シャボン玉は空中をゆらゆらと漂っているかと思うと、儚く消えてしまうもの。しかし、最近の研究で、465日間も割れない「シャボン玉」が開発されました。手に持っても割れないそうですが、その正体は何なのでしょうか?
1年以上も割れない「シャボン玉」の泡を作り出したのは、フランスのリール大学の物理学者チーム。できるだけ長い間割れない気泡を作るために、この研究チームは「ガスマーブル」と呼ばれる種類の気泡について研究を行いました。ガスマーブルは、プラスチックビーズを含む液体溶液から作られた気泡で、プラスチックビーズが泡の表面に集まるため、手で持ったり床に転がしたりできるほど強度が高くなります。
今回の実験で研究チームは2種類のガスマーブルを用意し、どのくらい長持ちするかを検証しました。2種類のうち1つは水性のガスマーブル。もう1つは、水とグリセリンをもとにしたガスマーブルです。比較のために一般的なシャボン玉も作り、合計3つの泡を観察しました。
すると、従来のシャボン玉は長くても1分ほどで破裂しましたが、水溶性ガスマーブルは6~60分ほど泡の状態をキープ。そして、最も長く持ったのが水とグリセロールのガスマーブルで、少なくとも101日間は持ち、最長で465日間も割れずにいたのです。
水とグリセロールを混ぜたガスマーブルが1年以上も割れずにいた理由は、グリセロールを加えたから。シャボン玉などの気泡がすぐに割れてしまうのは、重力によって気泡の上部の膜が薄くなったり、水分が蒸発したり、空気中に存在する非常に小さなホコリやチリが付着したりするから。しかし、グリセロールは水との親和性が高く、吸湿性があるため、大気中から水分を吸収して蒸発した水分を補うことが可能。しかも、ガスマーブルのプラスチックビーズが、気泡上部が重力によって薄くなるのを防いだのです。この2つの効果によって、ガスマーブルの寿命が驚くほど延びたのでした。
今回の研究によって、まったく新しい種類の物質を生み出すことができるかもしれない、と同研究チームは述べています。
【出典】Roux, A., Duchesne, A., & Baudoin. (2022). Everlasting bubbles and liquid films resisting drainage, evaporation, and nuclei-induced bursting. Physical Review Fluids, 7(1), L011601. https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevFluids.7.L011601