ソ連の崩壊や経済制裁など、経済的に厳しい状況を何度も経験してきたロシア人。「一体どんな生活をしているの?」と思っている人もいるのではないでしょうか? 実はロシア人は、いつ降りかかるかわからない災難に対応するために、自給自足の生活が身に付いているのです。その一例としてロシアの露店文化を紹介しましょう。
ロシアではショッピングモールや鉄道駅の前、目抜き通りなど、人通りが多い場所にビニールシートを敷いたり机を並べたりして、露店を営む人が多く見られます。自分の庭でとれた野菜や果物、乳製品、骨董品、衣類など、とにかく何でも売っているのが特徴。
黒パンを発酵させた旧ソ連圏伝統の飲み物である「クワス」は、ロシア人に広く親しまれている微炭酸で酸味のある健康飲料。その販売スタンドを営む人も多く、客は自分が好きな容量を購入できます。
どこかで買い込んだ食料品を、道端に停めた自家用車の荷台に広げて売る光景を目にすることも。日本とのあまりの違いに衝撃を受けることもしばしばです。
露店を営む3つの理由
ロシア人が露店を営む理由の1つは、家計のやりくりです。最新の調査結果を見てみると、2022年におけるロシア人の平均月収は6万5338ルーブル(約10万2000円※)でした。
※1ルーブル=約1.56円で換算(2023年7月26日現在)
ただし、モスクワやサンクトペテルブルク以外の地方都市では5〜7万円という月収も珍しくありません。年金は1万5000円〜2万円が平均的水準です。
しかも、生鮮食料品は日本より安いものの、その他の食料品は日本並みで、電化製品にいたっては日本よりもはるかに高くなっています。
このように厳しい経済状況が常態化しているロシアでは、年金生活者などが品物を露店で販売し生活費の足しにしているのです。
2つ目の理由は、ソ連時代から残るダーチャの存在。ロシア人は暮らす家とは別にダーチャと呼ばれる別宅を所有していることが多く、暖かい時期にはそこで家庭菜園を営みます。
野菜をピクルスにしたり、果物をジュースにしたりしますが、消費しきれない収穫物は露店で販売します。自給自足と露店ビジネスが盛んな背景には、ダーチャの家庭菜園があるのです。
3つ目の理由は、露店を規制する法律がないこと。ビニールシートやクルマなどを利用して気が向いた時に開くため、規制しきれないのが実情なのでしょう。
このように、経済的な理由とダーチャという文化を背景として、ロシアには露店文化が根づいています。スーパーではなかなか買うことができない新鮮な野菜や果物、日用品などがお手ごろ価格で販売されている露店は、おしゃべりをする社交場としても広く親しまれており、まさにロシア人の生活の一部なのです。
執筆/寝るカズキ