乗り物の機内アナウンスやショーなどでよく耳にする「レディース・アンド・ジェントルメン」という呼びかけ。このお馴染みのフレーズの使用が、いま世界各国で廃止されています。この言葉はどうなるのでしょうか?
「レディース&ジェントルメン(ladies and gentlemen)」は、「皆さん」と人々に呼びかけるときに使われる礼儀正しい(正しかった?)言葉。でも直訳すれば「淑女と紳士の皆さん」となり、ジェンダーへの意識が高まるなか、「女性でも男性でもないと感じている人に疎外感を与えかねない」と、この言葉を敬遠する動きが出てきているのです。
先日、「レディース&ジェントルメン」という呼びかけの廃止を発表したのは、ドイツのTUI航空。すべてのお客様を歓迎するという意味をこめて、今後の機内アナウンスは「Good morning, passengers(乗客の皆様、おはようございます)」を使うよう、パイロットや客室常務員に指示しました。
この動きは、以前から航空会社の間で起きています。最初に「レディース&ジェントルメン」以外の挨拶を導入したのは、エア・カナダ。同社は2019年に「everyone(皆様)」の言葉の使用を発表しています。そのほかにも、イギリス最大の航空会社ブリティッシュ・エアウェイズ、ドイツのルフトハンザ、マルタのマルタ航空などが、この呼びかけを廃止。
同様に、日本航空は2020年9月に、空港や機内における英語アナウンスでの「レディース&ジェントルメン」の使用をやめ、同年10月から「Attention all passengers(乗客の皆様)」を使っているのです。ちなみに日本語でのアナウンスに使われる言葉は、もともとジェンダーニュートラルであることから、変更していないそう。
ディズニーランドも
航空会社以外でも、「レディース&ジェントルメン」をやめる動きが出ています。その一つが、世界的エンターテイメント企業のディズニー。世界各国にあるディズニーパークでは、「レディース&ジェントルメン、ボーイズ&ガールズ」の代わりに、「Hello everyone(皆さん、こんにちは)」や「Hello friends(親愛なる皆さん、こんにちは)」を使うことを表明しました。
東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでも2021年3月より、パレードやショー、アトラクションなどのアナウンスで変更しています。
さらに、「ディズニープリンセスに変身できる」とうたい、子どもたちにドレスを用意してヘアメークも施すサービスを行うサロンでは、2016年から性別を問わず誰でも利用できるようになっています。
以前は礼儀正しかった言葉が今日では失礼になる。「レディース&ジェントルメン」の意味の逆転は、時代の変化を物語っています。「レディース&ジェントルメン」はこのまま死語になるのか、それとも新しい意味や用法を獲得することはあるのでしょうか?