スポーツ
2022/10/5 6:30

ハワイでサーフィンが大ブーム! 火付け役はコストコの「激安サーフボード」

コロナ禍の影響により、ハワイで競技人口が最も増えたスポーツは何だと思いますか? 答えはサーフィンです。当たり前のようにも思えますが、外出が制限され、ほぼ全てのスポーツやエクササイズが禁止された2020年の夏にサーフィンを始める人が急増。一体なぜなのか? 調べてみると、初心者でも手軽に始められるコストコのサーフボードが、そのブームに一役買っていたことがわかりました。

↑サンライズの時間ですでに混雑するハワイのビーチ

ロックダウンで許可されたジョギングとサーフィン

ハワイでは2020年初夏に外出禁止令が出され、必要最低限の買い物と、健康目的のエクササイズのみが許されていました。ジムも閉鎖されていたため、住宅地や市街地のどこもジョギングや散歩をする人で溢れ、一時は歩道に人が密集してニュースになることもあるほどでした。

 

ジョギング以外のエクササイズで唯一例外だったのが、海での水泳とサーフィン。ただし、海辺の駐車場は閉鎖され、「エクササイズ目的でビーチを横切るのは許可するが砂浜に座るのは不可」という厳しいルールが設けられていました。筆者も散歩の合間に写真を撮ろうと砂浜で数分立ち止まった際に、警官から注意されたことがあります。

↑観光客がいないハワイの海岸。写真中央にはハワイアンアザラシが寝そべる姿も

 

サーフィンが許可されていた理由は、まずはジョギングと同じように個人のエクササイズに分類されるということ。さらに、サーフィンはハワイの文化に根付いており、いかなる理由であってもその文化は制限できないからだと言われています。

 

その結果、スポーツといえばジョギングか海での水泳やサーフィンしかなかった2020年夏、ワイキキにサウススエルと呼ばれる夏の波が到来する頃には多くの人がサーフィンを始めたのです。

 

安価で乗りやすいサーフボード

↑カラフルなデザインのフォーム製サーフボード

 

ハワイといえども、誰もがサーフィンをしたことがあるというわけではありません。そもそもサーフボードは新品ならば最低でも500ドル(約7万2340円※)するうえ、当時はレンタルショップも閉鎖されていたので、未経験の人が簡単に始められるスポーツではありませんでした。

※1ドル=約144.7円で換算(2022年9月28日現在。以下同様)

 

しかし、この時期にコストコのみで販売されていた「Wavestorm」という8フィート(約2メートル44センチ)のフォーム製サーフボードが、そんな状況を激変させたのです。価格は114ドル(約1万6500円)と、一般的な物と比べて破格の安さ。発泡スチロールを使用した、軽くて安全なフォーム製で、一般的なボードより安くなりますが、当時爆発的に売れていた有名メーカーのフォームボードでさえ価格は最低でも350ドル(約5万660円)でした。

 

低価格であることに加えて、抜群の乗りやすさもWavestormの特徴。筆者も当時中古で購入しましたが、初めてサーフィンをする人でも初日から波に乗れるだろうと確信できるほど乗りやすくて驚きました。フォーム製のため、軽くて浮力が大きく、人と衝突した際の危険度も低いなど初心者にとってメリットが多く、人気が出るのも納得です。

 

Wavestormは爆発的に売れて、入荷してもすぐに売り切れとなり、ワイキキの海はこのサーフボードを持つ人で溢れました。中古を買い求める人も増え、一時は中古サイトで300ドル(約4万3400円)以上の値がついていました。当時、ワイキキの街を歩くいているのは、このボードを持ったサーファーかジョギング、もしくは散歩をする人のどれかと言われていました。

 

もともとワイキキ周辺のサーフスポットは波も穏やかなうえ、サーフィンにありがちなローカルルールがそれほど厳しくないエリアのため、観光客や初心者には最適の場所です。「外出禁止令により仕事や学校が休み」であることに加え、「唯一許可されているスポーツ」「手軽に購入できるサーフボード」「乗りやすい波が入ってくる夏の時期」「観光客がいない初心者に優しいエリア」という5つの好条件が重なり、ワイキキのサーフスポットは大人気となりました。

 

以前からサーフィンをしていた筆者にすれば、観光客がいないワイキキエリアは波乗りし放題になると思っていましたが、あっという間にサーフ人口が増加。観光客がいる頃と同じくらい混雑していた印象です。

 

コロナ禍が去っても波に乗り続ける

↑活気を取り戻しつつあるワイキキのビーチ

 

2022年は日本からの観光客はまだあまり見かけないものの、アメリカ本土や海外からの観光客は増え、ワイキキビーチにはコロナ禍以前の賑やかさが戻っています。閉鎖を強いられていたサーフショップやスクールが再開して多くの観光客がサーフィンを楽しみ、ローカルだけがサーフィンに興じていた2年前とは違った景色が見られます。

 

コストコはもう「Wavestorm」を販売していないようですが、ハワイのサーフィンブームの火付け役となったフォーム製ボードは耐久性も高いとみられ、現在のワイキキビーチでも2年前のボードを持っている人を多く見かけます。夏休みに入った6月のワイキキのサーフポイントはコロナ禍前より混んでおり、老若男女のサーファーで賑わっています。

 

サーフィンは地元の人たちが長く守り続けているハワイの大切な文化の1つ。コロナの外出禁止令をきっかけに、地元ではサーフィンの魅力が改めて再認識されたと言えるでしょう。この2年間でハワイにサーフィンが広く浸透したと感じます。