ワールド
2022/11/29 6:00

スマホみたいに一人一台所有する時代に!? 日本とアメリカのテレビ事情

若い世代を中心にテレビ離れが起きている今日、11月21日の「世界テレビ・デー」を知る人は少なかったかもしれません。この日は、現代におけるコミュニケーションとグローバリゼーションの象徴としてテレビを祝う日でしたが、現代ではNetflixやYouTubeなどの動画配信サービスのほうが、それらを象徴しているようにも思われます。

↑テレビはつけるけど、見るのはネトフリ

 

しかし、だからといって、テレビが消えるわけではありません。アメリカと日本を調べてみると、むしろテレビは、動画配信サービスと融合しながら今まで以上に大きくなり、一人一台所有する時代になりつつあるかもしれないのです。日米のテレビ事情を比較しながら見てみましょう。

 

動画配信サービスを視聴するためのテレビ

ある2021年度の調査によれば、アメリカ人のテレビ視聴時間は1日当たり2時間51分、日本人は2時間26分でした。これだけ見ると、日米間であまり差はないようにも思われます。

 

しかし、リサーチ会社・DataReportalによれば、パソコンやスマートフォンといったデバイスでの視聴時間を含めると、アメリカ人の視聴時間は7時間4分まで増えるとのこと。日本は4時間26分で、アメリカ人のほうが毎日約2.5時間も多くメディアを視聴していることになります。

 

一方、テレビ番組を毎日視聴しているアメリカ人の割合は約80%なのに対して、日本人は76%。どちらの国でも8割近くが毎日テレビを見ているものの、若い世代のテレビ離れの影響で、その数は徐々に減りつつあります。

 

アメリカにおけるテレビ視聴率の最盛期は1990年代で、2000年代に入るとデジタル社会化が進み、動画配信サービスやオンラインストリーミングが台頭。今日ではテレビ番組を毎日見ている人の半分以上が、55~64歳という比較的高齢の世代です。若い世代はNetflixやAmazon Primeなどの動画配信サービスを視聴するために、テレビをつけるようになりました。

 

より大きく

↑大画面に没入

 

「大きいことが正義」という価値観を持つ人が多いアメリカでは、テレビのサイズも例外ではありません。2018年時点では日本のテレビの平均サイズが37インチだったのに比べ、アメリカの平均サイズは47インチでした。その後、世界を襲ったコロナの影響で人々は自宅で過ごす時間が増加し、どちらの国でもより大きいサイズに買い替える動きが顕著になりました。

 

2022年の現在、アメリカ人が購入するテレビサイズの平均は53.6インチにアップ。売れ筋は65インチで、今後さらに大きなサイズへと移行していくことが予想されています。

 

日本でも2022年の買い替えで最も多く売れているのが55インチと、4年前に比べて18インチも拡大。特に動画配信サービスの視聴を目的に購入する人の60%が、50インチ以上のテレビを選んでいます。

 

内閣府が行った2022年度の消費動向調査によれば、日本の単身世帯では約1.5台、2人以上の世帯では2.16台のテレビが自宅にあるそう。一方、アメリカの1世帯当たりの平均は2.3台で、リビングルームに置かれているケースが最も多く、次いで親の寝室となります。

 

両国の1世帯あたりのテレビの保有台数は近いかもしれませんが、さらに見てみると、アメリカ人の31%が自宅に4つ以上のテレビがあります。しかし、日本では1世帯あたり4台所有している割合が4%、5台以上所有では2%と、アメリカとの違いが見られました。スマホやクルマと同様に、アメリカではテレビも一人一台の時代になりつつあるのかもしれません。

 

スポーツ vs ニュース

↑スポーツ観戦が好きなアメリカ人

 

映画やドラマには、ビール片手にテレビでスポーツ観戦するアメリカ人がよく登場しますが、実際、アメリカで最も多く視聴されているテレビ番組はアメリカンフットボールです。

 

なかでも、アメリカ最大のスポーツイベントであるNFLのチャンピオンを決める「スーパーボウル」の視聴率は、2012年以降10年にわたって年間1位を記録し続けています。マーケティングリサーチ会社Nielsen Holdingsによると、2022年2月の試合では平均視聴世帯数が4,500万世帯で、テレビのある家庭の72%がスーパーボウル番組にチャンネルを合わせていました。

 

一方、CCCマーケティング総合研究所のアンケート調査によれば、日本で最もよく視聴されているジャンルはニュースや報道番組、次いでバラエティ、情報番組とのこと。スポーツは9番目で、アメリカと日本で好まれるジャンルに違いがあることが見て取れます。

 

1993年に国連総会で世界テレビ・デーが決議されてから、もうすぐ30年が経ちます。その間にインターネットが目覚ましく台頭し、テレビを取り巻く環境が大きく変わりました。近年ではテレビの視聴スタイルも多様化していますが、今後もデジタル社会化や生活様式の変化に伴い、アメリカや日本だけでなく、世界各国でテレビとの付き合い方は変わっていくものと思われます。

 

執筆者/長谷川サツキ