8月上旬、米国のコロラド州で自動車教習所の従業員が、クルマで職場に突っ込んでしまいました。この交通事故は日本の一部メディアでも報じられましたが、米の交通安全はどうなっているのでしょうか?
今回の事故が世界的な注目を集めた理由は、その皮肉さ。奇しくもクルマが突っ込んだ場所は、「運転を学ぼう(Learn to Drive)」という看板のほぼ真下でした。地元の警察が事故現場の写真をXで共有していますが、これほど皮肉なことはないと揶揄するコメントが溢れました。クルマの運転でやってはいけないことを身を持って示してくれたという声もあります。
Thankfully there was only one minor injury. Several people were able to dive out of harms way. The driver, an instructor at the business, was cited for a traffic violation. pic.twitter.com/tJcWTWqfmO
— Lakewood Police Dept. (@LakewoodPDCO) August 8, 2023
恥をかいた同教習所は、このスタッフが教習官ではないことを強調。働き始めてからわずか2日目の新入社員で、教習官になるための訓練はまったく受けていないと言います。このクルマ(ヒュンダイのツーソン)も同従業員の自家用車とのこと。どうやらクルマを駐車しようとしていたところで運転操作を誤ったようで、幸いにも大事故にはならず、ドライバーが軽傷を負った模様です。
しかし、こんなことが起きる米国の道路は、どれほど安全なのでしょうか? 日本でもドライバーが運転操作を誤り交通事故を起こしたり、自動車教習中の事故も起きています。でも、米国では交通事故で亡くなる人が多くいます。
世界銀行は、各国において交通事故で死亡した人が1年間にどれくらいいるのかを調べており、10万人当たりの割合を公表しています。最も新しい2019年のデータを見てみると、日本では3.6人だったのに対して、米国は12.7人。スウェーデン(3.1人)や英国(3.2人)、フランス(5.1人)、カナダ(5.3人)といった先進国と比べると、米国は突出しており、ブラジル(16人)や中国(17.4人)よりは低いものの、ロシア(12人)と比較的に近いようです。
そんな背景を知って今回の事故に対するコメントを見渡すと、まっとうな意見が見つかります。ある人は「自転車はこんな事故を起こさない」とコメント。「より安く、より安全な交通手段を優先させるべきでは?」と述べています。
その一方、米国では自動運転車への信頼度も高い傾向を保っています。YouGovの調査によれば、自動運転車は「とても安全」と考えている人の割合は36.7%(2022年12月)から少し減少して33.5%(23年6月)になったものの、「だいだい安全」と考えている人が22.3%から24.7%に上昇し、「まあまあ危険」と考える人(22.8%)を逆転しました。「とても危険」と思う人はわずか8.9%です。
今回の交通事故を見た人の中には、「冗談だろ!?」と思いつつ、「やはり自動運転車が必要だ」と真面目に考える人がいても不思議ではないでしょう。米国でクルマは自由の精神を象徴していますが、やはりそれは揺れているのかもしれません。
【主な参考】
Fox News. Employee at Colorado driving school plows through front of business’ building. August 10 2023