ワールド
2023/10/11 10:45

どうやって猛暑を乗り切った? 英国の答えは日本人でも驚く家電だった…

ある日、英国のニュースを見ていたら、エアコンに関する記事を見つけました。そのリードが実に興味をそそるもので、思わず読んでしまいました。

↑今年の夏も暑かった…

 

「そのときのことは今でもよく覚えている。奥さんとの会話で最も短いやり取りの1つだった。去年、ある夏の暑い夜、私たちはベッドで本を読んでいた。7月の猛暑日で夜も汗が止まらない。ベッドの横にある温度計を見ると、気温は29.8℃。『エアコンを買うべきかな?』と奥さんに聞くと、『そうしましょう』と二つ返事」

 

こんな冒頭文で始まる家電の記事なのですが、英国のこの夫婦(夫がその記事の著者)はどんなエアコンを買ったのでしょうか?

 

日本の一般的な家庭でよく見るエアコンを買ったのかな……と思いきや、答えはポータブルクーラーの「Meaco MC Series 12000」(約8万円※)。日本ではあまり聞いたことがない空調メーカーの製品かもしれませんが、英国人の発想は日本人と違いますね。
※1ポンド=約182円で換算(2023年10月10日現在)

 

日本でもポータブルクーラー(ポータブルエアコンとも呼ばれる)は販売されています。日本のある家電量販店のサイトは、その機能や魅力をこう表しています。「職場の自分のデスクに置いたり、夏のアウトドアに持って行ったりするのに便利なアイテム」「室外機がなくても使用できる」

 

確かに日本ではこのように使われると思われますが、英国の場合、ポータブルエアコンは部屋全体を涼しく(もしくは暖かく)するために使われるようです(構造や性能の違いは割愛させていただきます)。日本人が広い空間を涼しくしようと思ったら、ポータブルではないエアコンの購入を検討するのが一般的だと思いますが(エアコンが嫌いな人を除く)、英国人は必ずしもそう考えないようです。

 

近年、英国や欧州の夏はこれまでにないほど暑くなっているのに、どうしてこの夫婦はポータブルエアコンだけで猛暑を乗り切ろうと思ったのでしょうか?

 

この夫婦は、1年にわずか3週間程度しか使わないであろう物に数百ポンドを費やすのはぜいたく過ぎると考え、ポータブルエアコンでさえ買うのを躊躇していたそうです。

 

でも、他にも理由はあるはず。この夫婦の1年間使ってみた感想を見てみましょう。

 

著者の結論は、ポータブルエアコンは期待していたほどの冷房効果は得られないけど、買ったことに後悔はしておらず、それなしで猛暑を過ごせるとは思えない。

 

そう述べたあと、著者は「このポータブルクーラーを絶対に買うべきではない理由」と「絶対に買うべき理由」をそれぞれ詳しく挙げています。

 

絶対に買うべきではない理由
・環境に良くない
・電気代が高くなる
・効率的に部屋を涼しくしない(日本のエアコンのように本体にパイプが付いていて、壁に穴を開けて外に暖かい空気を排出する仕組み。しかし、涼しくしたい部屋に暖かい空気が入り込んでしまうとか)
・ポータブルという割には、大きくて、重たくて、扱いにくく、見苦しく、うるさい
・水のタンクを空にしないといけない
・小さな部屋でしか機能しない

 

絶対に買うべき理由
・欠点も多いけど、確かに部屋は涼しくなる
・それほど高くはない買い物(安いものもあるし、シーズン終了後には価格が落ちる)
・思っている以上によく使う(著者は数週間しか使わないと思っていたけど、結果的には数可決も使用)
・持ち運びづらいけど、異なる部屋で使用できる
・手動で電源をオン/オフにする必要がない(アプリで運転を予約することも可)
・多用途(暖房や除湿機として使うことも可)

 

絶対に買うべきではない理由に注目すると、その中で見苦しさが指摘されています。なるほど。もしかしたら英国人は費用と同じくらいエアコンの見た目(形)も気になるのではないか?

 

そう思って調べてみると、欧米のエアコンには窓型もありました。文字通り窓辺に設置するエアコンですが、これについては「ugly(見苦しい、不快)」という評判が目につきます。また、イタリアの家庭では、エアコンの普及率が50%程度のようで、そこには古い家には設置できないという理由がありますが、「美しくない物は隠す」というイタリア人の美的感覚を考慮すれば、デザインを理由にエアコンの導入に抵抗感を持つ人がいても不思議ではありません(室外機は部屋の内側から目に見えない外壁の上に設置するのが一般的)。このような理由で、どうやって見栄えの悪いエアコンや室外機を隠すかに頭を悩ませている人も少なくない模様。

電気代を節約できそう! イタリア人のエアコンを使わずに「猛暑を乗り切る」シンプルな方法

 

日本人にとっても窓にエアコンを設置することは必ずしも美しくないかもしれませんが、このように見ると、英国(ひいては欧米)と日本では「エアコン観」が違うことが分かります。熱波に襲われている近年の英国は、携帯扇風機といった日本の小さな暑さ対策に注目するようになりました。エアコンを小さくして持ち運べるようにしたポータブルエアコンは、英国が日本から導き出した答えの1つなのかもしれませんが、「来年の夏はもっと大きなエアコンを使ってみては?」と思ってしまいます。

 

【主な参考記事】

Mirror. Are portable air conditioning units worth it? Here’s why you should and shouldn’t buy one. September 7 2023