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2021/12/21 19:30

コロナ禍でカタチを変える、ロシアの「クリスマス行事」

現在、欧米諸国はホリデーシーズンに入りつつありますが、新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、クリスマスにも影響が及んでいる模様です。 ロシアでは、12月中旬から翌年1月末まで「ヨールカ」という子ども向けのクリスマスパーティーが開催されますが、他の物事と同じように、この伝統的なお祭りもコロナ禍で形を変えつつあります。

↑ロシアの子どもたちはヨールカでクリスマスを祝うが、コロナ禍でその形も変わりつつある

 

ヨールカは、主に子どもを対象にした年末年始のお祭り。ヨールカではクラシックコンサートや演劇、朗読劇、人形劇などが行われます。クリスマス一色の会場にはおもちゃの屋台やお菓子屋さんがあり、ショーが始まるまで、さまざまな遊びやコンテストが行われます。もともとヨールカ(yolka)というロシア語は「小さなモミの木」を指し、切り出して飾り付けたモミの木の周りに子どもたちが集まって、新年の幸福や豊作などを祈る風習があります。

 

2020年はコロナ禍により、ヨールカはリアルで開催されませんでしたが、その代わりに登場したのが、オンライン版ヨールカ。この伝統的なクリスマス行事はどのようにテクノロジーを取り入れているのでしょうか? 昨年、ロシア中で話題になったオンライン版ヨールカをご紹介しましょう。

 

1: 国内最大の映画撮影スタジオのヨールカ

ロシア最大の映画撮影スタジオ・モスフィルムのヨールカは、専属俳優たちの演技の質の高さと脚本に人気があります。今までは現地でしか見られなかった一流俳優たちの演劇もオンラインで視聴することができるようになりました。料金は1250ルーブル(約1940円※)。オンライン決済後に郵送で届くヨールカの箱には、家族で遊べるクリスマスのボードゲーム、スライム、シャボン玉、クリスマスのお菓子、そしてオンラインで劇を見るためのパスワードが書いてあるカードが入っています。

※1ルーブル=約1.5円で換算(2021年12月16日時点。以下同様)

 

2: 顔交換アプリを取り入れたヨールカ

2020年のオンライン版ヨールカの中でも一際注目を集めたのが、顔交換アプリを取り入れた、クロークスシティ・コンサートホールのヨールカ。子どもの写真をアップロードするとその顔が主人公の顔に反映され、子ども自身が物語の主人公となって、サンタクロースと謎を解く冒険ができます。料金は790ルーブル(約1225円)で、デバイスとインターネットさえあればどこからでも参加可能。

 

3: サンタと協力してプレゼントを取り返すヨールカ

オンラインヨールカドットコムが提供する限定公開のショーは、視聴者がサンタを含む登場人物と力を合わせて、盗まれたプレゼントを取り返すというストーリー。子どもたちは視聴中に起きるダンスバトルや歌バトルに参加することで、プレゼントを取り戻すための手がかりを得ることができます。430ルーブル(約667円)のチケット料金には、40分のクリスマスショービデオ、関連オンラインゲーム3つ、クリスマス工作のビデオ、ショーの中で行われるダンスと歌の歌詞指導、サンタさんから子どもへの個別ビデオメッセージが含まれています。

 

4: ロシアの子どもたちが憧れる「クレムリンのヨールカ」

モスクワのクレムリンにはロシア大統領府があり、大統領府がこのクレムリンヨールカのスポンサーになっています。チケットは、4300~6300ルーブル(約6670円~約9770円)と高め。豪華でパフォーマンスも一流とあって、このヨールカは多くの子どもが憧れる、まさにロシアで一番有名なヨールカです。2020年のクリスマスシーズンは新型コロナウイルスの影響で、このヨールカも開催の危機に立たされましたが、ロシア政府はこのヨールカをオンラインで販売するのではなく、全国民へのプレゼントとして12月31日にテレビで放映。それまでクレムリンのヨールカを夢でしか見ることができなかった地方の子どもたちにも、ショーの様子が届けられ、ロシア中の子どもたちが大喜びしました。

↑ヨールカの様子

 

会場でしか味わえない雰囲気はオンラインで伝わりませんが、オンライン版ヨールカにはメリットがたくさんあります。新型コロナウイルスの感染を気にせずに自宅から視聴できたり、ヨールカ会場への移動時間がなくなったり、現地周辺の駐車場が混雑しなかったり。また近年では、大企業がヨールカのスポンサーになる傾向があり、規模・予算・品質が上がっています。2021年もオンライン版ヨールカは、ロシア中の子どもたちに素敵な思い出を届けてくれるでしょう。