手も難しく、価格の高騰も免れそうにありません。コロナ禍とブレグジットの影響に揺れる英国のクリスマスについて現地からレポートします。

 

今年の冬に不足する品物は……

↑ All I want for Christmas is……クリスマスツリー

 

コロナ禍のロックダウン中にブレグジットが完了してから、もうすぐ1年が経とうとしています。2021年夏にようやくロックダウンが解除され、コロナの新規感染者数は連日数万人と依然としてかなり多いものの、ワクチン普及のおかげで危機感が薄まり、日常生活が戻ってきたように思えます。しかし、ロックダウン解除と同じ時期から、全国でスーパーの商品棚が一部空になる現象が見られるようになりました。また、9月から10月にかけてイギリス各地でガソリン輸送が追いつかずにパニック買いが発生し、ガゾリンスタンドには長蛇の列ができました。

 

このような現象が頻発しているのは、ブレグジットによりEU出身の輸送ドライバー数が激減し、物流に混乱が起きていることが原因です。英国政府は運輸サポートのために軍を出動させ、EU籍のトラック運転手や食品加工業者に臨時の短期労働ビザを発給するなどの対応に追われています。配管工にもEU出身者が多く、ボイラーなど温水・暖房まわりの設置や修理の予約が取りづらくなりました。イギリス国民の生活は、EU労働者に支えられていたといえるでしょう。

 

メディアは「今冬に不足する品物リスト」について連日報じていますが、その代表格は、この時期に欠かせないクリスマスツリー用のモミの木と七面鳥。どちらも欧州からの輸入に頼っている割合が高く、品薄のために値上がりすると見られています。国産肉も働き手不足により品薄気味。さらに、ローストポテト用の国産じゃがいもが冷夏のせいで不作。輸送ドライバー不足が続けば、酒類も不足する可能性があります。

 

このような状況下で、長期間の我慢を強いられたうえ、再び「ないない尽くし」のクリスマスは避けたいという人々の焦りから、2021年は10月時点で冷凍七面鳥が売り切れになるスーパーが続出。また、買い物客がポッカリ空いた冷凍棚を見てパニックを起こさないように、店舗側はサラダオイルやソース、マヨネーズを代わりに並べるなど対応に追われています。

 

昨年のクリスマスはロックダウンが急に発令され、ガッカリした英国民ですが、「今年こそは家族団らんのクリスマス・ディナーを」と待ち望んでいます。しかし、物流量が増えるこの時期から年末は、コロナ感染による働き手の自主隔離とEUからの労働力不足のダブルパンチにより、混乱はなかなか収束しそうにありません。

 

プレゼントは「サステナブル」

↑英国定番のクリスマス柄セーターもサステナブルに

 

クリスマスプレゼントのトレンドに目を向けると、サステナビリティが人気です。英国では、11月末のブラックフライデーやサイバーマンデーに合わせてギフト・ショッピングをする人が多いのですが、ある調査によると、同国の消費者の約7割がサステナビリティや気候変動への取り組みを意識したものに注目しているとのこと。

 

2021年、G7首脳会議と国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催国となった英国では、特に若い世代で「サステナブルではないものはクールではない」という意識が、いままで以上に拡大しています。この流れを受け、食品からファッションまで、幅広い分野の小売業者が持続可能性を意識した商品を取り揃えており、リサイクルガラスから作られたワイングラス、くり返し使える蜜蝋ラップ、自然に優しいコスメなどが注目を集めています。

 

それと同時に、再生紙を利用したラッピングペーパーも増えており、高級ジュエリー分野では、ギフト包装にリサイクル素材を採用したブランドがメディアでも取り上げられています。

 

また、英国ではこの時期、サンタクロースやトナカイなど、あえて子どもっぽい柄や少しダサめのセーターを着るのが、英国の老若男女の「お約束」となっていますが、そんな定番のクリスマス柄セーターにも、サステナブル版が登場しました。老舗のニットメーカー「ジャック・マスターズ」は、リサイクル・コットンとペットボトル24本分を原材料にした2021年限定版クリスマスジャンパーを発売。このセーターは王冠や議会法、ウェストミンスター宮殿などのモチーフを“かわいらしく”あしらっており、ビッグベンがある国会議事堂と同社のオンラインショップで販売されています。

 

日本でいえばお正月に相当する英国のクリスマス。コロナ禍とブレグジットのダブルパンチにもめげず、「今年こそホリデーシーズンを目一杯楽しもう」と買い物やパーティーの企画に余念のない英国民の様子を見ていると、逆境の中でも楽しむことを忘れない英国人のしたたかさとクリスマスへの情熱を実感します。

 

執筆者/ネモ・ロバーツ(ジャーナリスト兼アーティスト)

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