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2023/6/1 6:00

モルディブで大人気の「ツナ缶」、日本のために蓋を変えていた

世界屈指のリゾート、モルディブ。コロナ禍が明けたアジアの観光業界の回復を牽引する存在であり、長年、日本とも友好関係を築いていますが、それを象徴しているのが、モルディブで大人気のツナ缶です。

↑モルディブではスーパーの棚にツナ缶がずらりと並ぶ

 

モルディブ料理の基本食材といっても過言ではないツナ缶は、種類がものすごく豊富。チリや玉ネギ入り、ブラックペッパー入り、さらにモルディブ伝統料理マスフニ(ツナにココナッツ、チリ、玉ネギを混ぜたもの)まで缶詰になっています。中身のツナはゴロっと大きく食べ応えがあるため、カレーや煮物などの料理で主役になれます。暑い国なので、常温で保存がきく缶詰はとても重宝されています。

 

以前のツナ缶は缶切りが必要なタイプでしたが、現在は全てプルトップ(缶切りを使わず、缶の蓋についている引き金を引っ張って開けるタイプ)になっています。そうなったきっかけは、2011年に起きた東日本大震災だったことはあまり知られていないかもしれません。

↑モルディブで当たり前となったプルトップのツナ缶

 

JICA(国際協力機構)によれば、東日本大震災で日本が大きな被害に遭ったことを知ると、モルディブはすぐに募金活動やチャリティーイベントを開催。モルディブ政府と国民から、義援金と約69万個のツナ缶が日本に送られました。

 

モルディブには、日本からの支援でつくられた防波堤や学校、さらに支援金で揃えた障害者用のタクシーや救急車などが数多く見られます。だからこそ、モルディブは東日本大震災が発生したとき、「今度は自分たちが日本を助ける番だ」と、素早く立ち上がってくれたと言われています。

 

缶切りを探して開けなければならないのは、被災地ではとても不便。そのため、モルディブは東日本大震災時に救援物資としてツナ缶を日本に送るため、缶をプルトップに変えたのでした。

 

その結果、モルディブ国内でもそのままプルトップのツナ缶が出回るようになったのです。しばらくはプルトップと古いタイプが混在して店頭に並んでいる状態でした。地方の島で売られている物も含め、全てのツナ缶がプルトップに変わるには2年近くかかったようです。

↑首都・マーレにあるラスファンヌビーチ

 

現在、モルディブのツナ缶はヨーロッパ方面への輸出が多く、残念ながら日本には輸出されていないそう。しかし、モルディブに旅行される日本人が現地でツナ缶を見つけたら、感慨深い気持ちになるかもしれません。