最近、米国の子どもたちが休み時間に楽しんでいるボール遊びが、イスラエルで生まれた「Gaga Ball(ガガボール)」。米国でドッジボールを禁止する学校が増え、その空白を埋めるボール遊びとして、類似性がありながらもソフトで安全なガガボールが広がりを見せています。一体どんなゲームなのでしょうか?
ドッジボールへの逆風
ドッジボールは日本でも体育の授業で行われていましたが、子どもがケガをする危険性やボールを当てることがいじめを誘発するといった理由により、平成29年版の体育の学習指導要領から姿を消しました。加害性が強いとして、最近はメディアでも反対論や禁止論が取り上げられています。
米国は州によって見解が異なるものの、ドッジボールでケガをした子が学校を提訴したり、教育学者が「合法化されたいじめに等しい」と発言したりして議論を引き起こしてきました。2000年代初めからはメイン州、メリーランド州、ニューヨーク州、ヴァージニア州、テキサス州、マサチューセッツ州、ユタ州などの公立学校では、ドッジボールやドッジボールから派生したゲームを禁止しています。
そんな中、ドッジボールに代わる球技として、ガガボールは1970年代からサマーキャンプなどを通じて徐々に米国全土に広がっていきました。ガガボールも人にボールを当てるゲームではありますが、ドッジボールのように全力で相手にぶつけるのではなくボールをバウンドさせるので、威力が弱まり、安全面ではほぼ問題ありません。
どんなルール?
ガガボールは「ガガピット」と呼ばれる多角形の低い壁の中で行われる競技で、手軽な折りたたみ式ピットも販売されています。ピットにはいろいろなサイズがあり、公式では26フィート(約8メートル)×26フィートの囲いの中に最大28人の子どもが入るようになっています。片手がピットの壁に触れている状態でゲームが始まるので、遊びならばそれが可能な人数まで参加可能。
【動画】ガガボールの遊び方
基本的なルールは、ほかのプレイヤーの下半身に向けて、ボールを下投げで強く転がすというもので、手に持って投げることはできません。ボールはゴム製で、柔らかさについては特に決まりはありません。
プレイヤーはピットの中に立ち、ボールを地面にバウンドさせてプレイを開始。1回目と2回目のバウンドに合わせて、全員が「Ga Ga」と叫びます。ちなみに「Ga Ga」とは「タッチタッチ」という意味のヘブライ語だそうです。
3回目のバウンドで「Go! (または Ball!)」と叫び、ボールの近くにいるプレイヤーが手で打ってスタート。膝から下にボールが当たった人はアウトとなってピットの外に出ていき、最後の一人になったプレイヤーが勝ちとなります。
打ったボールが高く上がりバウンドする前に誰かにキャッチされた場合や、ボールがピットの外に出てしまったときは、ボールを打った人はアウトに。ピットの外側に出たプレイヤーは、フライでピット外に飛んできたボールをキャッチするとピット内に戻れます。
ガガボールは力の強さやからだの大きさはあまり関係ないため、さまざまな年齢の子どもが一緒に遊べ、ピットと設置スペース、ボール一つで始められます。
ドッジボールは日本で体育の学習指導要領から消えたものの、文部科学省は小学校低学年で「簡単な操作のボール遊びやボール投げゲーム」を推奨しています。いまのところ、ガガボールは米国と豪州を中心に行われていますが、将来的には日本でもドッジボールに代わるボール遊びとして注目されるようになるかもしれません。
執筆/福田マダール 有希子