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2022/11/25 6:00

10万人に対して8個だけ!? アメリカのお粗末な「公衆トイレ」事情

11月19日は「世界トイレの日」でしたが、トイレや公衆衛生に関して深刻な問題を抱えているのは途上国だけではありません。意外な先進国が長らく公衆トイレの問題に悩まされているのです。それは世界一の経済大国・アメリカ。あぜんとするような同国の公衆トイレ事情について現地からレポートします。

 

3K:「汚い」「危険」「故障」

↑アメリカの公衆トイレは“3K”

 

アメリカ人の多くが、「公衆トイレはできれば使いたくない」と言います。実際に入ってみると分かるのですが、アメリカの公衆トイレはとにかく汚いことが多いのです。

 

使用後に流していないのは序の口。便器の中にプラスチックなどのゴミが突っ込んであったり、床が水浸しだったり。悪臭も強く、掃除が行き届いていないと感じるトイレがほとんどです。

 

また、誰でも簡単に使えるので、薬物取引など犯罪シーンの温床になりやすいというリスクもあります。犯罪行為防止のためにトイレのドアは下の隙間が大きく開いていますが、どの程度抑制力があるかは明確ではありません。

 

さらに、水が流せないなどの故障トラブルが起きても、なかなか修理されずに放置されているケースが多々あります。故障しているがために、公衆トイレ全体を閉鎖してしまっていることも珍しくありません。

 

超”レア”な公衆トイレ

このように衛生上の問題を抱えるアメリカの公衆トイレですが、近年特に問題とされているのがその数の少なさです。アメリカでは、なんと10万人に対して公衆トイレが8個しかありません。ニューヨーカーの中には、公衆トイレが見つからず、最後には茂みで用を足すしかなかったと語る人もいます。

 

観光客やタクシードライバー、ホームレスたちにとってもトイレ問題は深刻です。都市部では公衆トイレを検索できるオンラインサービスがあり、公衆トイレの現状改善を訴えるデモも行われています。

↑公衆トイレ改善を訴えるデモ(画像提供/The Hustle*)

*Michael Waters, “The fight to build more bathrooms in America“, The Hustle, 2022 November 4th

 

頼みのカフェも「客以外の利用お断り」

アメリカの公衆トイレ不足解消を長期にわたって支えてきたのが、スターバックスをはじめとした飲食店の存在です。これら店舗はトイレを一般開放しており、地方自治体も公衆トイレとしての役割を担ってくれる存在として依存してきました。店舗側もトイレ利用者が顧客拡大に繋がるなど、お互いにメリットがあったのです。

 

ところが、2018年にフィラデルフィアのスターバックスで、商品を購入せずにトイレを利用しようとした黒人男性2人に対し、店員が不法侵入として通報する騒ぎがありました。スターバックスは謝罪し、改めて「トイレは誰でも使用可能」との店舗ポリシーを明確にしたのです。

 

しかし、スターバックスCEOのハワード・シュルツ氏は2022年6月、「今後、地域の公衆トイレとしての役割を制限する可能性がある」と発言。その理由としてトイレ利用をめぐって精神衛生上のトラブルが増えていることを挙げ、スタッフと顧客の安全のために一部トイレの閉鎖を検討しているとのことでした。

↑「公衆トイレはありません」と伝える飲食店

 

公衆トイレが少ない3つの理由

毎年大勢の観光客が訪れる先進国でありながら、なぜこんなにも公衆トイレが少ないのでしょうか。これには、いくつかの理由があるようです。

 

1: 安全性の問題

すでに述べた通り、公衆トイレは簡単にプライベートになれる半面、犯罪シーンの温床ともなっています。そのため、安易に増やしにくいということが挙げられます。

 

2: 公衆トイレの役割を担う飲食店の存在

これまではスターバックスなどの飲食店が、公衆トイレとしての役割を果たしてくれていました。そのため、地方自治体もわざわざ予算を割いてまで新たな公衆トイレを設置しようとはしなかったのです。

 

3: 維持管理費の問題

端的にいえば、市や町に公衆トイレの修理や管理にかけるお金がないのです。事実、故障しても修理まで手が回らず放置されているトイレが少なくありません。

 

4坪の公衆トイレの予算が約238億円!? 

2022年10月、カリフォルニア州サンフランシスコでは信じがたいニュースが話題となりました。公園に4坪の公衆トイレを設置するにあたり、予算が1.7億ドル(約238億円※)かかると市が発表したのです。しかも建設期間は3年にもわたるとのことでした。

※1ドル=約140円で換算(2022年11月21日現在)

 

当然ながら市民はコストがかかりすぎると反対し、「世界で最も高級な公衆トイレの誕生か?」と国内で大きな注目を集めました。幸い、ギャビン・ニューサムカリフォルニア州知事が「高過ぎる」としてトイレ建設にストップをかけ、公費をもっと有効に活用できるような計画にすべきだと市に差し戻したのです。

 

日本に住んでいると、あまり意識することのない公衆トイレの問題。アメリカと比べれば、日本は「トイレ天国」とも言えますが、アメリカへ旅行する予定がある人は、事前に公衆トイレの設置場所を調べておくと良いかもしれません。

 

執筆者/ 長谷川サツキ

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